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2008年04月26日22:00

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ブータン9 奇跡の人々

 なぁんでこんなに人が好いかなブータン‥‥
 いや、全国これ田舎で、みんな顔見知りだから鍵かける習慣なんかないよーん、って感覚は分らないでもないですが。ないですが、それにしたって人が好すぎないかオイ!?
 初日にして荷物に鍵を掛けるのがバカバカしくなり、2日目で貴重品管理に気を使わなくなり、3日目では宿泊したコテージに鍵も掛けずに出歩く始末。そして何の問題も起こらず。
 そもそも、どこ行ったってセイフティーボックスとかロッカーとかが存在しない。お寺の前で「ここから手荷物禁止ね」と言われたら、みんなそこいらにバッグ放置するだけ。
 どーゆー天国だココは‥‥

 仏教の、餓鬼界と天上界の箸の話を思い出しました。
 両方とも同じだけの美食が用意されていて、そして長すぎる箸が置いてある。餓鬼界の人々は箸が長すぎて何も食べることができず、天上界の人々はお互いに食べさせ合って満腹している、という話。
 ブータンの食事は基本が手掴みなのでこの話を知ってるとは思えないんですが、しかしこの精神なんだよなぁ‥‥

 元々、非常に貧富の差が出づらい土地柄でして、だって8割がたの家が、自分達の食う分の米と野菜を作ってるだけだもん。余った米や野菜を肉や衣類と交換して、遊牧民や織物を生業にする人はそれで食ってる。
 苦労して金持ちになったとして、そのメリットが全くないのです。大邸宅を建てるほどの平地はない。高価な織物を買っても見てくれるのは近所の人と家畜くらい。車を買っても舗装道路が少なすぎて使い道なし。ブランドものや宝石や外国の美味珍味なんかそもそも輸入してない。農地は売り買いするものではないし、使用人にできるような職にあぶれた人もいない。
 何かの間違いで金持ちになっちゃった人は、じゃあどうするかって、まず村のお寺を修繕します(笑)それでも追い付かないくらい金持ちになっちゃった人は、新しくお寺を建てます(大笑)
 そして村人から「なんて徳の高い人だ!」と褒め称えられ、終了。
 ‥‥えーと‥‥‥‥

 ブータンはGNPこそ低いものの、決して「発展途上国」ではないと思いました。
 むしろ、これ以上発展するとヤバい。いわゆる「先進国」が抱える貧富の差が出てきて、逆にヤバい。
 その兆しは既にあります。TVやネットの普及に伴い、欧米式の消費生活に憧れて首都ティンプーに出てくる若者が増えてきてるんです。
 首都と言っても、それだけの人数(まあ7万人なんですが)を賄えるだけのデスクワークはない。そこで貧民が生じます。貧民は金を求めて犯罪を犯します。治安は悪化し、人々は疑心暗鬼になります。
 ブータンに限って、欧米的消費主義は退化にしかならないんですよ。

 もちろん、生まれた瞬間から第一次産業者か僧侶しか選べない人生ってのもどーよ?ってのもあります。各村落は閉鎖社会だし、運悪くそのコミュニティに馴染めなかった人の自殺率は高く、死因の1%を占めています。仏教って自殺を咎めないからね。
 決して楽園ではないのです。人の世界に楽園なんかない。でも、それでも怖ろしく平穏な社会構成である事は確かで、それを維持するかしないかを決めるのは、ブータンの人々なのです。


 首都ティンプーで一泊、何を間違えたか国で最高の格式を誇る「ホテル・ドゥック」に泊まってしまったのですが(帝国ホテルみたいなもん。ドゥック・ユルってのがブータンの正式名称)、ここのスタッフさんですら、ブータンの親切を失っていませんでした。
 その日、ガイドさんとドライバーさんはお家がティンプーにあるので帰ってしまい、珍しく夕食が私一人だったんですね。そしたら給仕さんの一人が「辛いものは大丈夫か」「冷めてしまったから温かいご飯に取り替えようか」「日本人?箸を持ってこようか」「コーヒー入れようか」と、大変な気の使いようで^_^;;
 サービス精神とかじゃなくて、外人女が一人で食事してるのを本気で心配してるのが伝わってくるから泣ける‥‥

 五色の旗、原色の仏たち、白い壁、繊細優美な手織布、無数の鳥と動物、見知らぬ花々、遙かに蒼い山脈、眼下を流れる雲、断崖絶壁を落ちる滝、厳しい太陽と冷たい風。

 アジアの宝石、ヒマラヤの虹。

 それは見た目の印象だけではなく、穏やかで優しくて礼儀正しい人々への、私が抱いた感想でした。 
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