「黒牢城」(米澤穂信著 角川書店 2021年11月25日3版発行)を読みました。
内容は、荒木村重は織田信長に反旗を翻し、広大な総構えの有岡城に籠城するわけですが、その籠城の様子を描いたものでした。
荒木村重は、当初、毛利が救援に駆けつけてくれることを予定して籠城したわけですけれど、その当てにしていた毛利は何時まで経っても救援に駆けつけてきませんでした。籠城は、救援の当てがあって初めて意味があるわけですね。結局、時とともに、城内には、だんだんと、厭戦気分が漂ってくるわけですね。
ところで、荒木村重の有岡城籠城というと、黒田官兵衛の有岡城での幽閉が有名ですよね。
黒田官兵衛は、有岡城に乗り込んで、荒木村重が織田信長に侘びて開城するようにすすめるわけですが、荒木村重はそれを拒否し、黒田官兵衛を捉え、城内の土牢に閉じ込めてしまったわけですよね。
この本でも、当然、そのことが書かれています、というか、黒田官兵衛が準主役のような形で登場してきます。そして、それは、次のような形で登場してきます。
籠城が長くなってきますと、城内では、厭戦気分や様々な思惑やらが原因で、いろいろとトラブルも生じ、また、何度か、ミステリアスな事件も発生してくるわけですね。そのうちの4件について、荒木村重が土牢に赴き、牢内の黒田官兵衛にその謎解きを請うという設定で登場させているわけです。
その辺のことは、この作家さんがミステリー作家でもあることから出た発想で、多分、それは史実ではなく、フィクションではないかと思われますが、この本を読み物としては面白くしているところかもしれません。
最後は、荒木村重が自分自身で直接毛利に救援を頼みに赴くために有岡城を脱出するわけですね。
荒木村重の有岡城脱出後、有岡城は、間もなく内応によって落城し、武将らの妻子親族は、その多くが処刑されました。
なお、荒木村重につきましては、
「生き延びた。有岡城を脱け出した後も尼崎城、花隈城を頼りに、さらに翌年7月まで戦い続けた。毛利を待っていたのだろう。花隈城が落ちても村重は、毛利領内に逃れて生き延びた。
後に茶人として摂津に戻り、有岡落城から7年後に天寿を全うした。辞世は、おそらくあったのだろうが、知られていない。誰もかれのことばを書き残さなかったのだろうか。(P.436)」
と書かれていました。
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