ペトラですペトラ。もう心底から憧れていたペトラ遺跡。
これの為にヨルダン行ったようなもんですよ。ええ、朝8時から、やる気マンマンで出発しましたとも。
チケット売り場から10分ほど歩くと、高さ100mもあるという垂直な岩山に両脇を挟まれて、何故か平坦な細道が通ってます。
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シークと呼ばれるそれをさらに1kmほど進むと、いきなりアイツが現れます。
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もうね、こっちは最初の岩の裂け目からビビッてる訳ですよ。なんでこんな道があるんだ、人工物のはずはないんだけど自然のものにしちゃ不自然すぎる、なんだこれなんだこれ‥‥って。それが開けた途端、これ。
作った奴の狙いは大当たりです。「負けた‥‥」と土下座したくなる事ったら。
ただ、この神殿(ナバタイ人の墓地だった事が判明してます)、奥行きはないの。今は立ち入り禁止ですが以前は中に入れて、観光客が撮った写真を見ると、内部に数個の部屋があってそれでおしまい。
ほんっとに示威行為だけの為に作りやがったな‥‥
また、発見されたのが1812年と中途半端な時期だったので、神像の顔はイスラム教徒に削られちゃってます。発見された直後に訪れたアイルランド人のデッサンがすっごい綺麗。
柱が1本折れていたのを直したのはGJだけど、かなり摩耗もしてるよねぇ‥‥
しかも『インディ・ジョーンズ』の撮影の為に、容赦なく釘をぶっこんで照明とか取り付けたらしいんですよ。大事に扱え文化遺産!!
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で。
本当に本気で死ぬかと思ったのが実はここ。
エル・ハズネ(↑の神殿)からそのまま平坦な道を進むのが一般的なルートなのですが、脇に階段があります。そこを登るとぐるっと回って、岩に穿った住居跡などを見ながら先へ進めます。
‥‥進めるはずなのです。
ヒーヒー言いながらてっぺんまで登って、おお良い眺めじゃと堪能して、さて降り口はこっちかいのう?と岩を這いずり下りて行って。いきなり断崖絶壁(下方向)に突き当たり。
え、ちょっと待って、ここ降りれないよ。クリフハンガーだよ。え、今来た道を引き返すの?って、私さっき尻でずり落ちたりしたよ?あんなの登れないよ???
え?
立ち往生!?
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眼下には胡麻粒サイズの観光客が見えます。見えますが、ヘルプミーと叫んだところで、彼らにもどうしようもないであろう場所。下は断崖絶壁、上は岩山。
迷っていたら日はどんどん高くなって、つまり暑くなる。手持ちの水が尽きたらアウト。
即決しました。よじ登ろう。
ここから1時間の苦闘は、今でも思い出したくない‥‥
超インドア派、引きこもり一歩手前な私が、指の力だけで体重を持ち上げるとか。片足を掛けた岩が崩れてファイト一発状態になったとか。ないないあり得ない。
古代人の鑿の跡に命を助けられた。あれにつま先を掛けられなかったら、多分落ちて黒枠で新聞に載ってた。
最後の水を飲み切った所で、通常のルートに復帰。
しばらく放心して動けず。
今後、何らかの機会でペトラ遺跡を訪れる事になってしまった時。以下の言葉を頭の片隅でいいので覚えておいて下さい。
「犠牲祭壇から先へ行くには、茶屋の小僧に道を聞く」
「ロバの糞がない所へは絶対に進まない」
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誰も見ていない所で一人インディ・ジョーンズを体験した後。
帰るか?でももう二度と来れないし、やっぱ奥まで行きたい。と火事場のクソ力を出し切ってブラブラする関節をだましだまし、引きずるように歩き続ける。もはや意地。
その意地も、さらに2km歩いて博物館に辿り着いた時に尽きました。ここから、階段を一時間登るとエド・ディル(修道院)だと‥‥?
無理。絶対無理。ロバさんタクシーがあるんだけど、むしろロバにしがみついてるだけの体力が残っているかどうかの方が疑問だ。
しつっこいロバ引きの勧誘に、自分の体の関係各所と相談。諦めるか?いやでも、憧れだったんだし!ああくそ、ロバ引きうるせぇ、しかも暑っちぃ、考えがまとまらん。
結局、行きはビューポイントまで登り、帰りはエル・ハズネまで送ってもらう事を条件に、相場の上限まで値切った時点で妥協。畜生、体力さえ残っていればこんな屈辱は‥‥
ところで、私ロバさんには初めて乗りました。
馬と違って四肢の踏み出しがバラバラなので、ドッカリ座ってゆさゆさ揺られていくしかありません。鐙と太股で体重を支え、膝と腰で振動を吸収する馬は、実は結構な運動量でして。それに比べれば楽と言えば楽。ただし下り坂とかめっちゃ怖い。
アホ・ノロマの代名詞にされる動物だけど、きつい坂なんかは首を振って嫌がるのね;_;暑いし重いしそりゃイヤだよね。ゴメンねゴメンね、悪いと思うけど私ももう歩けないの。頑張れスザンナちゃん!←私が乗ったロバの名前。
そんなこんなで辿り着いたエド・ディルは、規模は大きいけどエル・ハズネに比べたらまぁ、見劣りはしますわなぁ。
むしろ、その前にある茶店の方が私には有難し。長椅子がベドウィン風に配置された日陰で、のべ〜っと寝っ転がって「もう動きたくない‥‥」とゴロゴロ。さっさと私を送り届けて次の客をゲットしたいロバ引きの兄ちゃんに、「まーまー茶でも飲むかい?」とシャイを奢ったりしてゴロゴロ。ああ『お茶を濁す』ってこーゆー意味だったのか。
しかし決して涼しい訳ではない。日陰なだけで涼しくはない。風が熱風。生搾りオレンジジュースもほんわり温か。(ここまで来たら、ブロックアイスなどという贅沢品は存在しない!)
じーわじーわ体力が削られていく感覚に、ホテルまで帰れなくなるかも‥‥という恐怖でしぶしぶ腰を上げる。そういえばお昼食べてない。ってか、食べられる状態じゃない。
そしてスザンナちゃんに揺られ揺られて、エル・ハズネまで帰還。そこからの残り2kmは、行きの足取りの軽さが嘘のような、長い長い苦難の道でしたよ。まぁ暑いってのもあるんだけど。
この日、ホテルの夕食で、2組の日本人旅行者と合流。私よりずっと長旅な皆さんの話を聞いてキャッキャしてたんですが、私と付き合い長い人ならば、ココで私が酒を飲もうとしなかった事に異変を感じたと思う‥‥
なにせNIKEくんのスニーカーが壊れましたから。つま先と靴底がパックリと。応急処置で、裁縫セットで縫い合わせてましたから!
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