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2016年10月10日09:37

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武道随感  打撃の形

 モロに『遅い動き』の突きだ、と思うものが見つかった。これである。

 
 2:45くらいからの「追い突きの秘密」がそれだ。膝の抜きで前に重心を移して、腰を入れる(中先生は中丹田を前に出すと説明してる)。で、「キープ、キープして、打つ」。って、ホントまさにこれだ。

 この前に重心を移動させ、腰で打つという要点がまさに雪那さんの言ってることと同じなのである。加えて、「二枚の下敷きをずらすよう」に前に出る動きは、薙刀での八相からの側面打ちの要点とまったく一緒だ。回る動きではなく、後ろ半身が前にずれるように前に出る感じ。中先生の動きを見ると、初動が判りにくくて捉えにくいのに加えて、間合いが伸びている。

 中達也先生は映画『黒帯』でその動きを見て以来、すっかりファンなのだけど、今回改めてその術理の一端が理解できた。映画ではメチャクチャな遠間から一気に懐に入って追い突きを入れるのだが、それがこの動きだったのだ。なるほどー、と思った。

 特徴的なのは運動力的に早いのではなく、妙に挙動が読みづらくて、気づくと到達してるという点だ。横から見てもそうだが、前から見るとなおさら読みづらい。つまるところ、こういうところの基本技術が、本当の意味での術理の高さなのだなあと再認識する。余談だが、『はじめの一歩』を読み返していたら、37巻で王者リカルド・マルチネスのパンチが読めないことについて、鴨川会長が解説してるシーンが類似してると思った。

『しかし王者の左は肩も肘も動かさず、まっすぐ最短距離を飛んでくる。すなわち予備動作(モーション)がなく軌道が読めん。トリックどころか、むしろ最も基本に忠実な左(ジャブ)。鏡の前で何万回もフォームをチェックせねばできんことじゃ』

 この後の「よけたと思ったところから、まだ伸びてくるパンチ」の原理が、中先生の動画の1の方のワンポイントレッスンのことを想起させた。


 8:43くらいからである。抜手を出したところから、さらに握りこむように拳を作ると、普通に拳を出したより前に突きが出るという話だ。これは浮いている肩甲骨を前に出す、という話をしているが、先日やった「肩を前に落とす」ことの重要性とつながってくる。インパンクトの瞬間にちゃんと肩が前に落とせていれば、肩甲骨も前に出ているし、決めも強くなってるはずである。

 なんでこの動画を見つけたかというと、スパーをやっていて最近思ったのは、『遅い動き』を意識するようになってから、ボクシング的なやりとりより、むしろ空手の組手に近いやりとりになってきたな、と思ったからである。それで空手の動きを見返そうと思ったのだ。

 タイプや人にもよるかもしれないが、ジャブを手数出して応酬し合ってストレート、みたいなやりとりではなく、間合いと呼吸を計って一打を入れる、というようなやりとりになってるのである。最初に雪那さんとスパーをして時は、僕自身ボクシング的な動きを意識してたのだけど、雪那さんに『遅い動き』のカウンターを使われるとボコボコにされるので、簡単に手数を出せなくなったのだ。

 これは僕が借りたグローブではなく完全にオープンフィンガーに移行したこととかも影響してるかもしれない。とにかく厚みがないので、グローブでガードすることはできない。それなら総合の方はどうなるんだろう? とふと思ったら、こんなニュース記事を見つけた。
http://cyclestyle.net/article/2016/03/07/33426.html

 誰? コナー・マクレガーって?

 どうもUFCの有名人らしい。は、ともかく二階級上げて戦うって、ムチャすんなあ。10kgウェイトアップしなきゃいけないんでしょ? 身体が重くなって、動きが鈍くなるよ。で、YOU TUBEを探したら、ニュース記事にあった2Rギブアップ負けではなく、5R判定まで戦ってる。どういうこと?

 どうやら負けた相手に再戦を挑んだらしい。で、今度は5Rまで戦ったということのようだ。で、この試合がなかなか凄かった。


 異常に上手い。特に相手の読み、間合いの図り方、そしてカウンターの出し方や、懐への侵入など、物凄く上手い。興味深いのはこの人、アマチュアボクシングがバックグラウンドにあることだ。アイルランドの国内王者にまでなったらしい。そういう感じの戦い方だな、と思う。

 蓄積ダメージが重要になるプロボクシングと違って、アマチュアボクシングは「当たった/当たらない」の世界だ。で、こっちの方が総合に近くなる。というのも、蓄積ダメージを競い合うのはグローブだからできることであって、オープンフィンガーみたいな裸拳に近い状態だと、一発もらったら大体アウトだ。デカいダメージを与えることより、もらわないこと、の方が重要になる。

 これは一本を競い合う寸止め空手にも言えることだ。寸止めルールの合理性、というのがここで再認識されるべきである。それにそもそも、空手は武器術を意識したものだ。相手がナイフを持ってる場合、蓄積ダメージなど問題にならない。もらわないこと、が何より重要なことになる。

 が、それはともかくとしても、このマクレガーの相手のネイトって奴、後の方で何発ももらってるし出血もしてるのにKOされない。いやあ、『一発で終わる』のが打撃のリアルだと思ってきたんだけど……。少し認識を改めた。こんなタフガイ、相手にできねぇ(爆)。

 総合の歴史というのは変遷があって、最初は打撃家がグレイシーに代表される組技系に負ける流れだった。どんなに打撃技術があっても、転がされたら何もできないで極められる。そういう流れだったのである。ここで注目されたのは、柔術、柔道のような組技系だった。

 さらに寝技で極めるより、テイクダウンの後はマウントポジションをとってパウンドで極めた方が能率がよくて安全、という流れになった。ヒョードルなんかも、当初は結構サブミッションを使っていたのに、後期はほとんどパウンドばかりだった。

 で、この流れからいくとまずテイクダウンを取れる選手、倒されないことが重要であり、アマレスの重要性が高まってきた。ダン・ヘンダーソンのようにアマレス出身の選手も活躍した。

 しかしここで打撃系の復活が起きる。テイクダウンされないこと。つまりタックルを切ったり、首相撲で優位に立てる技術があれば、無理にグラウンドに付き合う必要はない、ということが判ってきたのである。この戦い方の代表がヴァンダレイ・シウバのようなブラジル系キックと、実は昔は空手家だったミルコだ。

 で、そこからしばらく総合を見てなかったのだけど……。マクレガーの試合を見る限りでは、総合はもはや一周して、空手の組手のようになってるではないか。ちょっと驚きだ。無論、組んだ時の対処だとかが、技術の大前提にあるのを忘れてはいけないが、ほとんど立ち技で戦ってるのに驚かされる。

 さて、この「当たった/当たらない」の延長にあるのが、やはり武器術の世界だと思う。短いところでいくとナイフ術から始まり、剣、そして最も長いところで薙刀、というところになる(槍もあるけどね)。武器術同士の戦いだと、武器それ自体が長い方が有利なのは間違いない。そして同じ武器同なら、勝負は「一撃」を賭けつつ、本来は「相打ち」はあってはならない一撃を目指す世界となる。

 僕の場合、最初と最後、つまり柔道と薙刀という両極端をやってたわけである。今、その中間を埋めてる感じだろうか。ただ、雪那さんとの練習を通して、僕は今、ほとんど薙刀と同じ動きで打撃をやっている。そういう中で、僕の武術に一貫性が強まるといいなとか思っている。

 

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