ログインしてさらにmixiを楽しもう

コメントを投稿して情報交換!
更新通知を受け取って、最新情報をゲット!

お 嬢 in オイモーコミュの四十二日目

  • mixiチェック
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
私の剣の一振りがキメラの放った炎を寸断した

瞬時に身を返すと踏み込んで草薙の剣を出来る限り遠くへ
視界の隅で急降下するもう一匹のキメラの軌道を反らし、
我ながら大げさに翻って眼前の一匹を斬る

「姐さま!大丈夫ですよ、私まで守ってもらわなくても」
賢者の少女が口を尖らせている
「ごめんね」
でもどこか嬉しそう

ちらりと後ろを見ると、盲目の彼は言いつけ通りしゃがんだままじっとしていた
呆けたようなだらしのない顔
まだ旅慣れていないのだから、ゆっくり身体を休めたらいい、と思った

敵の手数全てを潰していく戦いは新鮮で、楽しかった
私に踊りの素養はないけれど、突き詰めたら剣舞の真似事くらいには見えるだろうか
ただ急所のみを誰よりも速く貫いてきた今までの私
けれどこの地で、それを変えてみる余裕が出来るとは思っていなかった

少し拍子抜けしたけれど
アレフガルドの魔物も、弱い


「終わり」
小さく息をついて、私は剣を鞘に収める
「お疲れさまです!」
飛び跳ねるように立ち上がり荷物を背負う盲目の彼

「しあわせもの…」
賢者の少女がはぱんぱんと埃を払いながら呟いていた


これが環境のせいだとしたら、二人に感謝しなければならないと思っていた
ゾーマがどれほど強いとしても、
これからもっともっと私が変われるのだとしたら
敵の倍、3倍の手数を操れるようになるのだとしたら
「守る」というこの戦い方には多分、意味がある

そして、私がそんなことを考えられるなんて、思ってもいなかった



目と鼻の先にゾーマの居城を望めるくらいだから、と思っていたけれど
この世界は広い
私達は幾日も旅をして、暑くはないけど忌々しい砂漠も越えて
やっと見えた街の名は
ドムドーラ


「牧場できらりと光るのを見たことがあります。ええ、茂みの中だったと思いますわ」
「匂いますよ姐さま!盗賊の鼻にかけて、お宝の匂いです!」

貴女は賢者じゃない、と言う間もなくぴゅーっと駆け出していく
星降る腕輪の効果もあるのだろうけれど、まさに電光石火

「すごいですね」

見えない目で見送る彼に「うん」とだけ返した
私たちはのんびりと賢者の少女の後を追う
早く休みたかったけれど、あまり乗り気もしないけれど
彼女がとても張り切っているから

「なんでしょうこれは!でも絶対値打ちものですよ!
 金?ダイヤ?ううん、もっと凄いものの匂いがします!」

少女はそれを両手で大切そうに掲げて、うやうやしく献上する
私は苦笑して、受け取った
「ありがとう」
くしゃくしゃと頭を撫でる
彼女は頬を染めて喜んだ
とても可愛かった

闇の中でもほのかに輝くひとかたまり
とても硬く、とても軽い見たこともない金属
それの名は、オリハルコン、といった


「あ、あたし、もっともっと姐さまの役に立てますよ!絶対ですからね!
 やっと認めて頂いたんだから、どこまでもお供させて頂くんですから!」
「ご苦労様、疲れたでしょう。今日はもう休みましょう」

残念だけれど、今の状況はやっぱり、成り行きだと私は思った

この子がどうしても船を下りてくれなかったから
どうしても一緒に行くと言って聞かなかったから
最後には私に詰め寄って泣きじゃくりながら
「足手まといなら、あたしをここで斬って下さい!その方がずっと、あたしは」
そんなことを言ったから

彼女にたくさんの借りがあった私は、



「がんばりますよ!姐さまの一番にはなれなかったけど、二番にはなれると思うんです!」

宿をとり、二人部屋に3人で入った後も賢者の少女の興奮は収まらない
「ううん、なれました!なれたはずです!ラダトームで」

「ぷふぁっ」
横で盲目の彼が飲んでいた水を吹いた
「うん」
私も、とりあえずでそんな間の抜けた相槌しか打てなかった

「正直、とっても妬ましいですけど!何この馬の骨!?とか思いましたけど!
 ううん、今はそんなこと思ってません!姐さまが選んだ人ですから!」

ぎゅっと抱き締めながら背中を撫でても彼女はまくし立て続けている
だいぶ、無理をさせてしまったような気がする
私は少し、反省した
盲目の彼は所在なさげにおろおろとうろたえている


「二人きりじゃなくてもいいんです、これからも、また三人で…きゅうっ」
「勇者様!?」
「疲れてたみたいだから」

難しそうな表情のまま眠っている賢者の少女をそっとベッドに寝かせた
何を思い出しているのか、突然真っ赤になっている彼も眠らせてあげようかと思ったけれど
やめにした
私も疲れていたから
やっぱり砂漠は好きじゃない

私も寝よう


「姐…さま…」
けなげに私を呼んで手を伸ばしている
握るくらいはしてあげてもいいかも、と思った
彼女は本当に、がんばっているから

「一緒に、また、愛してくださ…きゅうっ」

ああいうのは勢いだと思うから、いきなり振られると私だって困ってしまう
人並みに恥ずかしくもなるし
彼女のことはもちろん嫌いじゃないし、大切だと思うけれど

改めて手を握って、私も横になった
反対側の彼はもう寝息を立てている
私達のアレフガルドの旅はまだ、これっぽっちも緊張感がない

コメント(0)

mixiユーザー
ログインしてコメントしよう!

お 嬢 in オイモー 更新情報

お 嬢 in オイモーのメンバーはこんなコミュニティにも参加しています

星印の数は、共通して参加しているメンバーが多いほど増えます。

人気コミュニティランキング