『チェット・ベイカー 終わりなき闇』という本が高価すぎたので、比較的安価だった原書を読み進める。以下はそのためのノートのようなもの。
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序文(引用)
「俺たちは行かなくちゃならない。そこにたどり着くまで」
「いったいどこへ?」
「知ったこっちゃないけど、とにかく行くんだよ」
ーーーージャン・ケルアック『路上』
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プロローグ
1988年、5月21日土曜日。カリフォルニア・イングルウッド
イングルウッドのパークセメタリー墓地では、葬儀に参列した人々が何人か立っていた。白い日傘が日差しを遮っているのだが、上空の騒音からは守れない。ここはロサンゼルス国際空港からほど近く、ジェットガスの匂いが届いていた。だから刈り取られた青草の香りなどは漂っていない。
2日前、オランダからの旅客便が、酷く腐敗した遺体を運んできた。その人物はかつて、最もハンサムな男のひとりと呼ばれていたトランペット吹きだ。5月13日の金曜日に、彼チェット・ベイカーはアムステルダムで息を引き取った。その長年にわたる薬物摂取と関連づけて語られる死は、謎めいている。
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