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2019年01月20日00:18

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どろろ

 カルナさんショック以来、気になるアニメはちゃんと録画して(深夜にリアルタイムで見てたら社会人できんわ)、なんだかんだと見ております。大体、週に2〜3作品くらい?
 今年は!年明けから、私が手塚作品の中で一番好きな『どろろ』が!!
 どれくらい好きかって‥‥あ〜〜こういう時mixiありがたいわ。https://mixi.jp/view_diary.pl?id=127869144&owner_id=1680995 これくらい。公表してませんが、この3ヶ月前に色紙サイズのBJリトグラフ35万円に「誰が買うんだ!?」と茫然として、数日後に売約済みの札が付いてて「誰が買ったんだ!?」と驚嘆している日記がございます。BJ流石やな。

 しかも、だよ。シリーズ構成が、「えっマジかこういう所にも三谷幸喜レベルの脚本家が居るのか」と驚愕した小林靖子にゃん。
 危惧より期待が上回るっつーの。制作会社は『BANANA FISH』がいい出来だった所だし。<ブランクが30年あろうと、1年あればこの程度には詳しくなります。素地のある古いヲタクですから。

 ただ、『どろろ』はかなり、今の時代だと自主規制されそうな要素てんこもりで‥‥主人公が手足目耳声全部失ってて、しかもそれで「お前も化物だろう」みたいに言われて助けた村から石を投げられてを追われるとかね。秋田文庫の時点で既に、かなーりいわゆる差別用語が置き換えられてたりするもんで、どこまで画面に映せるかな?というのが一番の心配だったのですが。
 やってくれたよ。一話目から蛭子のような百鬼丸の赤子姿。

 私は前々から思っていたのですが、身体能力の一部が失われた状態を、そのままで表現した言語を、何故、日本語の語彙から無くそうとするのでしょうか。
 失われた人達は、その言葉そのものにではなく、そこに込められた侮蔑にこそ傷付くのではないでしょうか。「ああ、あの人は盲だよ。手伝ってやんな」みたいな、温かい言葉まで一緒に刈ってしまって、本当にいいのでしょうか。
 「あの人は目が不自由なの。だから助けてあげないとね?」と言う事の方が、寧ろ上から目線で、自分とは違うという線を引いているようで、どうにも尻がムズムズするんです。前者の方が、そういう存在も当然あるよ珍しくないよあんたもいつそうなるか分からないんだから相身互いだろ?みたいなニュアンスがあって、好ましい。
 言葉狩りして差別がなくなるなんてことは絶対にないと思うのね。寧ろ、この世ってのは『健常者』だけが普通に暮らすべきもので、へーその中から外れた人もいるんだねー、関係ないけど。みたいな排他的な事になってね?

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 ま、そういうアレコレはひとまず置いておくとして。

 靖子にゃん、信じてたよ!私はあなたのセンスが大好きなんだよ!確かに000でかなり失望したけど、人と人とが出会う事で起きる化学変化を描かせたら、その複雑さとバランス感覚がずば抜けてんだよこの人。
 原作と全く違うのに原作に沿っていて原作以外の情報を入れてくるとか、どんだけ企画会議を重ねたのやら。週単位で事情が変わってくる特撮よりはまだ楽かもしれないけど、ホント大変だと思う。
 しかも原作はマンガの神様だ、しかも打ち切りエンドだ。どう決着させるのか、もう楽しみしかない。子供の頃から、ちゃんとした最終回が読みたいとずっとずっと思ってたんだから。神様が火の鳥の所に行ってしまった時、「どろろ――お願いだからどろろのオチ―――!あと火の鳥はまだ現代に辿り着いてない!!」と、精神的には地面に膝をついて爪を立ててる感覚だったんだから。
 リアルタイムではない世代なので、その人達よりはショックは全然少なかったと思いますけども。

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 平成の終わりに、50年ぶりに再び『どろろ』のアニメを作成する事の利点は、現在の技術を駆使してるからとにかく絵が綺麗。最初に水墨画で描いてからフォトショで色を加えている背景など、彩度が低いのにとんでもなく美しいです。
 CGも、今なら綺麗に乗せられるでしょう。OPの首のない馬の群れ、ストーリーには直接関係ないけど、忘れられない一枚絵だったんだよね。
 うわー、アクション綺麗だ―。とか感嘆して。興奮が収まったところでやっと気付きました。この作品、見るべき所はそこじゃない。

