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2015年06月22日23:08
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翻案 堕ちよ生きよ、地に充ちよ 1/
堕ちよ生きよ、地に充ちよ
島村盛助「村の宝」より
時 ばくぜんたる過去
所 ばくぜんたる東北
人 語り手たち
白い神（旅人）
黒い神（お爺さん）
お婆さん
犬ども
こどもたち
村人たち
長者
神主
とっくり
その他
第一場 黒い神と白い神と
大ホールなので緞帳がある。その前、下手端に、ちゃぶ台がある。開演前…。
ちゃぶ台には、炊飯ジャーと、はいちょうをかぶせたおかずと、お椀の類と、ヲコゼの干物が置いてある。もしかすると破れ障子の二三枚くらい、無造作に立てかけられているかも知れない…。【幕前Ｍ】
ええかげんな楽師が登場。幕前劇。【照明＊幕前】
♪貧しさに負けた〜、いいえ世間に負けた〜。
炊飯器のスイッチを押す。
志賀 あ、どうも。開演します。――これは、
関根 今から、
ふたり 何百年も前にあつた話です。
志賀 あるところに、
関根 まはりを、ぐるり青々(あをあを)とした、大きな
志賀 山に取り囲まれた、
関根 立派(りつぱ)な
志賀 村がありました。この村は、この
関根 大きな
志賀 山のお蔭(かげ)で
ふたり まだ一度も、
関根 大(おほ)
志賀 風(かぜ)の害(がい)を被(かうむ)つたことがありませんでした。ですから、
関根 毎年く、稲を植ゑればよく熟(みの)るし、
志賀 果物(くだもの)を作れば
関根 きつと
武井 （乱入）よく出来るので、
志賀 村の者は誰(だれ)も彼(か)も
武井 （ええかげんな謡）皆相応(さうおう)によく暮らしてをりました。（笛。足拍子）
【Ｍ、SWING! SWING! SWING! １曲フルナンバー演奏、約５分】
志賀 そのかはり、
武井 山が
関根 あんまり
三人 高いので、
武井 ちょいと隣の村へ行く（駈け去る）
関根 （追って）うわーん。
志賀 と言つても、それこそ大へんな騒ぎ
関根 ぎゃー。
志賀 でした。従(したが)つて、
関根 隣の村からも、あんまりこつちの村へ遣(や)つて来るものはありませんでした。
志賀 それだものですから、この村の人は、生(うま)れてから死ぬまでに、自分の村以外(いぐわい)の人を見ないことも珍しくありませんでした。それで、
関根 たまに、
志賀 見慣れない旅人が、
関根 この村でも
志賀 通(とほ)りかゝらうものなら、
関根 それこそ、
志賀 みんなは珍(めづ)らしがつて、
関根 ぞろく
志賀 跡(あと)から付(つ)いてゆく始末でした。
関根 そして、少しその旅人が、悪い身なりでもしてゐようものなら、それこそ大勢(おほぜい)で、石を投げたり
関根 ぴしっ、ぴしっ。どどーん、ずどーん。
志賀 犬を嗾(けしか)けたりして、
関根 ゴー、ジョン、ゴー。ターゲットイズ、こぎたないストレンジャー。さんぐ、へへへへへへへ、ひどい目に逢(あは)せるの
ふたり でした。
関根 旅人は驚(おどろ)いて逃げて行(ゆ)きます。
志賀 すると、大勢(おほぜい)は面白がつて、
関根 わいく
志賀 うしろから鬨(とき)の声をあげながら、
関根 追つかけて行くのおおおおお（ええかげんなチムチムチェリー）
志賀 でした。ところが、
関根 或日(あるひ)、
志賀 それはく
関根 穢(きたな)い
志賀 なりをした、
関根 よぼくの、
志賀 一人の
関根 乞食の
志賀 やうな
関根 旅人が、どこから
志賀 ともなく
ふたり フラリ（ボインをゆする）
志賀 とこの村へやつて来ました。
関根 よほど、
志賀 お中(なか)が透(す)いてゐると見えて、
関根 まるで
志賀 虫が這ふやうに、
関根 トボリぃぃぃぃぃ（ト謡曲のようになり）
志賀 くと
関根 村の
志賀 真ン中の方(はう)へ
関根 歩いて
志賀 行(ゆ)くの
関根 でした。
突然、演奏しながら退場。緞帳あがる。あがると舞台はスモークにつつまれている。即興の音響演奏（以下、全篇通して演奏は続く）【照明＊始め舞台は暗め。しかし全体としては喜劇です】
客席の真ん中に、語り手登場。同じく客席からは不穏な影法師の一団、楽器を手に手にゆらゆらと現れて、舞台背後に並んだ。
りこ ところが、或日(あるひ)、それはく穢(きたな)いなりをした、よぼくの、一人の乞食のやうな旅人が、どこからともなくフラリとこの村へやつて来ました。よほど、お中(なか)が透(す)いてゐると見えて、まるで虫が這ふやうに、トボリくと村の真ン中の方(はう)へ歩いて行(ゆ)くのでした。
