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2016年10月08日09:15

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武道随感  『遅い動き』の深化

 僕の持ち手の日記を読んで、今回は雪那さんは「握り」の話から始めてくれた。

「パンチの形をしてみてください。肘の裏側が斜めを向いてるでしょう」
「はい」
「じゃあ今度は剣を振り下ろした形で止めて。今度は肘の裏側が上を向いてますね」
「あ、本当だ」
「この形のまま、最後のところで剣で握るように最後に拳を作るんです。ここでインパクトを作る」

 なかなか難しい。ストレートパンチを普通に出すと、まず肘の裏側が横あるいは斜め上を向いてるのだ。これを振りと同じ形で、肘の裏側が上を向くように打つ。これは最後のところでインパクトを作るのだが、これが『遅い動き』に使う打ち方なのである。

「そもそも、腕を伸ばす力で打つ、と考えるんじゃないんです。腕はむしろそのままで、腰をぶつけるくらいのイメージです。ちょっと比べてみましょう」

 と言われて、僕がミットを持つ。

「これが腕の力」 なるほど。けど、これはこれで結構な衝撃。「これが腰の力」 ズン、とくる。重い。圧力は比較にならないほど大きくなってる。「で、これが斬りの力を加えたもの」 パンチなんだけど、斬り下ろす動きがそれに加わった感じ。で、ドム、と凄い衝撃である。とにかく重い。

「遅い動きの要点は腰で入る感じなんです。アメフトのタックルなんかに近いんですよ」

 と言って、雪那さんは腕を前で交差させて僕に接触する。そこから腕を組んだまま、肘を僕の脇に入れてグイと押し上げる。ブワンとこちらの身体が浮かされる。凄い。

「アメフトは手で触っちゃいけないんですね。だから腕を交差させてぶつかるんだけど、要点は腰なんです。これ、腕だけでいってみますよ」 全然、平気で耐えられる。「で、半歩くらい進んで腰を入れる」 ブワンと浮かされる。なるほどー。

 「これは上に向ける力だけど、それを下にすると八極拳の頂肘なんかも同じ原理ですね」 言われてみれば! 体当たりの感じで肘を打ち込む技である。八極の沖錘(縦拳パンチ)や形意拳の劈拳(掌打)は、考えてみれば雪那さんのやったパンチ+斬りと同じ原理だ。なるほど、と再認識する。

「これ、合気上げと同じなんですよ」 え? 僕が雪那さんの両腕を掴む。と、ふわっと左手から浮かされる。と、思う間もなく右上げ、左下げでころりと投げられた。

 う、上手い!!! あまり書いてこなかったかもしれないが、雪那さんは今までの全部のことを常に、「これが合気道なんですよ」「これも合気道です」と言い続けてきた。雪那さんが合気道家なのは判っている。

 …が、これほどとは! 正直、雪那さんの合気道技の上手さに驚愕した。その後も合気上げのバリエーションを幾つかやってくれたが、とにかく上手い。脇を差して投げたおす技なんかも、合気上げと同じ原理でやってくれた。

 僕もやってみるが、「肘が開いてますね」と注意される。持たれた腕を上げようとすると、つい脇を開いてるのだ。そうではなくて半歩でもいいから前に出て腰を入れつつ、むしろ肘を内側に落とすように腕を上げるのである。なんとか上がったが、雪那さんほどのキレはない。まあこれは仕方なし。

 しかし腕を伸ばすのではなく、腰で当てに行くとしたら、その分間合が不利なのではないか。という問題に対して、「間合をむしろ伸ばします」と雪那さんが言う。

 前にもやったことに近いが、ミットを両手に構えてもらって、まずジャブを当てる。そし少し後ろのミットにストレートを当てるのだが、何回かやるとツーと雪那さんがミットを持ったまま下がる。最初はスカる。けど、遅い動きでじっくりと追い込んで当てにいくと、それまでよりグンと威力の乗ったパンチを当てられるのである。「ほら。距離は凄く伸びたでしょう」 ワン・ツー、と単発で終わるとごく短い間合内でしか当てられないが、遅い動きをきちんと使うと有効間合がむしろ伸びるのである。

 ここにきてハタと、僕の日記に雪那さんが「最後の速い動きは、まだ抑えた方がいいかもしれませんね」という感じのコメントをしてたことの意味が判った。まだまだ遅い動きを深化させ、充分に腰を入れた打撃、もっと深い間合を打ち込む余地があったのだ! なるほど〜、と思った。

 そんなことを踏まえてスパーリングをする。実はこの二日前の薙刀の稽古で、遅い動きを意識して狙いすぎたために、防御がおろそかになり打たれる場面が幾つもあった。これ、前の雪那さんとのスパーと同じパターンじゃん! そんなわけ、この日のスパーはとにかく「打つ時も防御を意識して」を最優先に頑張る。

 またそれまで自分の中で積み上げけてきた「起こり頭の読み」とか、出入りの自由さの維持、封じ手、左右の揺さぶり等、意識できることはみんな注いでみた。今までやったスパーの中では一番よかった。

 発見だったのは、封じ手と遅い動きの相性がいいことだ。遅い動きで入っていって(守りを意識しつつ)、有効距離に入っても敢えて少し回り込んで相手の腕を封じつつ、その上からもう一方の手で打撃を入れる。あるいは、最初に抑えたところから、もう一方の手で封じを橋渡しして、最初に封じに使った手を打ち込む。

 有効間合になったらすぐに打たなきゃ、と思ってた時より落ち着いて相手を見れるし、何より自分は安全な場所で相手を攻撃できるので安心感がある。ただし、前のスパーで封じ手を使い過ぎて、それを外されてボコボコにされた経験があるので、封じ手をうっても防御は充分に意識して、だ。

 しかし、それでもやはり雪那さんに打たれる。特に印象深かったのは、ボディに入ってきた(ダメージは加減してくれている)超近接間合の一撃と、ムエタイ式のアップな構えからのジャブである。特にジャブの方は、まだ間合があると思ってるうちにポン、と当てられたのでビックリした。

 「あれは少し沈んで、目線の高さをハルカさんに合わせたんですよ。そこから上下動なしの点の動きで打ったんで、判りにくかったでしょう」

 それから、お茶道の時の歩く姿勢というのを教わる。深呼吸して両手をボールの上に置くように前で合わせる。「顎をみぞおちに落とすように」したうえで、「姿勢をたてる」。肩が前に落ちた感じの姿勢になる。

 合気上げの時や剣を持つ時も、肩がいからず前に落ちてることが重要である。「力むと、視界も悪くなるんですよ」と言う。「普通に構えてみてください」 普通に構える。雪那さんがサッと横に動いたところから、パンチを繰り出してくる。最初と最後のパンチしか見えてない。

「それじゃあ、いい姿勢を維持して構えをつくってみてください」 やってみる。で、雪那さんの同じ動き。今度は、最初から最後まできちんと軌道が見える。驚きである。姿勢が違うだけで、観察力、落ち着きの度合いが変わるのだ。

 つまり、『遅い動き』を本当に実現させるためには、正しい姿勢が必要なのだ。雪那さんは剣道をやってた時代、竹刀の割竹を10cm間隔くらいで二本吊るし、その間を通して面打ちの素振りをやってたそうである。……劇画のようだ。すげぇ。

 あと、「相手の意識の誘導」とかのこともちょっと習ったはずだが、覚えることが多すぎてまだ整理しきれてない。まあ、まだ先はあるということだ(爆)。とりあえず、力みを抜いた正しい構え、正しい素振りをものにできるように頑張ろう。
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