東京の家は寒さ対策がなされていないので、結構真剣に寒い……
着る物もそんなに無いし……ええ、愚痴ですよ。
さて、前回は脱線して戦国大名の悪口だけになってしまったので、今回は要点だけを取り上げていく。
墓自体は昔からあった。しかし残された者がどのような意図であろうと、供養するという気持ちで出来たお墓は鎌倉期以降である。
それから死者を厭う、または弔うタイプの墓が一般化して、当たり前の概念となったのは、仏教が浸透して風習に落ち着いたのは室町から戦国期にかけての事である。
もしかしたら死が身近に有りすぎて、自分はこうなりたくない、死とはこうであるべき…という、己の中にある倫理観が当時の人を責めたのかも知れない。
ともあれ、墓は乱立した。
しかし、それはあくまで「個人」に対するものであったし、また、土葬であった。穴は多少は掘ったがだろうが浅く、文字通り土饅頭の手前か上に、「要」としての感覚であった。
身分ある者の墓は、宝篋印塔や五輪等の形を模してあった。宝篋印塔とは、お経を納めた塔であり、五輪塔とは仏教の五大要素（エレメンタル）を5つの形で顕したものである。
それまででもない者の墓は、マニ宝珠の形を模しているものが多かった。マニ宝珠とは玉ネギみたいな、橋の欄干にある擬宝珠（ぎぼし）のアレである。それを縦長に引き伸ばしたのが墓のスタンダードな形になった。
それ以下の位の人間のだと、五輪塔をずいぶん簡素化した石の表に名前や戒名を彫った物になった。
もっとそれ以下だと、取り敢えず石を積み上げただけのものであった。
もっともっと低いと、そこ等辺に打ち棄てられていたか、土を盛っただけのものであった。つまり、文字通り「臭いものに蓋」したのだ。
こうして戦国期になると墓石は定型化し、また名前や戒名、死亡日が書かれることにより墓の意味合いが墓標ともなり、意味合いが強くなっていったのだ。
やがて、江戸時代となると宗門人別帳…つまり、戸籍生年月日を寺院が管理する時代が来る。
それだけではなく、旅行に行くにも生まれた赤ん坊に名前を付けるにも寺院の許可がいる事となる。旅行に行く際の通行手形を発行するのも寺院であり、悪い事して会心の見込みが無くてもやはり勘当の手形が発行される。これを持つ者が「札付きの悪」という事である。
因みにこの時代、神社の神主であろうと死ねば寺院で葬儀を行い、戒名を付けていた。
そうしたこの時代、「法事」が盛んに行われるようになる。これは儒教で言う所の、先祖崇拝や長幼の序にも通じ、幕府が暗に推進した節もある。
そうして一大法事ブームが来て、今まで3回忌までしたら大したものだったのに、7回忌13回忌、23回忌、33回忌、果ては50回忌やら100回忌迄する様になっていった。
こうした背景のもう一つには、一般平民の経済活発化、つまり世情が安定したので裕福になり、それが元で見栄を張るようになっていった、というのもある。
まあ、どれか一つという事ではなく、複合的にいろんな要素が混ざり合って空前の寺院の黄金期が来るのである。
ここで重要なのは、昔は放って棄てていた死体、又は死んだらそれまでという考え方から、死んでも追善供養を必要とする、死者を悼む…という風に、気持ち・風習が変わってきた事を意味する。
しかし、この時も未だ墓は「�‥攸髻Ν∧萓个聾凌佑飽譴帖ΝＪ莨譴麓�前の土地」であった。勿論この頃から、寺院内の境内にも墓場が出来始めているが、これの由来を言うと、昔のお布施は金ではなく、米や土地であった。その土地の中に自分チの墓も付いていたりして「ついでに供養もヨロシク」的な、ズルイやり方であったともいえる。そうじゃない場合も有るが。
この中で土葬というのが重要である。現在の様に火葬しないので、墓は結構かさばる。落語「らくだ」にも見られる様に、大体棺桶に入れて、それごと埋葬する分大きな穴を掘る必要がある。
だから明治時代まで「墓堀職人」が居た。
それだけの空間が必要なので、墓はどうしても「一人に一つ」となる。よって由緒正しい家の墓は、必然的にたくさんのスペースが必要なので、大きくなるのだ。
この現象が改正されたのは明治時代である。明治17年に制定された「墓地及埋葬取締規則」で、初めて埋葬に関する権限が寺院から行政に変更されたのである。
次いで明治30年に「伝染病予防法」制定され、この中の12条で「火葬」が定められた（※もっとも最初期は伝染病没者に限定されていた）。
本当に伝染病と土葬の関係の実証はなされぬまま、明治新政府によって次々に火葬場が建設され、明治33年には早くも火葬率・約３０％となり、ついには昭和7年辺りで火葬と土葬が５０％で拮抗する。
柳田國男はこの点を考察し、「都市化が進んで地方からでてきた地方出身者が、死ぬ時は地元の土地に還りたい」から、遺骨にする必要に駆られた…と結論付けている。
