彼女は、わきの高校の駐輪場から飛び出してきた。
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日向坂46の山口陽世に似ている。
背は低いが、自転車に飛び乗った身のこなし、前傾のスポーツチャリで一気に走り去るスピード。
明らかに運動部に所属していそうだが、まったく日に焼けていないので、バレー部とかなのであろう。
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そうした情報は一気に眼から入ってきたのだが、それを上回る、最大の情報がドカンと網膜に捉えられていた。
パンツである。
男子ならパンティーと言い、女子ならパンツと言い、商標であったらショーツと言うかもしれない。
純白のパンツである。
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そもそも、仮に陽世(はるよ)ちゃんと呼んでおくが、陽世ちゃんは明らかにスカートを短くしすぎなのだ。
たぶん、ウエストで巻き上げて、わざとマイクロミニにしている。
そんな制服があるわけない。
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だとしたら、陽世ちゃんは黒パンを穿いていてしかるべきである。
それとも、あたしの知らないところで、見られてもかまわないオーバーパンツの白パンが流行っているのだろうか?
それにしては、脚部がまったくない。
黒パン的なものであれば、ショートスパッツ的に太ももまで覆って然るべきだ。
陽世ちゃんのは、まったくパンツなのである。
サザエさんのワカメちゃん的な純白のパンツ丸出しなのである。
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陽世ちゃんは、アスリート風の前傾姿勢で、ドンドンわたしから離れて行く。
何か学術的な大発見があって、彼女に確かめずにはいられないのだとしたら、あたしもモーレツにチャリを駆って、彼女の後を追うこともできた。
しかしながら、パンツの問題であれば、さようなることをしでかしたら、走る出歯亀である。
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人間なんてのは、コンピューターには絶対かなわない。
どーでもいいパンツの件を、その後、しばらく考えながら走っていた。
上の空のチャリ走である。
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陽世ちゃんは、知っていてパンツ前傾姿勢だったのか?
だとすれば、目的はなんなのだ?
友だちは、陽世見えてるよ!とは言ってくれないのか?
あんなに貴重な乙女の宝を、かように安売りしてよいものか?
何だって、こんな有り得ないことが、有るのだろうか?
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頭の中がパンツだらけの午後であった。
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