藤本タツキ「チェンソーマン」

アニメ化にあたり、シーズン覇権の雰囲気が放映前からあった。興味を持ち
連続して観ると成程、評価にふさわしい出来栄え。アニメ第１期を終えて、
異能バトルものの印象を持った。なのでこのまま原作をスルーし、アニメだけを
楽しみに暮らす算段でいた。このカテゴリーならばネタバレも怖くないので、
特集番組も安易に見る。大失敗だった。パネラーが次々と世界観の凄みを強調し、
画力については殆ど触れない。実は考察を第一に楽しむ作品なのだと番組中に知った。
気付いた時には盛大にネタバレしており、今後の展開も或る程度分かってしまった。
流石にラスボスの正体については伏せられたが、こなれた読者であれば予想はつく。
これは読破してこれ以上のネタバレを防ぐしかないと思った。年末から読み始め、
1/3に第１部のラストにあたる11巻まで読み進んだ。これは確かにアクション中心の
作品ではない。「デスノート」に匹敵する心理劇と鮮やかな伏線の回収がある。
意図的かどうかは分からないが、第１部が閉じても情報が不足している箇所が
数多くあり、底知れない世界観の広がりを感じさせる。風呂敷を綺麗に畳んで
全ての謎を解決する作品も爽快だが、余韻で惹きつける「チェンソーマン」も
傑作に違いない。