影法師のうちのひとりが「旅人」だ。和装に狐の神楽面。能のハコビにて。語り手、噛みつき魔ブラッシーに交代（以下どんどん交代）。
あかね へっへっへ。（棒タワシで歯を磨きながら）かーっ、ぺっ。やがてその乞食のやうな旅人は、とある一軒の軒先に立ってェ、
たかちゃん （謡曲調に）「どうか一晩泊めて下さい」
影法師たち どーうーかー一ー晩ー泊ーめーてー下ーさーいー
あかね と言って頼みましたァ。しかし、邪慳(じやけん)なこの村の人が、どうしてこんな乞食坊主(こじきばうず)を泊めるものですかァ。剣(けん)もホロヽにことわられましたァ。
たかちゃん 「デハ、何か食べるものを少し恵んで下さいまし。」
影法師たち デーハー、何ーかー食ーべーるーもーのーをー少ーしー恵ーんーでー下ーさーいーまーしーぎょーっぎょっぎょっぎょっぎょっぎょっ
あかね 乞食坊主はァ、為方(しかた)なしに、また、かう言つて頼みました。すると、その家の人は、
れき他 「えゝ、うるさい奴だ。こゝらあたりにウロくしてゐて、犬を嗾(けしか)けられて泣(なき)ツ面(つら)かくな。」（の、ような適当なセリフ）
たかちゃん （泣く）
あかね （新派の口説き調で）と目を剥(む)きだして叱(しか)りつけました。乞食坊主は驚いて、すごくその家(いへ)の前(まへ)を離れましたが、どの家(いへ)の前(まへ)に立って頼んで見ても、同じやうに呶鳴(どな)り返(かへ)されるばかりで、
れき 「えゝ、うるさい奴だ。こゝらあたりにウロくしてゐて、犬を嗾(けしか)けられて泣(なき)ツ面(つら)かくな。」（同じく）
犬たち ウー、バウバウバウ！
たかちゃん （泣く）
あかね 一軒として優しい言葉をかけてくれる家(いへ)などはありませんでしたァ。
れき 「えゝ、うるさい奴だ。こゝらあたりにウロくしてゐて、犬を嗾(けしか)けられて泣(なき)ツ面(つら)かくな。」（同じく）
犬と村人 ウー、うるさい奴だバウバウ犬を嗾(けしか)けられてバウバウバウ！
あかね そのうちに、どこから集(あつま)つたか、
犬と村人 （くるっと回って子どもたちに変身）
あかね 大(おほ)ぜいの子供が手にく棒(ばう)を持つたり
子どもたち （旅人をやらしくなでまわす）
あかね 石を握つたりして、ぞろく旅人のまはりに集(あつま)つて来ました。
子どもたち （さまざまな石を運んでくる）
あかね そして、その中(うち)の誰かゞ、
れきりこ 「やれく。」
あかね といふ言葉につれて、一斉(せい)に、
子どもたち （口々に）「ぶてくなぐれ。村から外へ放(はふ)りだせ。」（石、ぶつけまくる）
あかね さん、はい。
子どもたち （おだやかな斉唱。「たこたこあがれ」の節で）
♪ぶてくなぐれ
村から外へ放(はふ)りだせ
ぶてくなぐれ
村から外へ放(はふ)りだせ
るーるるるーるるるーるるー
あかね と口々に囃(はや)しながら、バラくと石を投げつけましたァ。（子どもら、ハミングしながらリズミカルに殴ってる）そして、棒(ばう)でもつて地面(ぢめん)を叩きながら、何匹もく大(おほ)きな犬を嗾(けしか)けました。驚いたのは旅人です。大(おほ)きな石がボカく頭に落ちて来るので、両手(りやうて)で頭を抑へながら、一生(しやう)けんめいに逃げだしました。すると、うしろから、熊のような大(おほ)きな犬が、（犬、凶暴になる。でも顔はにこやか）ワンくワンく恐ろしい牙を鳴らしながら、追(お)ツ掛(か)けて来るのでした。旅人は、
たかちゃん 「助けてくれえく。」（セクシーなポーズとか投げキスとか）
あかね と叫びながら、夢中(むちゆう)になつて村境(むらざかひ)の方(はう)へ逃げて行(ゆ)きました。
語り手、観光バスのガイドさんに交代。【イージーなＭ。ＭＤかける。以下同じ】
�錨� はぁい皆さん、こんにちはぁ。
乗客たち （ヒヨコのようにピヨピヨと一列で）こんにちはぁ！
�錨� あれぇ元気がないなぁもう一度。こんにちはぁ。
乗客たち こんにちはぁ！！
�錨� ありがとうございます。本日、みなさまの旅のおともをさせていただきます、ワタクシ、安西・カトリーヌ・麗子でございます。本日はよろしくお願いいたしますー。
乗客たち カトリーヌー！ カトリーヌー！ かわいい！ かわいい！ わーわー。
�錨� そこへ、丁度(ちやうど)通(とほ)りかゝつたのが、村で評判(ひやうばん)のごく正直(しやうぢき)な、それはくいゝ百姓(しやう)のお爺(ぢい)さんでした。みなさん、拍手ー。
