ミュージックおすすめレビューコミュの極東慰安唱歌/戸川純

彼女自身は「昭和享年」というアルバムで

昭和という時代を反映した曲のカヴァー集を発表しているが

そのアルバム以上に「昭和」という時代を凝縮した作品。

ただし、その強烈な個性のため、好き嫌いがはっきりすると思われる。

アルバムの中で色々と声や歌い方を変えているが

かなり「強烈」な「声」と「歌唱」。

好きになったら中毒になるアーティストだろう。

１．眼球奇譚

　　まずは軽めのポップな曲でご挨拶。

　　それにしても彼女の英語の発音。

　　コケティッシュというかロリータというか。

　　そこが好きだったり・・・。

２．海ヤカラ

　　沖縄民謡。

　　沖縄の方言で唄っている。

　　人によっては彼女の「高音」に辟易するかもしれない。

３．戸山小学校校歌?赤組のうた

　　多分、本当の校歌だろう。

　　彼女自身、新宿の戸山に住んでいたと記憶している。

　　小さな口を目一杯大きく開いて歌う子供達のような歌唱。

　　「赤組のうた」は運動会の歌。

　　ひっくり返すと赤になったり白になったりする

　　「赤白帽」を被った少年少女達を連想させる。

　　ご丁寧にバックで鉄琴が歌のフレーズをなぞっている。

　　幼い頃の思い出が蘇ってくる一曲。

４．無題

　　アンデス民謡。

　　フォルクローレ風にアレンジしてある。

　　一言、一言はっきりと歌う歌い方が可愛らしい。

５．家畜海峡

６．人間合格

　　上記２曲はＣＤ化の際にボーナス・トラックとして追加された。

　　正直いって、やっつけ仕事って感じであまり感心は出来ない。

　　あえて収録する必要が無かったのでは。

７．極東花嫁

　　ハード・テクノって感じか。

　　ロリータから一変、とても悩ましい声を使っている。

８．ある晴れた日

　　プッチーニの作品。

　　教室の隅においてあったであろう

　　「足踏みオルガン」

　　のみの演奏で歌っている。

９．極東慰安唱歌

　　これも「足踏みオルガン」のみの演奏。

　　まるで小学生のように歌う彼女がなんとも言えない。

　　ロリータというか・・・・・。

　　家出してきた小学生を家でかくまっている。

　　そんな、犯罪の匂いがするような声とでも言うか・・・。

１０．勅使河原美加の半生

　　名曲、名演奏、名唄、そして優れた「詩」だと勝手に思っている。

　　純情な恋する乙女の「諦念」の歌。

　　「願わくば砂と舞う前　土にかえった私に」

　　「君の好きな種をまいて　花を咲かせ実を食べてね」

　　「その甘味な諦念を」

　　といった内容。

１１．夢見る約束

　　細野晴臣による作詞・作曲。

　　彼自身も歌っているが、「戸川純」という稀有な「声」を得て

　　初めて完成された楽曲といってもいいのでは。

　　「青い山脈」や「高校三年生」のような曲調。

　　「昭和歌謡テクノ」の最高峰だろう。