カールスルーエのバーデン州立劇場の「リング・サイクル」が今日から始まるのでカールスルーエへ向かう。この日は雨こそ降っていないがどんより曇っていた。安く移動するため12:28発のICE596ベルリン中央駅行きに乗った。ICEなのに実にゆっくり走る。平均時速は100�勸未世蹐Α�14:46にシュトゥットガルトに着くころには晴れてきた。乗り継ぎは14:54発のTGV9598（TGVにも乗れて25％割引座席指定で€19.40）。こちらはかなり早く走り時速250�劼�らい出す。それでも15:30の定刻に少し遅れてカールスルーエに到着。トラムで今日から2泊するチェントロホテル・ブランケンブルクへ。ここは大通りを挟んで劇場の目の前でかなり安いのでよく利用する。いつもは1泊5,000円前後（朝食付き）なのに今回はかなり高く2泊で13,180円。10日からの3日間など37,009円とバカ高い。何かこの町で催し物があるのだろうか。良くない点はエアコンがないことだ。今回もちょっと暑い。そこで後半はずっと格の高いカイザーホーフに予約。32,151円でミニ・バーも無料だ。ホテルにチェック・インするとすぐにカールシュタットへ行き食事。ワインも0.2l飲み、戻るとちょっと仮眠。7時ころ劇場へ向かう。ここの「リング」は1作毎演出家が変わるのが珍しい。
この「ラインの黄金」は演出 ダヴィット・ヘルマン、舞台美術 ジョー・シュラム、衣装 ベッティナ・ヴァルター、照明 シュテファン・ヴォインケ／ジョー・シュラム、指揮 ジャスティン・ブラウン。配役 ヴォータン ナサン・ベルク、ドンナー スン=ジ・ジュングSeung-Gi Jung、フロー キャメロン・ベッカー、ローゲ マティアス・ヴォールブレヒト、アルベリッヒ ヤーコ・ヴェンター、ミーメ クラウス・シュナイダー、ファゾルト Yang Xu、ファフナー アヴタンディル・カスペリ、フリッカ カタリーネ・ティーア、フライア アグニスカ・トマスツェウスカAgnieszka Tomaszeska、エルダ アリアーナ・ルーカス、ヴォークリンデ ウリアナ・アレクスユークUliana Alexyuk、ヴェルグンデ アレクサンドラ・カドゥリーナ、フロースヒルデ ディララ・バスタールDilara Baştar。
19:30開演。席はバルコン１列目546番。€37.50。前回2月に観た時のパルケットより少し高い。その時は演出に覆いに失望したプロダクションだ。今回は期待せずに観る。
第1幕第1場。幕が上がると舞台中央、岩の壁を背後に従え10�僂曚鰭饌羮欧茲蟾發�なった岩の上に3人の黄金のタイト・スカートをはいたラインの乙女たちが寝ている。エルダが彼女たちの後ろに立ち、何かを落とすと乙女たちの目が少しづくさめてゆき、やがて「Weia! Waga! Woge, du Welle,」と歌いだす。するとその岩が空中に浮かび上がり、その下全面から水が雨のように降る。やがてアルベリッヒがやってきて、美しい彼女たちをものにしようとするがうまくゆかない。彼があきらめかけているとラインの黄金が花が咲くように岩の上に現れる。ヴォークリンデが「Nur wer der Minne Macht entsagt, nur wer der Liebe Lust verjagt, nur der erzielt sich den Zauber, zum Reif zu zwingen das Gold」などと言うのをアルベリッヒは聞き耳を立てて聞いてしまった。そして「Erzwäng' ich nicht Liebe, doch listig erzwäng' ich mir Lust?」と言って、岩によじ登り黄金を小脇に抱え持ち去る。悲嘆にくれて川底に倒れた乙女たちは舞台が回転し消える。
第2場。ヴォータン達神々の家。平屋建てで3つの部分からなっている。右手には岩のむき出しになった部屋。その部屋前方右側には屋上への階段。背後には仕切りで見えないがやはり屋上への階段。左手にはこぶのような岩。その次の部屋は会議室。中央に6人掛けの会議テーブル。左壁際にはキッチン用シンク。右側には複合機。一番左手の部屋は寝室でベッドが置いてある。背後は書棚で書類が乗っている。会議室との境には50�冂�度の低いしきり。ヴォータンが寝ているところにフリッカがやってきて強い口調で「Wotan, Gemahl, erwache!」と言って彼を起こす。カタリーネ・ティーアがなかなか良い（怖い）。
ここから二つのストーリーが同時進行する（記憶をたどりながらなので齟齬はあると思う）。右手の岩の階段をジークムントが落ちてくる。そこに裏手からジークリンデが現れ、続いてフンディング。フィンディングがいなくなるとジークムントは岩からノートゥングを抜き取る。ジークリンデとジークムントは抱き合い、寝室と会議室の間の仕切りの上で重なり合う。チェックの背広を着たファフナーとファゾルトはヴァルハラの城建築の代償としてフライアを要求する。ファフナーは髭を生やした大男、ファゾルトは小柄でハンサム。フライアはファゾルトと抱き合いキスをする。屋上にはジークムントのところにブリュンヒルデが現れ、彼をヴァルハラに連れて行こうとする。すると彼はジークリンデを殺そうと飛びかかるが、彼女が止める。ノー・ネクタイで同じようなチェックの柄の背広を着たヴォータンは何とかその契約を反故にしようとする。ヴォータン、ドンナー、フロー、ファフナーそしてファゾルトが会議テーブルに着くが、ヴォータンは怒ったファゾルトに酒をかけられてしまう。ドンナーが巨人族につかみかかろうとしてヴォータンに止められる。屋上ではジークムントとフンディングが戦いをはじめ、ブリュンヒルデが後ろに控えているのにジークムントはあえなくフンディングに刺殺されてしまう。