陽ちゃん （タルチュムの黒仮面。ポーズ）
乗客たち （きゃぴきゃぴウケる。真似する）
�錨� その様子(やうす)を見ると、いきなり、天秤棒(てんびんばう)を取り直(なほ)して、吠えつく犬を叩きなぐつて、一疋(ぴき)残さず追ひ散(ちら)してしまひました。それから、ワイく騒ぐ子供を叱りつけて、みんな追ツ払つてしまひました。
陽ちゃん （やる。ポーズとか）
乗客たち （真似する）
�錨� さうして置いて、お爺さんは、
陽ちゃん 「モシく、旅のお方、どこもお怪我はなさいませんでしたかぶぶぶぶぶ（脱力）
乗客たち ぶぶぶぶぶ（脱力）
�錨� と親切に聞いてやりました。すると旅人は大さう喜んで、
たかちゃん （なんかとっても異常な感じで）「オカゲ、デ、イノチ、ヒロイマシタ」（訳・お蔭で命拾ひをいたしました。）
�錨� と何べんもくお爺さんにお礼を言ひました。
�錨� お爺さんは、
陽ちゃん 「どういたしまして、そんなにお礼を言はれると却(かへつ)て困ります。兎(と)に角(かく)、まあ、今夜は私のところへ一晩泊つて行つて下さいぶぶぶぶぶ（脱力）
乗客たち ぶぶぶぶぶ（脱力）
�錨� と言つて、その乞食(こぢき)のやうな旅人を、厭さうな顔(かほ)もしないで、丘(をか)の上(うへ)の自分の家(いへ)へ連れて行(ゆ)きました。ハイみなさん到着です。集合時間に遅れないよう各自戻ってきてくださいね。それでは自由行動です。
乗客たち わーわー（去る）
白い神と黒い神の闘い。【和調のダンスＭ】【照明＊この間、はっきり変わる】土着の黒面神と、外来の白面神が村の道で出会う。戦う。初めは視殺戦ののちの取っ組み合い、のちには神通力（いかづちとか）の応酬。黒い神の勢いはすごいが、さいごには新来のテクノロジーに敗れる。勝利した白い神、やがて倒れた土着神の肩をポンポンと叩き、仲直りして、ふたり一緒にスキップで去る。これは植民地ニッポン２０００年の、二重支配構造のアレゴリーである。【照明＊戻る】
�錨� このお爺さんは、もとはやはり、下の村に住んでゐたのですが、（急に因襲ムラ社会の女のように暗くなり）【照明＊真上から�錨弔縫汽后曚△鵑泙蠖佑�よすぎたものですから近所(きんじよ)の人にすつかり騙されて、先祖から代々持つていた田畑をすつかり取られてしまつたのでした。…うちの土地を…。そして今では、村境(むらざかひ)のこんな寂しい丘(をか)の上(うへ)に、お婆さんとたつた二人で暮してゐるのでした。（ひどく長い間）――失礼しました！【照明＊戻る】お爺さんは、旅人を内(うち)へつれて来て、
陽ちゃん 「こんな時には、お酒でもあるといゝのですが、生憎(あひにく)、貧乏(びんばふ)で何(なん)にも買つて上げることが出来ませんぶぶぶぶぶ（脱力）
�錨� と詫びるやうに言ひました。（お婆さんになる）すると、旅人は、
たかちゃん （とってもあやしく）「お酒／なら、／丁度(ちやうど)／私が／持ち／合(あは)せがございます。／これを三／人で飲みま／せう。」
�錨� と言いひながら、腰から小(ちひ)さな一合(がふ)徳利(どくり)を出して見せました（旅人、本当に出す）。お酒の好きなお爺さんは、（といいつつ自分が婆さんになって爺さんを押しのけ、酒盛りを始める）大喜(おほよろこ)びで、早速(さつそく)、三人でお酒盛を始めました。
旅人とお婆さん、仲むつまじく差しつ差されつの長い酒盛り。たおやかなる篠笛の音色が延々と続く。まるで冬の日本の長い夜…。なぜかお爺さんは蚊帳の外。袖から覗いたりする。
りこ ところが、不思議なことに、こんな小(ちひ)さな徳利(とくり)のくせに、幾(いく)らついでもく、跡(あと)からく、なみくとお酒が出て来ました。しかも、そのお酒の旨いことゝいつたら、お爺さんもお婆さんも、この歳になるまで、まだ、こんな旨い酒を飲んだことがありませんでした。それで二人とも
�錨弔燭� 「あゝ旨いく」
りこ と言ひながら、さも嬉しさうに、何杯もくお代(かは)りをして飲みました。そのうちに、二人ともすつかり酔(ゑ)つてしまつて、その儘(まま)そこへ寝倒(ねたふ)れてしまひました。
寝倒れる。お爺さん、やっと戻ってきて懐から大椀を出して注がんとするが、もう酒は残ってない。ようやく滴った数滴を自前の椀に垂らしてなめると、酒に弱いお爺さんはあっという間にぶっ倒れた。ここで、爺さん婆さんはもう仮面を取っている。そして夜は更け――
たかちゃん ところが、明(あ)くる朝、目がさめて見ると、ゆんべ泊つた筈の旅人の姿が見えませんでした。
