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2021年06月05日13:01

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「テスカトリポカ」「QJKJQ」『レッドネック』『ものがたりの家』『ヴィクトリアン・ホテル』

「テスカトリポカ」佐藤究著
組織を壊滅された麻薬密売人はメキシコから極東に逃亡。仲間を得て日本で臓器売買システムと麻薬密売ルートを築いてゆく。屈強で無垢な青年を我が子と呼び殺し屋に育てるが。世界観よしとキャラよしと5時夢で中瀬編集長絶賛。大長編で悪い人間が大勢出てくるし、視点がよく変わるが読みやすく面白い。アステカの神々や歴史の記述も興味深い。麻薬と暴力の世界だけれど、善悪を越えた神話的な読後感。臓器ビジネスの作成方法が具体的。繁栄はアステカ神話の神に捧げられる生贄の儀式のごとく。アステカの祭りにおいて選ばれた祭りの生贄は1年間贅沢に暮らし、祭りの日に神に心臓を捧げる。臓器売買で生贄の心臓を神に捧げる神官を嘯いていた彼は海を越えて神の生贄になりに来たのだと悟る。青年が商品である子供と語り合いテスカトリポカが日食と気づくシーンも圧巻。祖母の語る昔話で締めにも余韻。

「QJKJQ」佐藤究著
主人公の女子高生は猟奇殺人一家の一員。しかしある日兄が殺されて死体が消え、母も失踪。彼女の知る真実と”父親”の正体とは。国家によるフィールドワークとは。一部除きほぼ一人称で心象風景が地の文で混じってきたりする独特の文章だが、上手くて読みやすい。
心を守るために加害者と思い込むこと。殺人者の研究のために救わず監視すること、殺人ショーを楽しむ人々。残酷な描写も特徴かな。きっかけが弱かったり粗削りなところもあるけど、抒情的で魅力のある文章と書くテーマをもっているところがいい。
ラストのと父子の挿話に余韻。キリスト教の肉を裂く代わりにパンを裂けという。彼女の本当の父親は連続殺人犯だが猟奇殺人犯ではなく普通の人であるということ。殺人衝動に突き動かされるが快楽を感じるわけでなくそんな自分に悔いていることが伝わる。
「テスカトリポカ」でもキリスト教の「神は生贄を求めたりしない」という挿話があった。キリスト教にこだわりあるのかも。

相場英雄著『レッドネック』
アメリカから日本の広告代理店に呼ばれた男はSMS等を駆使した極秘プロジェクトを始める。担当である主人公は内容を教えられず燻るが独自に情報を得る。都知事選下で行われる恐るべき計画とは。我々がデータと引き換えに奪われるものは。前アメリカ大統領の当選のカラクリもわかる。

吉田誠治著『ものがたりの家』
ファンタジーの住人の住んでそうな家の外観と間取りがとてもかわいいイラストで描かれている。ひとつひとつに詳しい説明もあり、見てるだけで楽しくなり物語が浮かんでくる。洋風の家だけでなく和風の家もある。各家のモノクロ線画もあり。

下村敦史著『ヴィクトリアン・ホテル』
パーティが行われているヴィクトリアンホテルに滞在している人々の人間模様。大きな出来事はなくとも人々のこの日だけの関わりがそれぞれその後の生き方に影響してゆく。他人同士だか袖触れ合うも多生の縁というか。時間軸ミステリーでもありほのぼの人情物でもある。
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