漫才病練

ビートたけし著の本は初めてか、、。

で、売れる前の、若い頃の浅草での赤貧の海な頃を舞台に
２５年前くらいに書かれた本。
有名人は実名、無名人は仮名、ツービートと言う名前は別名にしてる。
自分がどうして浅草の芸人になったか、や、
当時はどんな世相だったか書いてると面白いのに書いてない。
するすると読めない素人さん作家表現な書き方で無理して書いてる、という感じだが、
それとは逆に内容は抜群に◎。

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私が若い頃、色んな番組、オールナイトニッポンで聴いた話も交じってるが
小説だと詳しく書いてあるので面白いこと至極。



松竹演芸場だけの出演料だけでは全く食っていけないので
酒も飯も先輩に奢ってもらうことが普通、

客が一人も居ない演芸場で２０分喋るってことがどんだけしんどいか、とか
つまんない演芸場の支配人や先輩たちの口の酷さ、
その人達に延々と頭を下げて、やっともらった
地方のホテルの宴会の営業、地方温泉のストリップ小屋や、
有名歌手の前座や司会の話に飛びついて相棒と行くが
どこもかしこも酷い扱い、酷い客の描写が凄い。
なぜ売れてない芸人なのに地方で仕事があるのが、
「浅草の芸人」というブランド。

老人ホームか、という演芸場の楽屋、
何十年も同じネタな芸人、手品師、
高齢な女性の安来節（どじょうすくい）とか、
どう見ても面白くないのにそれで成り立っている演芸場の世界の怖さ、

簀巻きにされて川に放り込まれた浅草の暴れん坊オペラのじゅっちゃん、が、
朝、遊覧ボート乗り場のボートのへり、に噛みついて生き延びてた、
そんな人が生きて住んでたという浅草に自分が居ることのすばらしさ。

刑務所慰問に行くと
自分の前の出番が××剣友会で、見事なチャンバラを見せてくれて
舞台袖からも拍手しようかと思っていたら、
舞台の下に座って観ていた懲役のジイさんが、
「そんな殺し方じゃ人は死なん、こうやって腰に刀を当てて
体ごと突っ込んでいくんだ」と
実演しだして刑務官に取り押さえられた、
たけしの漫才の第一声が普通の演芸場と同じようにしゃべってしまう、
「ようこそいらっしゃいました。」「どうぞゆっくりしていってください」
刑務所で、ようこそ、、って。ゆっくり、ってずっと居るって、、。

石川さゆりのコンサートの演芸仕事に出たらどんなにいいだろうなあ、
とか、
そんなこんなで、漫才の出だしでどうやって客の心をつかもうか、
どう驚かせる言葉から入ろうかと、考えて考えて作った
過激な漫才が受けだして、今日は演芸場にテレビのスタッフが来てる、
そして初めてのテレビに呼ばれたのが
桂歌丸と小円遊（わかくして死んだ落語家）の番組で、夢のようだ、と喜ぶ
ところで、終わっていて。

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私が最初にツービートをテレビで観たのは１９７０年代終わりか、中学生か高校の年末の
NHK「ひるのプレゼント」の年末でにぎわう市場のレポート芸人だった。
まだ、ザマンザイが始まる前で初めて見たのに至極記憶に残ってる。

そこから、ザマンザイ→オールナイトニッポン→戦場のメリークリスマス→ひょうきん族
元気が出るテレビ→役者→監督→、、ってのを観ていて、
今のテレビに普通に出てるビートたけしなのに、

若い頃の浅草や、地方のひなびた温泉場に行ったら、警察の手入れのすぐ後で
踊り子さんが居なくなってるストリップ小屋での酷い扱いや
北海道の地方キャバレーの、楽屋じゃない普通の狭い汚い部屋で寝泊まりして
そこに住みこんでるお婆さんがいる炬燵で目覚めて、
お婆さんと無言のチャンネル争いしてた若い者が
口だけでのし上がり、その後、映画を撮りだし、
ベネチア映画祭の金獅子賞とかフランス政府から勲章もらうんだから、、

２年前かのアカデミー賞で賞を取った「スリービルボート」
と言う映画を作ったイギリスの監督が北野武映画の大ファンで
最初の監督作の「セブンサイコパス」の中で主人公の俳優が映画館で観てる映画が
「その男狂暴に付き」で、
スリービルボートを観ると、たけし節が描かれてるのが分かったりする。

明治期の本にも同じような描写があるのを後で知るのだが、
ビートたけしの作った標語の中で「赤信号みんなで渡れば怖くない」
が私も怖い。　人間の集団が一番怖い。

漫才ネタも面白いんだけど、
一人の語りで、憶えてんのが
昔、まだロシアがソ連だった時代に
小さな潜水艦が、沖縄沖で故障して浮上したことがあって
その時に煙を出している潜水艦の横にソ連船がホースで水をかけている映像がニュースに流れて、ビートたけしがそれをみて、
「潜水艦なんだから、海に潜りゃあいいじゃねえか、」ってのが凄かった。
故障してんだから潜れないんだろうと思うんだけど、
そこを潜ればいい、って逆説な思考は出てこないわ。