とっくり、ヘッドスライディングで登場。
たかちゃん しかし、例の小(ちひ)さな古びた徳利だけは、チヤントお膳の上(うへ)に載つてゐました。お爺さんは、一目その徳利を見ると、また、ゆうべのやうなお美(い)しいお酒が飲みたくなりました。それで、徳利を手に取つて、
陽ちゃん 「ゆうべのやうなお酒が出ろーーー」（ゆさぶる）
たかちゃん と思ひながら二三べん振つて見ました。すると、中から山吹色をしたお酒がこんくと湧き出て来ました。それを見たお婆さんは、
�錨� （超ガバッと跳ね起き！）「どれ、私(あたし)にも貸してごらんなさい。」
たかちゃん と言ひながらお爺さんの手から徳利を取って、
�錨� 「朝の御馳走が出ろーーーーーーーーーー。」
たかちゃん と言ひながら、同じやうに二三べん振つてみました。【スーダラな感じのＭ】
ごちそう （自分の名前をいいながら、どんどん出てくる）
たかちゃん すると不思議なことに、お婆さんとお爺さんとの大好きな、いろんな御馳走が山のやうにどつさり出て来ました。二人は大喜(おほよろこ)びで好きな御馳走で御飯を食べました。あーっはっはっはっは。それからといふもの、二人は、何か欲しいものがある度に、この小(ちひ)さな徳利から降り出して、用を足してをりました。お爺さんとお婆さんとの内(うち)は、俄(にはか)に、いろんな道具(だうぐ)がふえて、見ちがへるくらゐ立派(りつぱ)になりました。あーっはっはっはっは。
ごちそう あーっはっはっはっは。（全員でバカ笑い。ストップモーション）
ここで演出家登場。うまいものが大好きであることが大事だと力説。作ってきた「酢コケ」を、役者や観客とともに食ったりする。ちゃぶ台では、ちょうどご飯も炊けているころ。ひとしきり呑み食いしてから、合唱タイムへ。
挿入歌１．『酢コケ』（合唱とマラカス）
全員 ♪オハヨ！ ケッコーな早起きですね
野良には朝もや出てるカモカモ
コロコロ転げてカエル寝とぼけ
ケッコーな昔むかしの
おはなし聞かせておくれ カラカラ
コガラがついてくチドリに
おいで コッケーのむすむす岩の
ベンチに腰かけてみよう
ホラホラ
ほら吹きじまんの鼻たかガエル
コッケーな昔ばなしさ
お題はあとだよ ごらんソラソラ
ある日の夜明けに空から
（舌はやわらか出まかせ
芋づる引こうつなひき
そらヒーローお出まし 仮面を取れば）
コケッコ ケコッコ スコッケ
チキータ！ 君をさらう怪盗
カリブのアジトに逃げた
ユラユラ ボートは真珠の小島をたどる
ケッコーなお宝つんだボートは
沈んで海は ひねもす
のたりのたりかな めでたし小だし
コッケーなおはなしすんで
お腹もすいたね
みんなジャラジャラ
おひねりはここの帽子に チキータ！
酢っぱい芸でござります
お粗末しごくでござい
それでは小銭をさらってドロンと
スイー スラッラー
スラッラー スケッコ！
挿入歌２．『ケ酢コ』（ソロとギター）
あかね ♪（雲の眼をおもうこと
知っていたの 地上絵
野を駈ける雲の影
絵筆のように鳥えがく）
大佐の庭では痩せた軍鶏(シャモ)一羽が
煮えくる不満を吐きだそうと土掻く
軒端も木蔭も灼けて爛れるよう
寝椅子を出すなど土地を知ればできぬわ
つがいのコブラあおぐ澱む空
蝉さえ落ちる陽など望まぬわ
有り金のニッケル貨棚に積み数えた
珈琲をこそげては妻に運ぶが俺の老い
母からのこのナイフ芋の芽を削れば
酢の甕は土間にあり
言葉もなしにひとり醗(わ)く
軍鶏蹴る切り株斧は大佐の痕
三十五年の内乱を切り抜けた
待てども政府は年金を下さぬ
革命闘士の腕の張りは衰え
闘鶏だけが望みなる暮らし
孤独の果ての旅が南米だ
在りし日の面影にすがる身の惨めさ
口の端に泡溜まる耐えたばかりの半世紀
妻の咳籠もる家うら饐えた香りよ
あの軍鶏(シャモ)を酢と煮れば
今夜ばかりは笑えるか
挿入歌３．『コケ酢』（ア・カペラ合唱）
全員 ♪雲南四川と貴酬にまたがる
杏の里こそ我らが国
でも誰もその国見た者はおらず
踊りと歌とで思うばかり
我らビルマの山巓ぐらしよ
ジープゆく尾根みち暗い谷間
凍る朝露ケシにかかり
アブの子目覚めて身震いした
コケ酢は そま路をたどる担ぎ屋に
粗塩盛らせよ 芭蕉の葉に
若鶏は絞めたら 手早く捌いて
塩樽につけて ひと月待て
おかぼ炊けたと 叫ぶ子ども
しゃもじでまま切る 酒と塩と
肉と米とを 練りあわせて
竹筒に詰めて 土に埋けよ
我らの里には軍隊はいるけど
酔いと踊りとに明け暮れてる
中央の部隊が我らを攻めたら
コケ酢を背中に森に逃れ
宵は焚き火で「すし」噛みしめ
