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2021年03月28日05:36

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晴らせぬ恨みを晴らす

「あやしい絵展」・・・退廃的、妖艶、エロティック、表面的な「美」への抵抗
大久保 正雄『旅する哲学者 美への旅』第239回
「あやしい絵」、背後にあるものは何か。
失われた幸せ、衝撃から髪を靡かせて疾走し遁走する、葛藤と救済。隠されたドラマは何か。
異界から聖なる者を誘惑する女、一途な執着の女、この世では結ばれない男女の愛、落城寸前の我が子秀頼を守ろうとする淀君、生霊、略奪愛。
その子二十櫛にながるる黒髪のおごりの春のうつくしきかな 鳳晶子『みだれ髪』1901
泉鏡花『高野聖』、「安珍清姫伝説」、近松門左衛門『心中天網島』、淀君の苦悩、運命の女(Femme fatale)、六条の御息所の生霊(謡曲『葵上』)、与謝野晶子『みだれ髪』、河竹黙阿弥『處女翫浮名横櫛』、『京の舞妓』。
【果たせぬ夢を果たし、晴らせぬ恨みを晴らす】生老病死、怨憎会苦、愛別離苦、求不得苦、五蘊集苦。果たせぬ夢を果たし、晴らせぬ恨みを晴らす。この世に渦まく悪逆非道、鬼畜、化粧せる不正、不条理に反抗、怨敵調伏する。
北野恒富の屛風『道行』は近松門左衛門「心中天網島」を題材としているが、幕末の志士、高杉晋作「三千世界の鴉を殺し ぬしと朝寝がしてみたい」の都々逸を合わせて展示されている。
幕末から昭和初期に制作された絵画、版画、挿図をみると、退廃的、妖艶、グロテスク、エロティック、「単なる美しいもの」とは異なる。「あやしい絵」のほとんどは、女たち、虐げられた者たちである。江戸時代からつづく、封建制、階級社会、抑圧された者たちの世界。鳳晶子『みだれ髪』1901年、ロマン主義の花が咲く。
*大久保正雄『旅する哲学者 美への旅』より
大久保正雄『永遠を旅する哲学者 イデアへの旅』
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展示作品の一部
月岡芳年『魁題百撰相』は、戊辰戦争の兵士たちを、江戸初期の人物の姿を借りて表したシリーズ。実際に芳年は上野戦争の現場を訪れ、傷ついた兵士や遺体を模写したという。流血したその姿からは、無念さや気迫が感じられる。
安本亀八「白瀧姫」1895年頃(明治28年頃)桐生歴史文化資料館蔵
藤島武二装丁、鳳晶子『みだれ髪』1901年(明治34年
稲垣仲静「猫」1919年頃(大正8年頃)星野画廊
上村松園『焰』大正7年、東京国立博物館 [展示期間:3月23日〜4月4日]
速水御舟『京の舞妓』、東京国立博物館
曾我蕭白『美人図』江戸時代(18世紀)、奈良県立美術館、東京展のみ、3月23日〜4月4日
橘小夢『安珍と清姫』大正末頃、弥生美術館 [後期展示:4月20日〜5月16日]
ダンテ・ガブリエル・ロセッティ《マドンナ・ピエトラ》1874年、郡山市立美術館
アルフォンス・ミュシャ「ジスモンダ」1986
甲斐庄楠音「畜生塚」大正4(1915)年頃、京都国立近代美術館蔵
甲斐庄楠音「幻覚(踊る女)」大正9(1920)年頃、京都国立近代美術館蔵
甲斐庄楠音「舞う」大正10(1921)年
甲斐庄楠音《横櫛》大正5年頃、京都国立近代美術館、通期展示
岡本神草「拳を打てる三人の舞妓の習作」1920、京都国立近代美術館
岡本神草「口紅」1918、京都市立芸術大学資料館
岡本神草「仮面を持てる女」1922、京都国立近代美術館
岡本神草「骨牌を持てる女」1923、京都国立近代美術館
北野恒富『道行』大正2年1913頃、福富太郎コレクション、3月23日〜4月4日
北野恒富『淀君』大正9(1920)年
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参考文献
田中麗子「あやしい絵 通史」
「あやしい絵展 図録」毎日新聞社2021
上村松園展・・・美人画の系譜
http://mediterranean.cocolog-nifty.com/blog/2010/10/post-1f70.html
「ラファエル前派の軌跡展」・・・ロセッティ、ヴィーナスの魅惑と強烈な芳香
https://bit.ly/2Coy0jB
「ギュスターブ・モロー展 サロメと宿命の女たち」・・・夢を集める藝術家、パリの館の神秘家。幻の美女を求めて
https://bit.ly/2v5uxlY
「怖い絵展」
http://bit.ly/2z8eCTV
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明治期、あらゆる分野において西洋から知識、技術などがもたらされるなか、美術も西洋からの刺激を受けて、新たな時代にふさわしいものへと変化していきました。
このような状況のもとで生み出されたさまざまな作品の中には、退廃的、妖艶、グロテスク、エロティックといった「単なる美しいもの」とは異なる表現がありました。これらは、美術界で賛否両論を巻き起こしつつ、激動する社会を生きる人々の欲望や不安を映し出したものとして、文学などを通して大衆にも広まっていきました。
本展では幕末から昭和初期に制作された絵画、版画、雑誌や書籍の挿図などからこうした表現を紹介します。
1.一度見たら忘れられない名画たち
日本近代の美術における美しさの「陰画(ネガ)」をご紹介。上村松園の《焰》や《花がたみ》、鏑木清方《妖魚》等、「あやしい」魅力にあふれた作品が勢揃いします。
2.ディープな「あやしい」作品が盛りだくさん
甲斐庄楠音《横櫛》、橘小夢《安珍と清姫》、秦テルヲ《血の池》等、脳裏に焼きつくほど美しく強烈な「あやしさ」をそなえた作品が多数出品されます。
3.私たちを捉えて離さない「あやしい」物語
安珍・清姫伝説、「高野聖」等の物語はさまざまな作家を魅了し作品に展開されました。非現実であったり「あやしい」女性が登場したりする物語は、明治、大正期のみならず今の私達にも魅力的に映ることでしょう。
4.西洋美術も!
アルフォンス・ミュシャ、ダンテ・ガブリエル・ロセッティ、オーブリー・ビアズリー、エドワード・バーン=ジョーンズ等、日本の画家達に影響を与えた西洋美術の作品もあわせて紹介します。