神々たちはその交渉に難渋しローゲの到着を待つ。ストーブが勢い良く燃え上がると、金髪で長髪、長い濃紺（赤ではない）のコートを着たローゲが登場。遂には会議テーブルの上にまで登り、熱弁をふるいフライアの代わりにアルベリッヒの財宝で話をつける。フライアは人質として、巨人族に連れていかれるが、うれしそうである。彼女がいなくなると神々たちはへなへなとへたり込んでしまう。ブリュンヒルデはノートゥングの破片を拾い、ジークリンデを逃がす。ブリュンヒルデは屋上左手で鎧を着たまま寝ている。すでにヴォータンにより岩山に寝かせられたようだ。ローゲがニーベルハイムへと出発するとヴォータンは隠し持っていたリンゴをかじり後に続く。回り舞台が4分の3ほど回ったところにスカートが血まみれのジークリンデが横たわっており、ヴォータンは赤子を抱き上げる。
第3場。さらに舞台が回るとニーベルハイムだ。後方には岩の壁。右手に壁をくりぬく出入り口。岩の壁の前には上部に鉄条網をもった金属製のフェンス。岩の壁の左手前には錠付きのフェンスの出入り口。手前には大きな碍子が3本。その後ろにはコントロール・ボックスのようなもの。ミーメがアルベリッヒに隠れ兜を奪われるとジークフリートが登場。コントロール・ボックスのあたりでノートゥングの破片を見つけるとそれを鍛錬し修復してしまう。ローゲとヴォータンが登場し、アルベリッヒに隠れ兜を使わせる。まず巨大な蛇に変身する。その蛇は岩の出入り口の奥で目を赤いく光らせる。そこにジークフリートが飛び込み、全身血まみれになって大蛇を殺す。彼は白い小鳥を伴って出てくる。ローゲの策略にはまりアルベリッヒは次に小動物に化ける。コントロール・ボックスの後ろに何やら緑色のものが見える。それは緑の手袋をしたアルベリッヒの手だった。二人はその手をつかみ彼を引きずり出すと縛り上げ、ヴォータンの住処に連行する。
第4場。屋上ではジークフリートがブリュンヒルデの鎧を外し、二人は抱き合う。下に降りてきた彼は左手の部屋でグンター、グートルーネとハーゲンに出会い忘れ薬を飲まされる。捕まったアルベリッヒは財宝を差し出すが、それは大きな金の杯（といってもせいぜい高さが20−30�僂�らいのもの）だった。ヴォータンはそれでは飽き足らず、隠れ兜を差し出させ、嫌がるアルベリッヒの指から指輪を引き抜く。屋上でもジークフリートがブリュンヒルデから指輪を引き抜く。アルベリッヒは放免される際に指輪に呪いをかける。入れ替わりにフライアを伴って巨人たちがやってくる。ここでフライアの姿が見えないよう財宝を積み上げるところだが、このプロダクションでは男性たちが一列に並び壁を作り、彼らが退くとフライアの体には金が塗りたくってある。ファフナーに促され隠れ兜も供出し、さらにファゾルトにはまだ目が見えると言われ指輪を要求される。ヴォータンが渋っていると後方からエルダが現れヴォータンを説得する。アリアーナ・ルーカスがこれまた素晴らしい。そしていよいよフライアは解放されたが、彼女はハッピーでない。そしてファフナーは宝をすべてしまい込むので、ファゾルトが自分にも分け前をよこせと「Halt, du Gieriger! Gönne mir auch was! Redliche Teilung taugt uns beiden.」と言うと、ファフナーは「Mehr an der Maid als am Gold」と言い、ついにはファゾルトを殺してしまう。そしてハーゲンがジークフリートを殺害する。
殺害されたジークフリートは会議室の奥に横たえられ、ドンナーが「He da! He da! He do!」と歌いゴルフ・クラブを振り回すと稲光に続き大音響が響くが、その時ジークフリートの遺体の下に置かれた薪が勢いよく燃え出す。これはLCDパネル。ブリュンヒルデは指輪をエルダに託す。そして神々たちは右脇の外階段から屋上に上る。屋上にはドライアイスの霧が薄く床を這い、若い神々から順に倒れていく。下の部屋の炎はさらに部屋全体を覆い、神々の国の崩壊を暗示する。そしてラインの乙女たちが現れ歌い始めると、エルダは彼女たちに指輪を手渡す。（幕）
2つの物語が同時進行し、それが互いにシンクロナイズしているのを記述するのは難しい。おまけに記憶をたどっての記述である。間違っているところも多々あると思う。2月にこのプロダクションを見た時には単に「何だ、これは」と思っただけで、今回幕が進んでいくにしたがって演出家の意図を感じ始めたのだ。このシンクロナーゼーションを事前に知っていれば、もう少し注意深く記録しておいたのにと悔やんでいる。ただしそれもプロローグ付きの1幕という「ラインの黄金」では幕間がないので難しい。
終演後サイン会があり、ナサン・ベルク、マティアス・ヴォールブレヒト、ヤーコ・ヴェンター、アリアーナ・ルーカスのサインがもらえた。また今回はプロダクションの意図が分かったので大変満足してホテルに戻る。なお今回の「サイクル」には日本人は私のみのようだ。
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