口伝や民話を学ぶ木蔭
アヘンひとつで我らは悪
この生き様こそ知られるべし ヘイ！
2/→ http://
島村盛助「村の宝」より
時 ばくぜんたる過去
所 ばくぜんたる東北
人 語り手たち
白い神（旅人）
黒い神（お爺さん）
お婆さん
犬ども
こどもたち
村人たち
長者
神主
とっくり
その他
第一場 黒い神と白い神と
大ホールなので緞帳がある。その前、下手端に、ちゃぶ台がある。開演前…。
ちゃぶ台には、炊飯ジャーと、はいちょうをかぶせたおかずと、お椀の類と、ヲコゼの干物が置いてある。もしかすると破れ障子の二三枚くらい、無造作に立てかけられているかも知れない…。【幕前Ｍ】
ええかげんな楽師が登場。幕前劇。【照明＊幕前】
♪貧しさに負けた〜、いいえ世間に負けた〜。
炊飯器のスイッチを押す。
志賀 あ、どうも。開演します。――これは、
関根 今から、
ふたり 何百年も前にあつた話です。
志賀 あるところに、
関根 まはりを、ぐるり青々(あをあを)とした、大きな
志賀 山に取り囲まれた、
関根 立派(りつぱ)な
志賀 村がありました。この村は、この
関根 大きな
志賀 山のお蔭(かげ)で
ふたり まだ一度も、
関根 大(おほ)
志賀 風(かぜ)の害(がい)を被(かうむ)つたことがありませんでした。ですから、
関根 毎年く、稲を植ゑればよく熟(みの)るし、
志賀 果物(くだもの)を作れば
関根 きつと
武井 （乱入）よく出来るので、
志賀 村の者は誰(だれ)も彼(か)も
武井 （ええかげんな謡）皆相応(さうおう)によく暮らしてをりました。（笛。足拍子）
【Ｍ、SWING! SWING! SWING! １曲フルナンバー演奏、約５分】
志賀 そのかはり、
武井 山が
関根 あんまり
三人 高いので、
武井 ちょいと隣の村へ行く（駈け去る）
関根 （追って）うわーん。
志賀 と言つても、それこそ大へんな騒ぎ
関根 ぎゃー。
志賀 でした。従(したが)つて、
関根 隣の村からも、あんまりこつちの村へ遣(や)つて来るものはありませんでした。
志賀 それだものですから、この村の人は、生(うま)れてから死ぬまでに、自分の村以外(いぐわい)の人を見ないことも珍しくありませんでした。それで、
関根 たまに、
志賀 見慣れない旅人が、
関根 この村でも
志賀 通(とほ)りかゝらうものなら、
関根 それこそ、
志賀 みんなは珍(めづ)らしがつて、
関根 ぞろく
志賀 跡(あと)から付(つ)いてゆく始末でした。
関根 そして、少しその旅人が、悪い身なりでもしてゐようものなら、それこそ大勢(おほぜい)で、石を投げたり
関根 ぴしっ、ぴしっ。どどーん、ずどーん。
志賀 犬を嗾(けしか)けたりして、
関根 ゴー、ジョン、ゴー。ターゲットイズ、こぎたないストレンジャー。さんぐ、へへへへへへへ、ひどい目に逢(あは)せるの
ふたり でした。
関根 旅人は驚(おどろ)いて逃げて行(ゆ)きます。
志賀 すると、大勢(おほぜい)は面白がつて、
関根 わいく
志賀 うしろから鬨(とき)の声をあげながら、
関根 追つかけて行くのおおおおお（ええかげんなチムチムチェリー）
志賀 でした。ところが、
関根 或日(あるひ)、
志賀 それはく
関根 穢(きたな)い
志賀 なりをした、
関根 よぼくの、
志賀 一人の
関根 乞食の
志賀 やうな
関根 旅人が、どこから
志賀 ともなく
ふたり フラリ（ボインをゆする）
志賀 とこの村へやつて来ました。
関根 よほど、
志賀 お中(なか)が透(す)いてゐると見えて、
関根 まるで
志賀 虫が這ふやうに、
関根 トボリぃぃぃぃぃ（ト謡曲のようになり）
志賀 くと
関根 村の
志賀 真ン中の方(はう)へ
関根 歩いて
志賀 行(ゆ)くの
関根 でした。
突然、演奏しながら退場。緞帳あがる。あがると舞台はスモークにつつまれている。即興の音響演奏（以下、全篇通して演奏は続く）【照明＊始め舞台は暗め。しかし全体としては喜劇です】
客席の真ん中に、語り手登場。同じく客席からは不穏な影法師の一団、楽器を手に手にゆらゆらと現れて、舞台背後に並んだ。
りこ ところが、或日(あるひ)、それはく穢(きたな)いなりをした、よぼくの、一人の乞食のやうな旅人が、どこからともなくフラリとこの村へやつて来ました。よほど、お中(なか)が透(す)いてゐると見えて、まるで虫が這ふやうに、トボリくと村の真ン中の方(はう)へ歩いて行(ゆ)くのでした。
影法師のうちのひとりが「旅人」だ。和装に狐の神楽面。能のハコビにて。語り手、噛みつき魔ブラッシーに交代（以下どんどん交代）。
