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2016年12月02日03:59

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『呪いのホテル』第2話

『呪いのホテル』第2話

 シャワーを浴び終えたサガは髪の水気をタオルでぬぐった。
『今のところ特に何もないが…』
 部屋の設備も一通り調べてみたが、これといって変わったところはない。
 二十世紀のパリで、同じ部屋に泊まった客が連続して首吊り自殺する事件が起きて「自殺ホテル」と騒がれたが、真相は隠し通路から強盗団がその部屋に侵入して、泊まった客を自殺に見せかけて強盗殺人を行っていた、という事件が実際に起きたこともある。また十九世紀のアメリカで、ホテルのオーナーが特殊な配管から客室にガスを送りこんで客を殺しては失踪に見せかけ、連続大量殺人を行っていたという事件もあった。
 怪しい構造物や配管がないか、毒物などの痕跡がないか、警察も調べてはいたが、異常はなかったようだ。
 とりあえず今夜は寝ずに様子を見てみるか、と、サガは寝台に座って本を読み始めた。だが。
『…む?』
 読書をしていたサガを急速に気だるい眠気が襲った。あらがう間もなく、彼は本を膝の上に開いたまま、ベッドヘッドに身を持たれかけさせて夢の国にと旅だってしまった。
 その夜、サガはアイオロスの夢を見た。
『サガ』
 夢の中でアイオロスが微笑んだ。
『アイオロス』
 サガも愛する人に微笑み返す。アイオロスは近づき、サガを抱きしめた。
『愛してるよ、サガ』
『私もだ、アイオロス。愛してる…』
『サガ…』
 ちゅ、ちゅ、と、アイオロスはサガの顔に、首に、胸に、キスを繰り返した。アイオロスの手がさわさわとサガの体を愛撫する。
『ああ、アイオロス…』
 サガはうっとりとアイオロスの愛撫を受けた。体の中で快感がざわつき、高まっていく。熱が体の下部に集中する。アイオロスはサガの股間を優しく撫で、キスをし、彼の快楽を育てていった。
「サガ!サガ!」
 誰かが自分を呼ぶ声がした。ドン、ドン、と何かを叩く大きな音もする。
『うるさい…。私とアイオロスの邪魔をしないでくれ…』
 自分を呼ぶ声は、アイオロスとの愛の行為に溺れるサガには耳障りな雑音でしかなかった。
「サガ!大丈夫か、サガ!?この部屋から変な妖気が…!」
 サガが泊まっていた客室の扉が開かれた。隣室にいたアイオロスが駆け付けたのだ。
 アイオロスが室内を見ると、寝台に横たわっているサガの上に漆黒のワンピースドレスを着た女がまたがって乗っていた。密室に入り込んでいたその女は、どう見ても不審人物だった。
「…何者だ!?」
 アイオロスが拳で女に撃ちかかる。すると彼女は身をひるがえしてサガの上から飛びのき、窓ガラスを透り抜けて室外にと逃げていった。
「窓をすり抜けた…!?実体がないのか!」
 アイオロスは女の正体を察した。女性の姿をした夢魔サッキュバスだ。この客室に泊まって昏睡になった客たちは、サッキュバスに襲われて精気を抜かれていたのだ。
「サガ、しっかりしろ!」
 意識をもうろうとさせているサガをアイオロスはゆさぶった。彼もまたサッキュバスに精気を抜き取られていた。
「う…アイオロス…、何が…」
「サッキュバスが出たんだ、この部屋に」
「サッキュバス…」
 しばらく重い体を何とか動かそうとしていたサガだが、やがて口を開いた。
「アイオロス、サッキュバスを追え…」
「しかし、サガ…!」
「私は、大丈夫だから…、早く…逃がすと次の犠牲者が…」
「くっ!?」
 アイオロスはサガに対する心配と不安を思い切り、サッキュバスが透り抜けて行った窓に近寄った。ホテルの窓はストッパーがかかっており、人間の体が出るほどには開かない。アイオロスは窓ガラスを拳で打ち破って壊し、部屋のある二階から外にと飛び降りた。そして射手座の聖衣を呼び装着すると、空を飛ぶサッキュバスを追った。
「待て!」
 サッキュバスはコウモリのような翼を広げて空を飛行していた。アイオロスは最初は屋根から屋根にと跳躍して後を追っていたが、サッキュバスが高度を上げたため、射手座の黄金の翼を広げて飛行形態に移った。
 サッキュバスは後ろを振り返り、後ろについて来ているアイオロスの姿を見ると舌打ちした。
「許さんぞ、サッキュバス!」
 アイオロスは射手座の弓をつがえ、狙いを定めた。
「よくもおれのサガを汚してくれたな!」
 射手座の矢が放たれる。黄金の小宇宙を集中させたその矢はまっすぐに宙を切り裂き、サッキュバスを貫いた。
「ギャアアァァーッ」
 断末魔の悲鳴を残してサッキュバスが消滅する。
「サガ!?」
 サッキュバスの消滅を見届けると、アイオロスは旋回してすぐさまホテルにと取って返した。
「大丈夫か、サガ!?」
 自身で打ち破った窓から客室に舞い戻る。サガは寝台の上に体を起こしていた。
「…ああ、大丈夫だ、アイオロス」
「よかった」
 アイオロスはサガに近付き、抱き締めた。その時、アイオロスはとある匂いに気付いた。青臭い、アイオロスが良く知る匂いだ。
「…あ、あの、アイオロス…見ないでくれ…」
 サガはアイオロスを引き剥がし、もじもじと足を動かした。何かを恥じらっているようなサガの様子に、アイオロスは気づいた。サッキュバスに襲われたサガは夢精してしまっていたのである。
「…シャ、シャワーを浴びてくるから…!」
 慌ててアイオロスから離れてシャワー室に駆け込もうとしたサガの腕を、アイオロスは引っ張った。そのまま寝台に押し倒す。
「…え?」
 聖衣姿のアイオロスがサガの上からのしかかる。
「え、な、なに、アイオロス…?」
「サガ、しよう!」
「しようって…」
「お浄めセックスだ!今すぐするぞ!」
「え、ええええーっ!」
 戦闘後で気が高ぶっていたこともあり、夢精して恥じらっているサガの様子にアイオロスの性衝動は一気に頂点まで突き抜けてしまったのである。
「ちょ…ま、待て、アイオロス、昨日だってして…!」
「昨日は昨日、今日は今日だ!」
「ま、窓だって壊れて…、やめ…」
 サガは抵抗したが、黄金聖衣をフル装備したアイオロスと生身のサガでは、力に差がありすぎた。
 抵抗するサガの声がやがて喘ぎ声と嬌声に変わるのに、さして時間はかからなかった。

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