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2023年05月19日16:34

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「八本目の槍」

 「八本目の槍」(今村 翔吾著 新潮社 2019年7月20日発行)を読みました。


写真: 「八本目の槍」


 この本のタイトルを見た時、多分、この本は、「賤ヶ岳七本槍」に関係したものなのかな〜、面白そうなので読んでみるか、ということで、図書館から借りてきたものです。

 読み始めてみましたら、案の定、「賤ヶ岳七本槍」に関するものでした。

 ちなみに、「賤ヶ岳七本槍」に関しましては、この本では次のように紹介しています。





「虎之助が世に出るきっかけとなったのは、天正11年(1583年)4月、殿下がまだ羽柴秀吉と名乗っていた頃、宿敵の柴田勝家と雌雄を決した賤ヶ岳の戦いである。この時に虎之助は小姓として本陣に侍っていた。

 あと一突きで崩れると見た殿下は、残りの手勢を全て投入することを決め、小姓衆にも突撃を命じたのである。若き虎之助も無我夢中で敵を求めた。そして敵将、山路正国の首を上げるという大手柄を立て、三千石を拝領することになった。

 華々しい活躍をした殊勲者が他にも数名いたことから、そのうちの七人を以て、「賤ヶ岳七本槍」と呼ばれるようになった。「七」という数は縁起が良く、古今このような時によく用いられる。

     ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 実は賤ヶ岳で活躍した者は七人ではない。ある者はその場で討ち死にし、ある者は「七」という縁起のよい数を維持するために数えられなかった。佐吉もこの時、敵を討って殊勲を上げている。

 謂わば佐吉は、七の枠に阻まれた八本目の槍であった。  (P. 8〜9)」





 ところで、この本は、次のような目次の項目の順で書き進められていました。





     目  次

  一本槍  虎之助は何を見る

  二本槍  腰抜け助右衛門

  三本槍  惚れてこそ甚内

  四本槍  助作は夢を見る

  五本槍  蟻の中の孫六

  六本槍  権平は笑っているか

  七本槍  槍を捜す市松





 これらの目次に登場してくる人物は、全員、賤ヶ岳の戦いの際には秀吉の小姓だったわけですが、彼らが小姓に取り立てられた経緯やその後のことについて、目次の順に沿って、詳しく書かれていました。その概要のほんの一部は次の通りです。

 「一本槍」に登場してくる虎之助とは、加藤虎之助のことで、その後、肥後半国を賜り、大大名となりました。

 「二本槍」に登場してくる助右衛門とは、糟谷助右衛門のことで、最終的に1万2千石を賜って大名となりましたが、関ヶ原の戦いの際には西軍に付き、そこで戦死しています。

 「三本槍」に登場してくる甚内とは、脇坂甚内のことで、関ヶ原では東軍につき、淡路洲本3万石の大名となっています。

 「四本槍」に登場してくる助作とは、片桐助作且元のことで、秀吉の時代、やっとこ1万石の大名となり、奉行の一人となりました。秀吉没後、大坂の陣を避けるよう秀頼に進言しますが、聞き入れられなかったため、秀頼に改易の申し出をしました。結局、大坂の陣は起こってしまい、大坂城は落城し、秀頼は自刃します。しかし、助作自身は、改易となっているにもかかわらず、ほどなく毒殺されてしまいます。

 「五本槍」に登場してくる孫六とは、加藤孫六嘉明のことで、その後、伊予20万石の大名となります。関ヶ原の戦いの際には東軍につき、その後も豊臣恩顧の大名の毒殺にもかかわります。

 「六本槍」に登場してくる権平とは、平野権平長泰のことで、5千石止まりであったため、「賤ヶ岳七本槍」の中では、唯一、大名になれなかった人物でした。しかし、関ヶ原の戦いの際に、佐吉(石田三成)から、大名になれる最後のチャンスだから東軍に付けと勧められて東軍につきました。しかし、家康の跡継ぎの秀忠の別働隊に配属となった結果、関ヶ原の戦いの際には本陣にいなかったため戦功を上げられず、遂に大名にはなれませんでした。

 「七本槍」に登場してくる市松とは、福島市松正則のことで、その後、秀吉から伊予1国11万3千石を賜ります。関ヶ原の戦いでは東軍につき、広島藩の藩主となります。大坂の陣では、家康から江戸留守居番を命じられ、動きを止められています。



 なお、この本のタイトルが「八本目の槍」となっていますように、実質、この本の内容は、8人目の小姓についての物語でした。

 「一本槍」から「七本槍」までの項目の中に、常に8人目の小姓の佐吉(石田三成)を登場させています。そして、その佐吉(石田三成)がいかに先見の明があったか、いかに優秀であったかを、繰り返し、繰り返し書いています。

 謂わば、佐吉(石田三成)礼賛の書という印象でした。







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