あかね へっへっへ。（棒タワシで歯を磨きながら）かーっ、ぺっ。やがてその乞食のやうな旅人は、とある一軒の軒先に立ってェ、
たかちゃん （謡曲調に）「どうか一晩泊めて下さい」
影法師たち どーうーかー一ー晩ー泊ーめーてー下ーさーいー
あかね と言って頼みましたァ。しかし、邪慳(じやけん)なこの村の人が、どうしてこんな乞食坊主(こじきばうず)を泊めるものですかァ。剣(けん)もホロヽにことわられましたァ。
たかちゃん 「デハ、何か食べるものを少し恵んで下さいまし。」
影法師たち デーハー、何ーかー食ーべーるーもーのーをー少ーしー恵ーんーでー下ーさーいーまーしーぎょーっぎょっぎょっぎょっぎょっぎょっ
あかね 乞食坊主はァ、為方(しかた)なしに、また、かう言つて頼みました。すると、その家の人は、
れき他 「えゝ、うるさい奴だ。こゝらあたりにウロくしてゐて、犬を嗾(けしか)けられて泣(なき)ツ面(つら)かくな。」（の、ような適当なセリフ）
たかちゃん （泣く）
あかね （新派の口説き調で）と目を剥(む)きだして叱(しか)りつけました。乞食坊主は驚いて、すごくその家(いへ)の前(まへ)を離れましたが、どの家(いへ)の前(まへ)に立って頼んで見ても、同じやうに呶鳴(どな)り返(かへ)されるばかりで、
れき 「えゝ、うるさい奴だ。こゝらあたりにウロくしてゐて、犬を嗾(けしか)けられて泣(なき)ツ面(つら)かくな。」（同じく）
犬たち ウー、バウバウバウ！
たかちゃん （泣く）
あかね 一軒として優しい言葉をかけてくれる家(いへ)などはありませんでしたァ。
れき 「えゝ、うるさい奴だ。こゝらあたりにウロくしてゐて、犬を嗾(けしか)けられて泣(なき)ツ面(つら)かくな。」（同じく）
犬と村人 ウー、うるさい奴だバウバウ犬を嗾(けしか)けられてバウバウバウ！
あかね そのうちに、どこから集(あつま)つたか、
犬と村人 （くるっと回って子どもたちに変身）
あかね 大(おほ)ぜいの子供が手にく棒(ばう)を持つたり
子どもたち （旅人をやらしくなでまわす）
あかね 石を握つたりして、ぞろく旅人のまはりに集(あつま)つて来ました。
子どもたち （さまざまな石を運んでくる）
あかね そして、その中(うち)の誰かゞ、
れきりこ 「やれく。」
あかね といふ言葉につれて、一斉(せい)に、
子どもたち （口々に）「ぶてくなぐれ。村から外へ放(はふ)りだせ。」（石、ぶつけまくる）
あかね さん、はい。
子どもたち （おだやかな斉唱。「たこたこあがれ」の節で）
♪ぶてくなぐれ
村から外へ放(はふ)りだせ
ぶてくなぐれ
村から外へ放(はふ)りだせ
るーるるるーるるるーるるー
あかね と口々に囃(はや)しながら、バラくと石を投げつけましたァ。（子どもら、ハミングしながらリズミカルに殴ってる）そして、棒(ばう)でもつて地面(ぢめん)を叩きながら、何匹もく大(おほ)きな犬を嗾(けしか)けました。驚いたのは旅人です。大(おほ)きな石がボカく頭に落ちて来るので、両手(りやうて)で頭を抑へながら、一生(しやう)けんめいに逃げだしました。すると、うしろから、熊のような大(おほ)きな犬が、（犬、凶暴になる。でも顔はにこやか）ワンくワンく恐ろしい牙を鳴らしながら、追(お)ツ掛(か)けて来るのでした。旅人は、
たかちゃん 「助けてくれえく。」（セクシーなポーズとか投げキスとか）
あかね と叫びながら、夢中(むちゆう)になつて村境(むらざかひ)の方(はう)へ逃げて行(ゆ)きました。
語り手、観光バスのガイドさんに交代。【イージーなＭ。ＭＤかける。以下同じ】
�錨� はぁい皆さん、こんにちはぁ。
乗客たち （ヒヨコのようにピヨピヨと一列で）こんにちはぁ！
�錨� あれぇ元気がないなぁもう一度。こんにちはぁ。
乗客たち こんにちはぁ！！
�錨� ありがとうございます。本日、みなさまの旅のおともをさせていただきます、ワタクシ、安西・カトリーヌ・麗子でございます。本日はよろしくお願いいたしますー。
乗客たち カトリーヌー！ カトリーヌー！ かわいい！ かわいい！ わーわー。
�錨� そこへ、丁度(ちやうど)通(とほ)りかゝつたのが、村で評判(ひやうばん)のごく正直(しやうぢき)な、それはくいゝ百姓(しやう)のお爺(ぢい)さんでした。みなさん、拍手ー。
陽ちゃん （タルチュムの黒仮面。ポーズ）
乗客たち （きゃぴきゃぴウケる。真似する）