1章:プロローグ 激動の時代を生き抜くためのパワーをもとめて(幕末〜明治)
2章:花開く個性とうずまく欲望のあらわれ(明治〜大正)
 1 愛そして苦悩―心の内をうたう
藤島武二と田中恭吉の絵画。彼らに影響を与えたアール・ヌーヴォーのアルフォンス・ミュシャ、ラファエル前派ロセッティ、象徴派。
 2 神話への憧れ
古事記のイザナギノミコトとイザナミノミコトの物語を題材にした『黄泉比良坂』(1903)、青木が人間の生命の始源ととらえた海を題材にした『運命』(1904)。
 3 異界との境で
泉鏡花『高野聖』の修行僧、宗朝が傷ついて汚れた体を親切な女に川で洗い流して癒してもらう艶めかしい場面、美貌の女の色香に惹かれる迷う僧。だが彼女は男を動物に変えてしまう魔女。橘小夢作『高野聖』。谷崎潤一郎『刺青』の女郎蜘蛛が背中に彫られた少女を描いた橘小夢作挿絵『刺青』。
 4 表面的な「美」への抵抗
豊臣秀吉の側室である淀君、北野恒富《淀君》(1920)。暗闇から浮かびあがる、口を一文字に結び先を見据えたその表情。
島成園の《無題》(1918)は、顔に痣のある女性を描く。島は「あざのある女性の運命とこの世を呪う気持ちを描いた」と語る。
 5 一途と狂気
物語の挿絵が、浮世絵の系譜にある場面を重視したものから、登場人物の内面を描くものへと移り変わった。近松門左衛門『心中天網島』を題材とした北野恒富《道行》(1913)は、死を決意したふたりの悲しみの表情と、それを象徴する鳥の姿。
3章:エピローグ 社会は変われども、人の心は変わらず(大正末〜昭和)
https://www.momat.go.jp/am/exhibition/ayashii/
――
「あやしい絵展」東京国立近代美術館、2021年3月23日(火)〜5月16日(日)
「あやしい絵展」大阪歴史博物館、2021年7月3日〜8月15日

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