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2017年04月24日07:21

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🟣 アリばば地獄

未明の5時半に日の出を観賞するためにホテルを出た。
まだ真っ暗で三日月は出ていたけれど星は数えるほど。

この日の天気予報は曇天。
多分、日の出は見られないだろう。
けれど夜明け前の月夜にラクダに乗れるのは嬉しい。
まさしくこれは「月の砂漠」の世界だもの。

ところがそれをロマンチックだなどと喜んでいたのはそこまでだった。
砂丘は見た目よりもなかなか勾配のある高い丘で、砂は雪以上に柔らかく、歩きづらいことおびただしいのに、頂上まではラクダを降りて歩いて上らなければならない。

砂丘の頂上は家の屋根のようで、片方に日に当たれば片方は影になる。その影が作る境界線の上は当然ながら左右ともに急な斜面である。
砂でなければ危険この上ない境界線の上を、より高みを目指して歩いている時だ。

私の左足がその境界線からほんの少し外れた。
途端に私の足が砂にズズズっと埋まり、バランスを取ろうとした右足も同じように足を取られて結果的に身体が前のめりに倒れ、そのまま5〜6m滑り落ちてしまったのだ。

信じられなかった。
空を切る、という言葉があるが、砂漠の砂もまるでそれと同じ。
手をついてもイタズラに埋まるだけで這い上がることもできない。
どうやら影のある方の砂は、より柔らかかったらしい。

右足のスニーカーは砂から足を抜こうとした時に脱げて、すでに明るくなっていたにもかかわらず、どこに埋もれたのか見上げてもわからない。
私は蟻地獄の中に落ちた蟻?
安部公房の「砂の女」?
もしかしたらこれが話に聞く砂地獄?

勿論ラクダ引きの青年がすぐに私を助けに滑り降りてくれた。
映画だったら恋に落ちるシチュエーションだわ!
うっとり。

どうやらこういう私の妄想癖は恐怖と滑稽さを緩和させようという本能から出るらしい。

有難いことにはスニーカーも彼がすぐに見当をつけて掘り出してくれた。
さすがプロ!

日の出は案の定見られなかったが、私は身をもって柔らかすぎる砂は凶器になりうるという事を知った。
それはなかなか楽しい発見で、経験だった。

しかも日の出を諦めてホテルに戻るラクダの上から振り返ると、おぼろ月のような霞んだ白い太陽が浮かんでいるではないか。

初めて見た白い太陽に私は日の出以上に感動した。
砂塵が見せる太陽とはいえ、日本では絶対に見られないその太陽を写真に撮れなかったのが本当に残念だった。

ちなみに砂地獄というのは人を飲み込むようなことはないそうである。
ただ助けてくれる人がいない時は身動きの取れない状態になるので、夜は冷え込み、昼間は暑いので危険な事に変わりはないとか。

砂漠はやはりなかなかミステリアスで、魅力に溢れた場所である。

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