ミュージックおすすめレビューコミュのAbbey Road/The Beatles

一番最初に買った「The Beatles」のレコードって

実は覚えてないんですが

一番最初に通して聴いて、それこそ毎日のように

聴き狂っていたのがこの「Abbey Road」でした。

東京に引っ越してくる前ですから

多分１０歳かそこらだったと思います。

まだ７２回転用の切り替えスイッチが残っている

ターン・テーブルにレコード盤をそっとおいて

針がついているアームをレコード盤の一番外のミゾに落とす。

「シュッ」

という音が貧弱なスピーカーから流れてくる。

その瞬間に小さな部屋で寝そべりながら聴いていた僕は

目の前のターン・テーブルや小学校の出来事や

もはや生きていることさえ忘れてしまう世界に

さ迷い込んでしまいました。

そこは仮面ライダーやゴジラやアントニオ猪木や

初恋のマリコちゃんや悪友のマサヤ君なんかを

遥かに超越した世界。

Ａ面が終わると急いで盤をひっくり返し

Ｂ面へと移る。

たまらなく勿体無く感じられるその数秒間が過ぎると

アコギの優しいフレーズが流れてくる。

美しいコーラスの後に虫の声。

そして怒涛のメドレーの始まり。

しばらく無音が続いた後にいきなり

「ジャーン」

と始まるギター１本の弾き語り曲が終わると

たった今垣間見てきた世界のあまりの強烈さが

果たして本物だったのかどうかを確認したく

再度レコードをひっくり返しアームを外のミゾに落とす。

そして終わると再び確認をしたくて同じことを繰り返す。

いや、確認したかったんじゃないな。

再び味わいたかったんだな。

僕はたった１０歳でジャンキーになってしまった訳です。

そして僕をジャンキーにしてしまった張本人が

「The Beatles」

であり、一番最初に手を染めてしまったのが

「Abbey Road」

だった訳です。

強烈な一発でした。