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日記一覧

「香住の居酒屋で、初めて会ったと言うか、初めてぼくのところに来たときのことは憶えてる?」「もちろん憶えてるよ」「あのときのこと訊いてもいい?」「うーん、最初の頃って言うか、普通になるまでのことはあんまり訊かれたくないんだけどな。隠すつもりは

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「あっ!」 ハリが指さした先を見ると、「馬毛島に自衛隊を!」という看板が立っている。もう少し走ると「馬毛島への米軍施設反対!」という看板もあった。 地元の発展のために自衛隊であれ米軍施設であれ誘致すべきだと言う人がいる。自衛隊ならいいが米軍

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プリンセスの休日
2020年06月28日23:17

プリンちゃんは帰って行きました。幼稚園が大好きなので、それを楽しみに。今日は、ずいぶん久しぶりの美容室。お母さんもカットしてもらうので、ぼくがお迎えに行きました。終わったよー!どう? またエルサにしてもらったよ!明日から元気に幼稚園を楽しん

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 タクシーの運転手というのは、想像以上に乗客を観察しているものだ。ハリはキャップをかぶっていたが、「お嬢さんすごくおきれいですね。タレントさんみたい」と言った。大抵の人がハリの容貌にひと言触れずにはいられなくなるようだ。若い女性を除いては。

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愛しき孫たち
2020年06月27日14:40

昨日、プリンちゃんがやってきた。てんちゃんもいたずらっ子になりました。まずは大好きなブルーベリーを収穫して、今日は楽しみにしてたプール遊び。この屋根、昨日、また必死でふくらませたんだのに、今日はあいにくの曇天で、いらないや!かわりに水が冷た

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「タクシーはどう呼んだら?」「知り合いのタクシーを呼びましょうか?」「お願いします」 タクシーが来るまでおばあと立ち話になった。この島間はかつて工事関係者で賑わっていたそうだが、工事がほとんど完成し、作業員はほとんどいなくなった。住民も減っ

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大阪名物
2020年06月26日16:22

他県の方はご存じかどうか、今日は大阪の「日本一」まで走ってきた。ここだよ。日本一長い、天神橋筋商店街。南北2.6キロ、600店舗だって。この歳になるまで行ったことがなかったんだ。時間の関係で半分しか歩けなかった。面白いのでまた行こう。4〜5

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 屋久島には昼過ぎに着いた。もちろん港は三島や十島と比べるべくもない。地元住民ではなく観光客が主役の港だった。けれど人影はほとんどない。種子島へ乗り継ぐフェリーの乗り場はすぐにわかった。あまり待ち時間もなかったので、屋久島の下見は次の機会に

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「さっきターミナルで気づいたけど、種子島まで直行する船もあったみたいだよ。そっちの方がコスト的にも日程的にもよかったと思う。ちょっと調査不足だったね」「私がいるから思うように調べる時間がないんでしょ?」「いや、ぼくが旅の素人っていうだけの話

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「なるほどそういうことか。ありがとう。おかげでスッキリしたよ。ところで何をあんなに盛り上がってたの?」「えへ、父は独り身だから若い女性に興味津々なんだって言ったら受けたんだよ。お姉さんたちの中におじさん好みの人がいて、お父さんのこと結構悪く

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 13時が近くなっておばあが帰ってきた。「悪いな、遅くなった。昼は食べたか?」「いただきました。ご馳走様でした!」とハリが悪戯っぽく言って彼を見た。彼がお会計をと言うと、おばあが答えた金額は彼の三泊分ぽっきりで、言葉どおりハリの分は全て無料

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 小雨も妙に似合う港まで歩くと、堤防の端っこの方に漁船がいくつか停まっていて、その中の1隻に作業中の青年がいた。歩いて行ってみると作業が終わったようで、堤防に上がってくる。声をかけた。「漁師さんですか?」「兼業ですけどね」と気さくに青年が答

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 朝、小雨が降っていた。散歩に出るのも億劫だなと彼が思っていたら、おばあが朝食のあと、「ハリちゃんもコーヒーは飲めるんやろ?」と言うのでありがたく食堂に居座った。 静かな雨で、時おり軒から落ちる雫が側溝のふたを叩く音がした。 たった足かけ4

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アポなし昼飲み
2020年06月20日15:35

何年ぶりかな、久しぶりに鶴見緑地まで走った。昔、花と緑の博覧会があったところだよ。今はずいぶんさびれてるけど、広くて気持ちのいい場所。蓮の花がきれいに咲き誇ってた。出がけに、「今から鶴見緑地まで走ります」とぴがしにラインしておいたら、突然だ

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「何を話してええかわからん。何の話が聞きたいんや?」 おばあの年代記を聞くのは失礼だと思った。ここでひとり民宿を経営しているおばあは恐らくずいぶん苦労もしただろう。あの壁を築くにはそれなりの辛い記憶もあるのだろう。そんなものを掘り返したくは

