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2017年11月18日09:58

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『教皇様だって苦労してるんです』第1話

 2017年のロス誕第二作です。
 聖戦後復活設定でロスサガ。
 第一作目はこちら。『不変の愛』http://www.pixiv.net/novel/show.php?id=8919492
 一作目が短編だし、あまりお祝いにもなってないので、なにかもう一作…と思ったのですが、こんな話しか思い浮かびませんでした。やっぱりあまりお祝いになってない…。今年はこんなんでごめんよ、ロス。
 アイオロスも人知れず苦労してるんです、というお話。問題は何も解決してないけど、がんばれ、アイオロス。
 でもオチのあと、サガ「何があったんだ、アイオロス!?」→ロス「ア、アフロディーテに愛人になってくれって頼んだら断られた…」→修羅場、ってなりそうだw
 先の侍従長がアイオロスにサガ似の女性を斡旋する話はこちら。『恋情の毒』http://www.pixiv.net/novel/show.php?id=6095232


『教皇様だって苦労してるんです』第1話

 十一月二十九日の夜。教皇アイオロスの誕生日の前日のことである。
 聖域の一角にある神官長の館の一室に集まっている男たちがいた。
「…では今夜もサガ様はアイオロス様の寝室に泊まられているのか?」
 集まった男の一人がそう尋ねると、
「うむ」
 と、一人が答えた。
「困ったものだ」
 と、別の男がため息混じりに吐き出す。
「何とかならんのか、あのお二人は!?」
 苛立たし気に、また別の男が声を荒げる。
 ここに集まっている男たちは、一言で言えば「反サガ派」であった。
 元は大逆の罪人であるサガが未だに双子座の黄金聖闘士として重きを置かれ、さらに教皇の首席補佐官の座にあり、のみならず教皇アイオロスの情人として彼の寵愛を独占しているという有り様を快く思わぬ者たちである。それを倫理規範の緩みと見る者、サガの影響力を危険視する者、偽教皇時代にサガに同僚を殺害されたことに遺恨を持つ者、など、動機は様々だが、その数は決して少なくなかった。
 サガを教皇庁の内部から排除することを目指している彼らが、その第一段階として目下、力を入れているのは、アイオロスとサガを別れさせること、あるいはアイオロスのサガへの寵愛を薄れさせることであった。
「アテナのご意向もあるとはいえ、大逆人が重用されるというだけでも示しがつかぬのに、さらには教皇の寵愛を得るなど…あまりに乱れておるわ!」
 リーダー格である神官長が声を荒げる。
「侍従次長!お側にある者として教皇をお諫めするのがお前の務めではないか!?明日は教皇の誕生記念日として祭典があるのだぞ。このような日くらいは身を慎んで浄い夜を送るようにと…」
 侍従次長と呼ばれた男が困ったように視線を落とした。
「いや、我々もそれとなくは申し上げているのですが、教皇はサガ様の件についてはいっさいお耳を貸してくださりません。今夜も教皇自らが『誕生日をサガ様を迎えたい』という強い要望でサガ様を教皇の間に留めおかれまして…」
「お前たちの努力が足りぬのではないか?こう、例えば、教皇がお心をサガ様から他に移すような相手をお勧めするとか…」
「それならば我々もやっております。教皇のお傍近くに仕える女官や侍従は、いずれもえりすぐった美形をつけているのですぞ!ですが教皇は一向に彼らにご関心を示されず…」
 侍従次長が懸命に抗弁する。
「先の侍従長に至っては、サガ様に良く似た女性を探し出して、側女としてお勧めするまでしたのです。ですがアイオロス様はさっさと親元に返せの一点張りでした。あげくに連続殺人事件まで起きてしまい…」
 出席している侍従の一人がため息とともに答えた。
「あの事件を契機に、侍従長も入れ替わってしまいましたからな。先の侍従長は我らと志を同じくしていたのですが、新しい侍従長はアイオロス様が自分の意に沿う者を選ばれましたので…やりにくくなりました」