�錨� その様子(やうす)を見ると、いきなり、天秤棒(てんびんばう)を取り直(なほ)して、吠えつく犬を叩きなぐつて、一疋(ぴき)残さず追ひ散(ちら)してしまひました。それから、ワイく騒ぐ子供を叱りつけて、みんな追ツ払つてしまひました。
陽ちゃん （やる。ポーズとか）
乗客たち （真似する）
�錨� さうして置いて、お爺さんは、
陽ちゃん 「モシく、旅のお方、どこもお怪我はなさいませんでしたかぶぶぶぶぶ（脱力）
乗客たち ぶぶぶぶぶ（脱力）
�錨� と親切に聞いてやりました。すると旅人は大さう喜んで、
たかちゃん （なんかとっても異常な感じで）「オカゲ、デ、イノチ、ヒロイマシタ」（訳・お蔭で命拾ひをいたしました。）
�錨� と何べんもくお爺さんにお礼を言ひました。
�錨� お爺さんは、
陽ちゃん 「どういたしまして、そんなにお礼を言はれると却(かへつ)て困ります。兎(と)に角(かく)、まあ、今夜は私のところへ一晩泊つて行つて下さいぶぶぶぶぶ（脱力）
乗客たち ぶぶぶぶぶ（脱力）
�錨� と言つて、その乞食(こぢき)のやうな旅人を、厭さうな顔(かほ)もしないで、丘(をか)の上(うへ)の自分の家(いへ)へ連れて行(ゆ)きました。ハイみなさん到着です。集合時間に遅れないよう各自戻ってきてくださいね。それでは自由行動です。
乗客たち わーわー（去る）
白い神と黒い神の闘い。【和調のダンスＭ】【照明＊この間、はっきり変わる】土着の黒面神と、外来の白面神が村の道で出会う。戦う。初めは視殺戦ののちの取っ組み合い、のちには神通力（いかづちとか）の応酬。黒い神の勢いはすごいが、さいごには新来のテクノロジーに敗れる。勝利した白い神、やがて倒れた土着神の肩をポンポンと叩き、仲直りして、ふたり一緒にスキップで去る。これは植民地ニッポン２０００年の、二重支配構造のアレゴリーである。【照明＊戻る】
�錨� このお爺さんは、もとはやはり、下の村に住んでゐたのですが、（急に因襲ムラ社会の女のように暗くなり）【照明＊真上から�錨弔縫汽后曚△鵑泙蠖佑�よすぎたものですから近所(きんじよ)の人にすつかり騙されて、先祖から代々持つていた田畑をすつかり取られてしまつたのでした。…うちの土地を…。そして今では、村境(むらざかひ)のこんな寂しい丘(をか)の上(うへ)に、お婆さんとたつた二人で暮してゐるのでした。（ひどく長い間）――失礼しました！【照明＊戻る】お爺さんは、旅人を内(うち)へつれて来て、
陽ちゃん 「こんな時には、お酒でもあるといゝのですが、生憎(あひにく)、貧乏(びんばふ)で何(なん)にも買つて上げることが出来ませんぶぶぶぶぶ（脱力）
�錨� と詫びるやうに言ひました。（お婆さんになる）すると、旅人は、
たかちゃん （とってもあやしく）「お酒／なら、／丁度(ちやうど)／私が／持ち／合(あは)せがございます。／これを三／人で飲みま／せう。」
�錨� と言いひながら、腰から小(ちひ)さな一合(がふ)徳利(どくり)を出して見せました（旅人、本当に出す）。お酒の好きなお爺さんは、（といいつつ自分が婆さんになって爺さんを押しのけ、酒盛りを始める）大喜(おほよろこ)びで、早速(さつそく)、三人でお酒盛を始めました。
旅人とお婆さん、仲むつまじく差しつ差されつの長い酒盛り。たおやかなる篠笛の音色が延々と続く。まるで冬の日本の長い夜…。なぜかお爺さんは蚊帳の外。袖から覗いたりする。
りこ ところが、不思議なことに、こんな小(ちひ)さな徳利(とくり)のくせに、幾(いく)らついでもく、跡(あと)からく、なみくとお酒が出て来ました。しかも、そのお酒の旨いことゝいつたら、お爺さんもお婆さんも、この歳になるまで、まだ、こんな旨い酒を飲んだことがありませんでした。それで二人とも
�錨弔燭� 「あゝ旨いく」
りこ と言ひながら、さも嬉しさうに、何杯もくお代(かは)りをして飲みました。そのうちに、二人ともすつかり酔(ゑ)つてしまつて、その儘(まま)そこへ寝倒(ねたふ)れてしまひました。
寝倒れる。お爺さん、やっと戻ってきて懐から大椀を出して注がんとするが、もう酒は残ってない。ようやく滴った数滴を自前の椀に垂らしてなめると、酒に弱いお爺さんはあっという間にぶっ倒れた。ここで、爺さん婆さんはもう仮面を取っている。そして夜は更け――
たかちゃん ところが、明(あ)くる朝、目がさめて見ると、ゆんべ泊つた筈の旅人の姿が見えませんでした。
とっくり、ヘッドスライディングで登場。
たかちゃん しかし、例の小(ちひ)さな古びた徳利だけは、チヤントお膳の上(うへ)に載つてゐました。お爺さんは、一目その徳利を見ると、また、ゆうべのやうなお美(い)しいお酒が飲みたくなりました。それで、徳利を手に取つて、