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 宿に戻ると庭でおばあが洗濯物を干していた。ふたりを見とめると、頬を緩め、「お帰り。今夜も泊まるか?」と訊いた。 もうとっくに船は港を出、鹿児島に向かっている。「明日は船は入るんでしたっけ?」「欠航があったから入るよ」「じゃ、もう1泊だけお

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10万円いただきました
2020年06月18日13:44

5月16日に、定額給付金をオンライン申請した。以来1か月余り、さっき入金通知があったよ!振り込みは遅々として進んでないみたいだから、まだ早い方だったのかな?運用資産の方がコロナの影響でまだちょっとマイナスなんで、これがプラスに転じたら、給付

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遅れてやってきた開幕
2020年06月18日12:51

明日、プロ野球が開幕するんだねぇ。今年はもう無理かと思ってたから、ちょっと楽しみだ。昔と比べたら興味はずいぶん薄れたけど、野球中継がないのって何か物足りないよ。さて、今年もOB解説者を中心に、タイガースの評判は悪くないけど、若手は足踏み、ベテ

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「えーと、何だっけ、そう、私は人間を目指したけど、中には植物を目指す人もいるし、どこかお父さんの知らないような惑星で未知の生物になってる人もいる。って、比喩だと話がおかしくなるけど。 でも、人間を目指す人がやっぱり一番多いかな。魅力的なんだ

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「普通は宇宙からどこかへ姿を現わそうとするとき妨害するだけで、もうそこに実体を形成してるのに、それを消すようなことはしないんだけどね、私ちょっと契約違反してしまったから強制措置って言うのかな、そんな感じ。もちろん、妨害とか契約とかは比喩。実

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 老人の姿が曲がり角で消えるとすぐに、その角を曲がってハリが姿を現わした。朝からの彼の長い煩悶を考えると、あまりにもあっけない出現ではあった。「ごめんね。急にいなくなって」 ハリの表情にいつもの笑みはなかったが、暗い影もなかった。乾ききった

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「いやいや、昔のことです。忘れてはいませんがね。 その当時はそりゃ辛かったですよ。私が至らなかったせいで、不憫なことをしてしまったもんでね。まだこれからだったんですよ」 それ以上話を促すことはできなかったが、男は問わず語りに続けた。「事故だ

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「入らないんですか?」 突然、道の方から声が降ってきて彼はハッとした。振り向くとそこには、薄い緑の作業衣を着た初老の男が立っていた。島の人なのだろう。彼は頭を下げ、体勢を組みなおして答えた。「昨日、おとといと浸からせていただいたんですが、今

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 朝起きたら、隣にハリの寝姿はなかった。トイレにでも行ったのかとまだおぼつかない頭の中で彼は思い、ハリがトイレになど行かないことを思い出した。ずいぶん早いが、散歩にでも出たのだろうか。朝食の時間まで待ったが帰らないので、何かの気まぐれでまた

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「おばあ、昨日と雰囲気違ったよね」 彼の言葉にハリが言う。「そうだね。でも、昨日のおばあと今日のおばあ、私たちが島に来る前のおばあも、同じおばあなんだよね」 妙に寂しそうな口ぶりだった。「もちろんね。人間なんてそうそう変わるもんじゃない。ぼ

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「女将さんからお借りした服がそうしてくれたんだと思います」 おばあはまた笑みを噛み潰しながら、言った。「あんな下らん服は何の役にも立たん。ハリちゃんの肌が強かっただけの話や。もともとつるつるやしな。私はあのお湯に嫌われとるが、ハリちゃんを嫌

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 港に戻ったのは陽が傾き始めた頃だった。案内所は無人だったが、掲示された携帯番号をダイヤルすると3分も待たない間にふくよかな男性が現れた。坂本温泉が工事中だったことを報告すると、彼はそのことを聞かされていなかったと驚いた。どんなシステムにな

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 港に戻ったのは陽が傾き始めた頃だった。案内所は無人だったが、掲示された携帯番号をダイヤルすると3分も待たない間にふくよかな男性が現れた。坂本温泉が工事中だったことを報告すると、彼はそのことを聞かされていなかったと驚いた。どんなシステムにな

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高校以来の重さかな?
2020年06月09日22:21

日常的に体重を計るような習慣はなかったけど、3か月に一度、薬をもらいに行く病院で2月末に計測したら、「ちょっと増えすぎてますね」と言われた。不摂生してたのはわかってたけど、67キロ超だって?!人生最高体重だ。ぼくは身長174センチ。元々細身

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「じゃあ、穴の浜だっけ、岩盤を温泉が流れてるっていうの探してみようよ」 ハリはふくよかなスタッフの教えに背く提案をした。言われるまでもなく彼もそのつもりだった。それから略図や方角を頼りに、迷っても誰も探しに来ないだろうから−助けを呼ぶために

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