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 元々の原作、最初から百鬼丸にはコミュニケーション手段がフルで備わってるんですよね。確かに目が見える人のように見える訳ではないし、耳が聞こえる人のように音そのものを聴いている訳ではないんですけども、それでも超能力的な力で会話し、相手に感情を伝える事ができる。結構よく喋る(笑)
 本当に彼が体の色々な器官を失っていたら、確かに何も聞こえず、何も見えず、声も持たず、熱も冷たさも感じないはず。動く機能だけを持ったアシモみたいになってたはず。
 そっか、全部奪われていると、本来ならこうなるのか。と、アニメを見て目から鱗が落ちました。心の目みたいなもので、害・無害、益・無益を感じる事は出来ても、それ以上を感じるのは無理、伝えるのも無理。
 でも、彼には心があるんです。人の心があるんです。
 付き纏う小さな白い炎(どろろ)が、母に似た化物の見た目に騙されて、百鬼丸を詰った事に意気消沈している事を感じて、手を伸ばして触れて、自分の名前を教える優しさを、彼は持っている。

 この描写、思わず泣いてしまいました。

 またこれが、地面に字を書くことしかできない百鬼丸と、字なんか読めないどろろの間に、指で凹凸を読む盲目の琵琶法師を持ってくることで、上手く成立してる。3人がそれぞれ心を寄せた事で、やっと主人公の名前が分かる。
 名前一つにこの困難。なのになんでだろう、こんなに暖かい気持ちになるのは。百鬼丸とどろろの喜びが伝わってくる。ああ、よかったね、と素直に思える。

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 たかが主人公の名前を知らせるだけでコレですよ。一体、百鬼丸が目を、耳を、声を、匂いを取り戻した時、どーなっちゃうんだ(笑)
 しかも、OPから類推するに、取り戻した後でどろろと一緒に「みお」と出会うっぽい。あれ、少年誌だからボカしてるけど、要するに、でしょ。
 耐えられるのか、この二人。人間の一番汚い部分だぞ。

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 最初は1クールだと思ってたんですが、48→12体の鬼神に減らしたところで、実はそれを倒すのは“奪われた百鬼丸が体を取り戻す”という、マイナスをゼロに戻すだけの行為である事を考えると。
 「15話の〇〇に参加しました」というスタッフさんのツイートだけが根拠なんですが(〇〇が5話とか10話とかに出てきちゃったらただの誤字だもんね)、ただ、「あーあれ(鬼神)オリジナル?」「オリジナルですよ(笑)」という、監督と靖子にゃんの対談に、微かな希望を持ってます。オリジナル敵を出す余裕があるなら、どうしたって2クールになるもん!
 文庫版だとたったの3冊ですが、これ、ちゃんと描こうとすると12話ではとても収まらないスケールを持った作品です。しかも「俺達の戦いはこれからだ!」エンドです。打ち切り2回も喰らった挙句、書き直したのにまだどろろの秘密の片方は投げっぱなし。
 私は見たいよ!ラストシーンが見たいよ!
 地獄堂が焼け落ちる瞬間を、この目で見たいよ!!本来だったら最初から持っていたはずの、失われたものを全て取り戻した、百鬼丸の感情が見たいよ!!

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 全く、平成も終わろうって時に、こんな爆弾投下しやがって。
 踊りますよ、作品が失速しない限りは私は乗せられて踊っちゃいますよ。好きなんだ、ずっと好きだったんだ。思い出せないほど昔、初めて読んだ時からずっと。

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 ちなみに私が13年前に購入したどろろのリトグラフ、調べてみたらやたら価値を上げてます。清水の舞台から飛び降りて当時の家賃1ヶ月分強だったんですけど、今だとその値段では買えないです。
 まさかの資産投資。いや、生きてる間は絶対に売らないけどね。今でも冬にコタツに入ると正面になる位置に鎮座してて、ああ手塚の絵は線が綺麗だ、どうしようもなく綺麗だ、とうっとりしてます。(ロゴにかかる部分だけ違和感があるのがご愛敬。神様、ロゴまで自分で描いてたから、再現した人の技量不足。それもまた楽しい)(完全に病気)
 全く、こんな幸運があるから、どうしても生きて行こうと元気を貰う訳ですよ。フィクションて凄いよね。
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