陽ちゃん 「ゆうべのやうなお酒が出ろーーー」（ゆさぶる）
たかちゃん と思ひながら二三べん振つて見ました。すると、中から山吹色をしたお酒がこんくと湧き出て来ました。それを見たお婆さんは、
�錨� （超ガバッと跳ね起き！）「どれ、私(あたし)にも貸してごらんなさい。」
たかちゃん と言ひながらお爺さんの手から徳利を取って、
�錨� 「朝の御馳走が出ろーーーーーーーーーー。」
たかちゃん と言ひながら、同じやうに二三べん振つてみました。【スーダラな感じのＭ】
ごちそう （自分の名前をいいながら、どんどん出てくる）
たかちゃん すると不思議なことに、お婆さんとお爺さんとの大好きな、いろんな御馳走が山のやうにどつさり出て来ました。二人は大喜(おほよろこ)びで好きな御馳走で御飯を食べました。あーっはっはっはっは。それからといふもの、二人は、何か欲しいものがある度に、この小(ちひ)さな徳利から降り出して、用を足してをりました。お爺さんとお婆さんとの内(うち)は、俄(にはか)に、いろんな道具(だうぐ)がふえて、見ちがへるくらゐ立派(りつぱ)になりました。あーっはっはっはっは。
ごちそう あーっはっはっはっは。（全員でバカ笑い。ストップモーション）
ここで演出家登場。うまいものが大好きであることが大事だと力説。作ってきた「酢コケ」を、役者や観客とともに食ったりする。ちゃぶ台では、ちょうどご飯も炊けているころ。ひとしきり呑み食いしてから、合唱タイムへ。
挿入歌１．『酢コケ』（合唱とマラカス）
全員 ♪オハヨ！ ケッコーな早起きですね
野良には朝もや出てるカモカモ
コロコロ転げてカエル寝とぼけ
ケッコーな昔むかしの
おはなし聞かせておくれ カラカラ
コガラがついてくチドリに
おいで コッケーのむすむす岩の
ベンチに腰かけてみよう
ホラホラ
ほら吹きじまんの鼻たかガエル
コッケーな昔ばなしさ
お題はあとだよ ごらんソラソラ
ある日の夜明けに空から
（舌はやわらか出まかせ
芋づる引こうつなひき
そらヒーローお出まし 仮面を取れば）
コケッコ ケコッコ スコッケ
チキータ！ 君をさらう怪盗
カリブのアジトに逃げた
ユラユラ ボートは真珠の小島をたどる
ケッコーなお宝つんだボートは
沈んで海は ひねもす
のたりのたりかな めでたし小だし
コッケーなおはなしすんで
お腹もすいたね
みんなジャラジャラ
おひねりはここの帽子に チキータ！
酢っぱい芸でござります
お粗末しごくでござい
それでは小銭をさらってドロンと
スイー スラッラー
スラッラー スケッコ！
挿入歌２．『ケ酢コ』（ソロとギター）
あかね ♪（雲の眼をおもうこと
知っていたの 地上絵
野を駈ける雲の影
絵筆のように鳥えがく）
大佐の庭では痩せた軍鶏(シャモ)一羽が
煮えくる不満を吐きだそうと土掻く
軒端も木蔭も灼けて爛れるよう
寝椅子を出すなど土地を知ればできぬわ
つがいのコブラあおぐ澱む空
蝉さえ落ちる陽など望まぬわ
有り金のニッケル貨棚に積み数えた
珈琲をこそげては妻に運ぶが俺の老い
母からのこのナイフ芋の芽を削れば
酢の甕は土間にあり
言葉もなしにひとり醗(わ)く
軍鶏蹴る切り株斧は大佐の痕
三十五年の内乱を切り抜けた
待てども政府は年金を下さぬ
革命闘士の腕の張りは衰え
闘鶏だけが望みなる暮らし
孤独の果ての旅が南米だ
在りし日の面影にすがる身の惨めさ
口の端に泡溜まる耐えたばかりの半世紀
妻の咳籠もる家うら饐えた香りよ
あの軍鶏(シャモ)を酢と煮れば
今夜ばかりは笑えるか
挿入歌３．『コケ酢』（ア・カペラ合唱）
全員 ♪雲南四川と貴酬にまたがる
杏の里こそ我らが国
でも誰もその国見た者はおらず
踊りと歌とで思うばかり
我らビルマの山巓ぐらしよ
ジープゆく尾根みち暗い谷間
凍る朝露ケシにかかり
アブの子目覚めて身震いした
コケ酢は そま路をたどる担ぎ屋に
粗塩盛らせよ 芭蕉の葉に
若鶏は絞めたら 手早く捌いて
塩樽につけて ひと月待て
おかぼ炊けたと 叫ぶ子ども
しゃもじでまま切る 酒と塩と
肉と米とを 練りあわせて
竹筒に詰めて 土に埋けよ
我らの里には軍隊はいるけど
酔いと踊りとに明け暮れてる
中央の部隊が我らを攻めたら
コケ酢を背中に森に逃れ
宵は焚き火で「すし」噛みしめ
口伝や民話を学ぶ木蔭
アヘンひとつで我らは悪
この生き様こそ知られるべし ヘイ！
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