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2017年03月04日23:39

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2017年 3月 4日(土) びわ湖 「ラインの黄金」

いよいよ「びわ湖リング」の幕開けである。
この公演はミヒャエル・ハンペの新演出。美術・衣装 へニング・フォン・ギールケ、照明 斎藤茂男、指揮 沼尻竜典。この公演はダブル・キャストで、この日はヴォータン ロッド・ギルフリー、ドンナー ヴィタリ・ユシュマノフ、フロー 村上敏明、ローゲ 西村悟、ファゾルト デニス・ビシュニア、ファフナー 斉木健詞、アルベリッヒ カルステン・メーヴェス、ミーメ 与儀巧、フリッカ 小山由美、フライア 砂川涼子、エルダ 竹本節子、ヴォークリンデ 小川里美、ヴェルグンデ 小野和歌子、フロスヒルデ 梅津貴子、ニーベルング族の小人 滋賀洋舞協会、管弦楽 京都市交響楽団。。
14:00開演。会場が暗くなると幕が開き、星空のような景色。拍手は無しで演奏が始まった。舞台右奥に緑色の炎のようなものがあり、次第に大きくなる。ここがライン川の川底。ラインの乙女達が泳いでいる。これは映像で示される。やがてアルベリッヒが川底から現れ、ラインの乙女たちに愁眉を送り始める。乙女たちは舞台中ほどでアルベリッヒに気があるそぶりを見せては、相手にしないで馬鹿にする。3人のラインの乙女たちは後方の映像と良くシンクロしており、歌唱もなかなか良い。アルベリッヒのカルステン・メーヴェスは最初こそ少し弱いように思えたがどんどん良くなっていった。さすがバイロイトでクリングゾルを歌ったことのある歌手だ。やがて湖底に光が差しこみ、黄金が輝き始めると、彼は愛を放棄してその黄金を持って立ち去る。
第2場に変わると、舞台右手にヴォータンが眠っており、フリッカに眠りを妨げられる。左後方には砦のようなヴァルハラの城。そこにヴァルハラ建設の報酬を受け取りにファゾルトとファフナーの巨人族の兄弟、彼らの上背はおおよそ大人(神々)の2倍ほど、がのっし、のっしと現れる。これほどリアルな巨人たちは初めて観た。ヴォータンは彼らに報酬としてフライアを渡す約束をしていたのだが、何とかその約束を反故にしようとたくらむが、そう簡単にうまくゆくはずはない。火炎(実際の火と思われる)が舞台を一瞬明るくさせてローゲが登場。彼はうまく巨人族の二人にアルベリッヒが持ち去ったラインの黄金の話を聞かせ、フライアではなく、ラインの黄金で報酬を払うことを納得させる。二人の巨人はフライアを人質としていったん引き上げる。
第3場。ヴォータンとローゲはアルベリッヒから黄金を略奪するため二―ベルハイムに降りてゆく。そこではローゲの奸計によりアルベリッヒは隠れ兜を使いまず巨大な蛇に変身させられる。これが本当に大きく、ローゲは蛇のしっぽに体を締め付けられ、必死に逃げ出す。次に小さなカエルに変身させられ、そこを網で生け捕られる。捕虜になったアルベリッヒを伴ってヴォータンとローゲは帰途に就く。
第4場。山上に戻ると、アルベリッヒは自由と引き換えに財宝を要求される。彼はしぶしぶ了承し、部下たちに財宝を運ばせる。財宝を運んできた彼の部下の小人たちは、アルベリッヒに戻れと言われると、蜘蛛の子を散らす様に逃げ出すが、その時の悲鳴が実に素晴らしかった。ヴォータンはアルベリッヒをすぐには解放せず、まず隠れ兜を自分のものにし、さらには強欲にも指輪をも自分のものにしようとする。アルベリッヒが拒否するので、ヴォータンは槍で彼の指を切り落とし指輪を奪う。アルベリッヒの手のひらは血だらけとなり、さらには腕にまで血が滴る。彼は指輪に呪いをかけながら二―ベルハイムへと戻ってゆく。
巨人族の二人がフライアを連れて再び登場。人質と黄金の交換が始まる。積み重ねた黄金では、愛しいフライアの姿が見えてしまい、隠れ兜までヴォータンは差し出すが、それでもフライアの姿が見えてしまう。最後にヴォータンが誇らしくつけている黄金の指輪が要求される。
しかしヴォータンは手放さない。交渉決裂となりそうなところに下方からエルダが現れ、ヴォータンを説得する。エルダの竹本節子が実に良い。しぶしぶヴォータンが指輪をファフナーに手渡すと、ファフナーはせっせと黄金搬出の準備に取り掛かる。ファゾルトが半々に分けようというと、ファフナーは黄金でファゾルトの頭を強打して殺害する。彼がラインの黄金の呪いの犠牲者第一号となってしまったわけだ。
ファフナーが財宝を持って立ち去ると、ドンナーが雷を発生させ、フローにも手伝わせヴァルハラの城まで虹をかける。そしてヴォータン、フリッカ、フライア、ドンナー、フローはローゲを残し、ヴァルハラの城へ入場してゆく。(幕)
この日のキャストはそのほとんどが、私の知らない歌手たちであったが、素晴らしい演奏を聞かせてくれた。特によかったのはローゲの西村悟。このローゲならどこの劇場でも通じるだろう。そしてアルベリッヒのカルステン・メーヴェス、エルダの竹本節子、フリッカの小山由美。期待外れだったのはドンナーのヴィタリ・ユシュマノフとフローの村上敏明。この二人には迫力がなかった。そしてこれらあまり名前の知られていない歌手たちを引っ張り、ここまで素晴らしい歌唱を引き出した沼尻竜典。そしてこの公演をリアルな舞台で成功に導いたミヒャエル・ハンペと美術・衣装のへニング・フォン・ギールケの二人の仕事は大いに賞賛されるべきだ。映像によるラインの乙女たちのライン川での泳ぎと歌手の動きとのシンクロ。アルベリッヒが変身した大蛇の迫力。そして最後の神々のヴァルハラへの入城。1969年の二期会の「ラインの黄金」が世界で初めて虹の橋を渡ってヴァルハラへの入城を実現したと話題になったが、今回の映像を交えた入城はさらに素晴らしかった。神々たちが小高い地形を登り、下っていくところでひょっとして虹の橋を通って神々が入場するのではないかと胸が躍ったが、見事にそれをやってのけた今回のプロダクションは「日本のラインの黄金」の伝統を踏襲したともいえるのではないか。
今年はリューベックの先のキールでジークフリートまでの3作品の上演もあるので、リューベックでも対抗心を燃やして沼尻竜典によるリング上演が実現するとよいなと期待する。しかもこのプロダクションでやれれば最高。最近のドイツではワーグナーの指示に忠実な演出のリングの上演はないと思うので、センセーショナルな上演になるのではないだろうか。
非常に素晴らしい「ラインの黄金」であった。明日の公演がまた楽しみだ。
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