 神官の一人が言う。
「アストリッド・ニルセンは女だったから教皇の関心を惹かれなかったのではないか。アイオロス様は男がお好みなのでは…。やはりサガ様に良く似た男を探し出してだな…」
「そうは言われるが、あのアストリッド・ニルセンを探し出すのにも尋常ならぬ苦労があったのです!身元が確かで信用できる、サガ様に良く似た美貌の女でもなかなか見つからなかったのに、まして男となると…あれほど美しい方と張り合える人間がそうそういるとお思いか!?その上、その相手に教皇の愛人になれと言い含めねばならぬのですぞ!これがどれほど大変なことか…」
「とにかく、探すだけは探してみよ!やってみもせず諦めることはあるまい」
 神官長が侍従次長に厳命する。
「サガ様に良く似た男と言えば…」
 事務総長補佐の役目にある男が発言した。
「双子の弟のカノン様がいるではありませんか!ここはカノン様にお頼みしては。あの方も、ご自分の兄と教皇の仲を快く思っておられると聞きます。カノン様に、アイオロス様を誘惑してサガ様との仲を裂いてくれとお願いしてみるのは…」
 だが神官長が渋い顔をした。
「だがそれでは、サガ様の座にカノン様が代わりに就くだけではないか。あの男とて、大罪人であることに変わりはないのだぞ!サガ様になり代わるどころか、教皇の寵愛を兄弟で一緒に受けて、前科のある愛妾が二人に増えてしまうだけのことになりかねん。いかん、いかん!」
 仮にカノンにそんな頼みをしたところで、「アイオロスを誘惑するだぁ!?んな気色悪い真似ができるか!死ね!」と彼の逆鱗に触れるだけであったろうが、ともあれ、神官長はカノンにすがるという提案を却下した。
「教皇のお好みに合いそうな美女や美少年を集めて、猊下のための後宮を作ってみてはどうだろう。場を整えればアイオロス様もその気に…」
「聖域の予算にそんな余裕はありませんよ」
 事務総長補佐がその提案を退けると、首補祭を務める神官が別の提案した。
「ではもっと教皇に他のお相手を積極的にお勧めしてみては?周囲に美形の女官や侍従を侍らせるだけではなく、思い切って寝室に夜伽に行かせてですな…。教皇とてまだお若いのですから…」
「それはもうやっております。一指も触れず、扉の前で全員が帰されました」
 侍従の返答に一同からため息が漏れた。
「ええ〜い、こうなったら正攻法ではらちが開かん!ここは薬を使ってでもだな…。あるだろう、医療魔術師の連中が作っている秘蔵の媚薬とかが!それを使って既成事実を作ってしまえ!」
「それもすでに試しました。教皇のご夕食に媚薬をこっそりと混ぜて、あとで女を寝室に差し向けたのですが…」
「で、首尾はどうだった?」
 身を乗り出して事の成否を尋ねる者たちに、侍従は残念な報告をした。
「その女は追い返されまして、後は『サガ様を呼べ!』の一点張りで…。仕方なくサガ様を呼んだところ、媚薬の効果で、その夜はいつにも増して激しく愛し合われたようで…」
「逆効果ではないか!」
 男たちはそれぞれ頭を抱えたり天を仰いだりした。
「こうなったらアイオロス様を何とかするのではなく、サガ様の方を何とかしてはどうだ?こう、例えば薬で…」
「サガ様を毒殺するのか!?」
さすがに出席者の一人がぎょっと身を引く。
「…いや、いや、そこまでは…。でも、そう、例えば薬でサガ様の意識をなくしてですな、正体を失ったところを何者かに手籠めにさせて…。そうすればお二人の仲を裂くことが出来るやも…」
 陰惨な提案に、しかし別の出席者がためらいを示した。
「ですが、サガ様が黄金聖闘士としての力を持っているのは間違いないのですからな。それで相手が反撃にあっては…」
「それにいまだにサガ様を信奉する者たちもおります。シュラ様やデスマスク様、アフロディーテ様は今でもサガ様に肩入れされておりますし…。その場合、もし裏で我々の画策があったとあの方々にばれては、こちらに身の危険が及ぶかも…」
「まったく、どうしたものか。頭の痛いことだ」
 こうして重苦しいうめき声とともに、彼らは延々と実りのない謀議を重ねるのだった。

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