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2023年11月13日15:15

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Zさんとわたし・2アシスタントとZさん

おカタいミッション女子校を出てもぐりこんだのは、実家から各駅停車2駅の、なんとものんびりした私大だった。小学校5年で「漫画家になろう!」と決心したが、いかんせんお硬い日本画家女性カップル(まあ明治生まれのレズビアンですね、戦前画壇デビュー)の養女なので「日本画、それも輪郭線を描く『大和絵』を勉強すれば漫画描くのにイイんじゃないかな?」と考えたワケです。

とはいえ、芸術学科の枠はたった72名、当時私大では当たり前だった「水増し合格」もない(なんでも発足が国連ユネスコの実験校だったそうで、そういった点キッチリしている。そのせいか学費が笑っちゃうほど安かった。私大にありがちの「寄付金」も一切なし!)小さな小さな私大で、Zさんの最初の作品「ひがみちゃんJam」の舞台「小田巻大学」はモロこの学園ライフ。
まあ今は首都圏のフツーの中堅私大ではある。
が、学内に学生自主運営の「レンガ造りの大きな飯炊きかまど」があったり、地域猫ならぬ「大学猫」の集団がいて代々みんなで世話していたり、「学内焼き芋焚き火の自由」の伝統が続いていたり、いまだにヘンな、なぜか毎日がお祭り騒ぎの学校だ。

小さな大学の小さな「漫画研究会」なのに、なぜか毎年プロを輩出している「名門」で、だいぶん遅れて入部した私にとって先輩から聞かされる「入れ違いで在学デビュー・卒業したZ先輩」は、まさに「あこがれ星」となった。

漫研でない芸術の同級生の中には複数「高校でバイト代ためて『鈴木光明先生の、白泉社後援・少女漫画教室』行ったわよ〜・ハギオ先生とお会いできるから〜♪」なんてリッチ層がいたりなんかしたが、こっちとら明治からのフランス系修道院女子校「バイト厳禁、漫画・アニメ厳禁」おカタいおカタい、マンガ教室行ってプロとお会いするなんて夢のまた夢…(笑)

が、なぜか先輩の口利きで「喫茶店で」お会いできることとなった。
「オレZ先輩に用あるから、一緒に来る?」
わー!わー!わー!である。
川崎在住とのことで、登戸駅前の喫茶店に、先輩に引っ付いていった。
「お邪魔しちゃいけない、端っこでお話きかせてもらえれば…」
と思って、自分の描いたもの持ってくのは失礼だと…今思えばこのほうが「失礼」だったのだが。

自画像通りの、ふわふわしたロングヘアーにキラキラ大きな瞳の、表情豊かな、明るくて、そして和やかな人だった。
知的な会話、優しい心遣い、柔らかな声、長くて美しい指に、ドキドキしてしまった。
なんだか紹介してくれた先輩との話はどうでもいいようで、いろいろ話題を振ってくれた。
キンチョーのあまり内容は覚えていないが、住所を聞かれて
「こんどウチに遊びにいらっしゃい♪」
と言われた。ビックリした。

実は(後で分かったのだが)これはセッティングされた「顔見せ」だったのだ。
Zさんは、在学中からアシスタントを勤めてくれた同級生が結婚で遠くへ引っ越すことになり、新人募集中。漫研の先輩でひとり「これは」という人が入ったのだが、「巨人ファンのお父さんと夕食のとき話題がまったく合わなくて、残念、ボツ」だったそうだ。(そのころはご実家で仕事していたので、夕食は御家族勢ぞろいになる)
「野球はどこが好き?」
「野球は全然わかりませんー!」
「それはイイわね〜!」
といういきさつがあったが、そのことだった
「遊びにいらっしゃい」ったって、まさかねー、と思っていたらホントに「いらっしゃいな」と電話があった。

土曜の午後だったと思う。
お邪魔したら、なんと「ひがみちゃん」〆切真っ最中だったので慌ててしまった。
漫研の1年先輩がアシスタントに入っていた。
時効でしょう、もういいでしょう、「篠原烏童さん」である。
国文専攻だったが、高校時代からベテラン絵本作家の弟子で腕を磨いていた、ものすごい画力の持ち主で、日頃部室で会うことはあっても、Zさんのスタジオで顔を合わせるまでアシスタントをしているとは知らず、ビックリした。
お茶とお菓子をいただいて、おしゃべりして、
「そこで見ててね」
と言われて、端っこのイスで大緊張しながら、生まれて初めての「〆切前の現場」を見学させてもらった。
ら、「ちょっと、このページ消しゴムかけてくれる?吹き出しのセリフは消さないでね」
カチンコチンで消しゴムかけたら
「うーん、いいわ。じゃ、ここベタ塗ってくれる?筆と墨汁そこにあるから」
ド緊張である。はみ出しちゃいけない。
「はみ出したら、そこにミスノン(修正液)あるから大丈夫、固くならないでー♪」
なんかニコニコ、ものすごく穏やかな雰囲気で、ノセられて精一杯やってしまった。
お母様のものすごくおいしい夕食をご馳走になって、薄青い洋封筒を渡されて
「また来てね!」
と言われた。
つまり「新人アシスタント採用試験合格」だったのである。

洋封筒は、帰って開けてみたら「ほんの数時間・お茶・食事コミの見学料」には申し訳ない程の額のお札が入っていた。嬉しいので半分
「稼いだお金です」
と実家の母に渡し、半分は大切に取っておいた。

嬉しいことに、「ひがみちゃんJam」のアシスタントに呼んでもらえるようになった。
技術はまだまだだったと思うが、修道院女子校仕込みのお行儀の良さが「巨人ファンにあらずんば人にあらず」のお父様のお眼鏡にかなったようだ(笑)

しかし「Zスタジオ」は、実は「アニメ・タイガーマスク」で言うところの「虎の穴」だったのである!

誰も技術を教えてくれない!
とにかく自力で、現場で「盗んでレベルアップする」しかない!

と、いうわけで、壮絶な「お勉強の日々」が始まることになるのだが、長いので続く…

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