三「10月26日からの旅順要塞攻撃は、ロシア側に日本側を上回る損害をもたらしなが
らも、要塞本体の攻略という点では、大きな前進が無いままに終わった」
榴「この結果に合わせて、10月16日にバルチック艦隊が極東に向けて出航した、とい
う情報が東京の大本営と海軍総司令部の焦りに火を点けマス。それまでは攻略の催促
はしていたけれど、戦術そのものに口を挟んだりはしてこなかった。しかしこれ以降
は戦術そのものに、あーでもないこーでもないと口を挟むようになってきマス」
歩「海軍と大本営が、『二百三高地の攻略』を再三再四にわたって要求してきたのもこれ
以降デス。ある小説によると、8月ごろから二百三高地攻略要請があった、とされて
いますがそんな事実は記録されていません。現地軍と大本営のやりとりが記録されな
い、なんてことはあり得ないので、小説に書かれていることはウソということデス」
三「海軍および大本営が何故、二百三高地攻略を要請してきたか?というと」
榴「二百三高地を占領して着弾観測所とし、28センチ榴弾砲によって旅順艦隊を砲撃し
て、艦隊を壊滅させよということデス」
歩「つまりこれまでは『旅順要塞攻略』が主目標だったのが、『旅順艦隊壊滅』のほうを
優先しろ、ということに変わったということを意味しているのデス」
三「しかし満州軍総司令部の大山巌、児玉源一郎という首脳陣は、この二百三高地攻略要
請をはねつけてしまったのじゃな」
榴「このへんもある小説の記述とは食い違っていますが、実際の記録では大山巌、児玉源
一郎が二百三高地攻撃に賛成したことは一度もありません。徹頭徹尾絶対反対の立場
を貫いていマス。反対論は記録にも残されていますから、間違いありません」
歩「陸軍の立場としては『旅順要塞攻略』が絶対優先デス。『旅順艦隊壊滅』を達成した
ところで、旅順要塞が落ちるわけではありません。旅順要塞を落とさない限り、第三
軍を動かすことはできない。そして陸軍は奉天方面での一大決戦を想定しています。
ここには是が非でも第三軍も参加させたい。なので旅順要塞攻略に何ら寄与しない、
二百三高地攻撃など言語道断、という見解で一致していたのデス」
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