また、大戦を挟んで遺骨での無言の帰宅というのが常態化したのも大きいと思う。
第二次大戦後、木が無い為一時期土葬が復権したが、直ぐに火葬が全盛期となる。
この火葬全盛期を以って、現代型の墓が出来たものだと考えられる。前述の通り、明治から火葬はあった。しかし、浸透しだしたのは昭和期であり、特に昭和45年以降に火葬率が８０％となり、現代の納骨の空間（カロート）のある、棹石と呼ばれる長四角の墓で、その裏、若しくは墓標に何人もの名前が彫られる形となったのである。
何度も書くが「それ以前からそういう形式は有った」少ないながらも有ったし、「またそうじゃなくても近現代に親か祖父母の代に墓を整備した」場合がある。何故なら、デカイ墓場を持っていると、寺院からたくさん維持費を取られたりするし、また戦後区画整備などでむりやり一つに収める必要があったりしたからである。
全ては施工した年月日がどこかに書かれているので、それを確認した方が良いし、もし祖父母や曾祖父母が生きているのなら話を聞いたほうが良いと思う。
（ここ重要） 墓を語るのは辛気臭い話ではない。ルーツを辿る旅なのだ。厭わずちゃんと聞いとけば、寺院とのトラブルも減るし、何かあった場合にも対処が取れるのだ。
平成23年に火葬率が99，9％となり、もはや土葬する地域は皆無といっても良い。（ここにモスリム問題がある）
だが、ここまで歴史の変遷を見てきた人なら分かるだろう。墓、特に遺骨は遺族にとって寺院にとられた「人質」である。そしてこのタイプの墓、更に言うと墓のスタイルは100年くらいの周期で変わってきている。
これまでの親族一党を纏めて入れるスタイルをこれからも維持するのなら公苑（公の管理する）墓地等が良いかと思う。そして気に入った僧侶を呼んで供養して貰えれば良いのだ。そうしない手もあるし、キリスト教だって良いと思う。何故ならそれは個人の自由だから。自分の信仰のままにすればいいのだ。
そうではなく、なんか兄弟と仲が悪いとか親族間で上手くいってない、または子供が女しか居ない、もっと言えば子供や孫が居ない……というのなら、折り合いをつけて「墓じまい」をし、また元々墓が無いのならもう自分用の墓等建てる事も無く、樹木葬がお奨めである。
これは死んだら若木の根元に遺骨を埋めてもらい、樹を墓代わりとするやり方である。
他に永代供養墓等が、寺院・公営共にあるが、はっきり言って高い。
また、タワーパーキングみたいにエレベータ管理している墓も時々見受けられるが、震災あったらどうするの？ そうじゃなくてもメンテ代とか懸かるから、なんだかんだで追加で金取られると思うし、またそういったシステムは長くて60年、短ければ30年で全部がダメになるぞ。
樹木葬は結構安いのも魅力の一つでもあるし、また一見墓地に見えないので遺族が墓参りに行く気構えが無いのも魅力である。万が一、何かあっても、もう自然に帰っているので気にしなさんな。産土の神の一部となったと思えば良いんである。
また他に、関西では遺骨をたくさん集めて大仏にして本尊とする場所もある。それも面白いのでずっと拝まれたい人にはお奨めする。
だが、遺骨を加工してダイヤなどにし、ずっと肌身離さず持っているというやり方は執着につながるので、あまりお勧めはしない。
宇宙が好きな人には、遺骨をロケットで打ち上げる宇宙葬というのもある。だがこれは制約上遺骨の一部分だし、また軌道上に乗るのが精一杯で、いつか大気圏に突入する運命だとは一言付け加えておく。
遺骨にして、その後ガンジス川に流すやり方もある。インド好きな方、来世でインド人になりたい方にはお奨めだ。
食べる…という方法もある。見た目がアレなので、気乗りしないだろうがそういう手もある…ということだ。因みにアタイは、大尊敬していた曽祖父の遺骨を、家族の目を盗んで一部食べている。そうする事で、曽祖父がいつでも見守っていてくれているという気持ちになる。まったくお奨めしないが。
葬儀をするしない自由、法事をするしない自由、宗派を選ぶ自由、こうした当たり前の事が出来ない現代はとても不便である。だから本来持っていた、こうした自由を選択する権利をどうにかして取り戻して欲しい。供養しないと祟りがあるとか、そんな事は無い。それは欲ボケ坊主の恨み節でしかない。
ただ、一つだけ言っておく。何事も独断で決めてはいけない。先ずは家族、親族と話して折り合いを付けなければ。その中で自分が望まない結果になったとしても、それはそれで従う事。たかだか墓の事で、何で家族大喧嘩とか親族断絶とかになるのは忍びない。
何が正しいかはその時その時になってみないと分からない。だから、気を長く。
それがこの問題に関する唯一の方法である。
…なあに、死ぬまでに決めればいいのさ。
ログインしてコメントを確認・投稿する