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お 嬢 in オイモーコミュの二十二日目

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私の船は新大陸の南端、海賊の村に再び寄港する

思ってたよりずっと賑わっていた
前より明らかに人の数が多い

「お前達!勇者様がいらっしゃったよ!」
海賊の女首領はまるで旧知の友人のように歓迎してくれた

「飲む理由があるのはありがたいことさ」
ラムをまるで水のようにあおりながら、私にウインクをする
「繁盛してるようね」
私は隙間なく豪快に並べられた料理に圧倒されつつ、そう言った

「おかげ様でね。仲間も増えたし、勝ち続きだしでいいことずくめさ」

鎖に繋がれ暗い目をした人々の姿も見える
どこに売られるのだろう
あれは奴隷達だ

「あれから結構襲ったんだ。使えそうな奴は仲間にする。それ以外は」
「そう」
「あっ。でも、普通の商船は狙わないよ」
まるで言い訳でもするかのように

私には彼女の基準は分からないけれど、口を挟むつもりもなかった

「夜は長いからね。どんどん飲んでおくれよ。旅の話も聞きたいし」
私達は次々とグラスを空にしていく
萎縮しきった僧侶二人がずっと身動きもできずにいるのは可愛かった



「姐さま!」
誰かが私の胸に飛び込んできた

本能が危険信号を出さなかったので、避けることはしなかった
衝撃で割らないようにグラスをただ置いただけ

「お久しぶりです!また会えるなんて思ってもみませんでした!」

短い間、私と旅をした盗賊の少女だった
彼女はまるで犬のようにすりすりと私に頬擦りする
ここまで全身で喜びを表現されると、さすがに私も戸惑ってしまう
大体、私は彼女を捨てたのに

「あ」

先に我に返ったのは少女の方だった
「ご、ごめんなさい。あたし、こんな、気安く…」
申し訳なさそうにうつむいて
「あたし、姐さまに許されないことをしたのに」

私は「ああ、」と呟くと悟りの書を彼女に放った
少女は突然のことに慌てふためきながらも空中で見事にキャッチ
星降る腕輪の効果もあるのだろうか

「別に盗むつもりだったなんて思ってないわ。ただ、遠ざけたかっただけ」
彼女はまるで信じられないものを見るように私と悟りの書を交互に見つめた
「でも、多分それは良かったのね」

「えっ…?」
私はぐるりと、テーブル周りで脂汗をかいてうつむいたままの僧侶二人と
早々に酔いつぶれ床でいびきをかいている商人を見やった
少女が不思議そうに私の視線を追う
見知った顔はない
「死んだわ」

「…おっさんも、爺さまも?」
私は沈黙で答えた
「そんな…」

「貴女が元気で嬉しいわ」
私は自分でも信じているのか疑わしい言葉を吐きながら、ジパングで拾った大きな宝石を出す
「あげる」
以前に少女から貰ったものは赤い色のオーブ
私が差し出したものは紫色のオーブ
「この前のお礼」

盗賊の少女は反射的にそれを両手で受け取っていた
私はグラスの中のラムを飲み干した
ワインよりもずっと強いお酒だと思った

「ねえ、悪いのは誰かしら? その答えは一つだけ。仲間、だったのに」

「姐さま…姐さま」
気付けば少女が私の頭を抱えていた

「何、してるのよ」
「姐さまはやっぱり、あたしの思っていた通りの人です。とても優しくて、哀しい…」

もし私が優しかったら、私のせいで死ぬ人間など一人もいないはずだった
この少女はただ運が良かっただけ
それ以外の何物でもないのだ

「本当に、愚かな子」
私は何を話しているのだろう

海賊に引き渡したのだから、今頃はきっと陵辱の果てにどこかへ売られているかと思っていた
彼女のことを「勇者の幹部」と言った女首領の言葉はどうやら本当だったようだ
幸運にも、客人として、かけがえのない仲間として大切に扱われていたらしい

少女の瞳は変わらず明るくて、私には眩しすぎた


どうやら私は酔っているようだった
夜風に当たるため外へ出る

深夜だというのに、
並ばされた奴隷達がどこかへと連れて行かれるのを私はぼんやり見つめていた
内訳は、元軍人や商人、そしてその関係者の女性の姿が多かった

その中に一人、足取りも危なっかしくひょこひょこ歩く薄い少年の姿があった
彼は盲目のようだった

何の役にも立たないだろうに
それとも、数が多すぎて盲目が混じっていることにも気付かなかったのか

酔いのせいか、本当に光を失っているのかに興味を持ったのか
立ち上がった私は、彼の前に足を出していた

「ああっ」
案の定、彼は面白いように見事に転んだ

ラムの酔いがすうっと晴れていくのを私は感じていた



rァ 「ご、ごめ…」 何を言おうとしている?私は私自身に戸惑った
rァ 「無様ね」 私は吐き捨てるようにそう呟いていた

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