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2008年09月24日10:14

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『なでしこ隊』

 週末、『土曜プレミアム なでしこ隊 〜少女達だけが見た「特攻隊」封印された23日間〜』を観た。昭和20年3月、陸軍知覧基地で、特攻隊員の身の回りの世話を命じられた知覧高等女学校の生徒達の23日間の物語である。「なでしこ隊」とは、女学校の校章が「なでしこ」であったことから名付けられたものだ。他局ドラマのように、特攻隊員を犠牲者として描く「安易な反日反戦論調」に走らなかったのは、さすが、フジTV制作である。女学生のリーダーの目を通し、どこまでも真摯に「特攻」に向き合おうとした姿勢は高く評価したい。
 この手のドラマにありがちな、軍事考証の間違いは少なくない。軍人達の所作もおかしい。彼らが身につける軍服、飛行服、装備など、どれもが下ろしたてのように真新しく、不自然である。陸軍航空基地であるのに、飛行シーンでは零戦(海軍機)が使われるなど、制作側の無知、勉強不足が目につくことは確かである。しかし、そんなことはどうでも良い。些細な考証の間違いに目を奪われ、このドラマが伝えたかったものを受け容れられないとすれば哀し過ぎる。当時のニュースフィルムを使って、特攻作戦を視聴者に解説する映像がドラマの間に時折挿入されたが、出撃直前の特攻隊員達が残した「声」には胸が詰まる思いがした。

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 5度も出撃し、その都度、機体の不調や天候不良を理由に帰還した隊員を「臆病者」と罵倒し、殴り倒す上官。出撃に失敗した隊員を再教育する「振武寮」の悲惨な実態。隊員達を心行くまでお世話したいと深夜まで尽くす「富屋食堂」の鳥濱トメ(薬師丸ひろ子)さんを、軍令違反と厳しく追及する憲兵隊。階級をかさに、自分に与えられた権限を無慈悲に行使し、立場の弱いものを苛めて喜ぶ人間はどこの集団にでもいる。何も、当時の陸軍に限ったことではない。こういう軍隊組織の一部に巣食う軍人の嫌らしさを描くなら、負けるとわかっていた戦争でも「より良い敗北」を獲得するため、最期の抵抗の手段として「特攻」に賭けざるを得なかった上層部の苦悩を同時に描くべきであった。自分達の死が、国を護り、家族を護り、日本の明るい未来への道を拓くことなると信じて、出撃していった隊員達の覚悟をも描くべきであった。単に、軍隊の非情さ、酷薄さが若者を特攻に追いやったかのような演出は、特攻隊員の死を矮小化するものだ。ドラマは最後に、「戦争で死んだ者への本当の供養は、二度と戦争をしないことだ」という言葉で締めくくられる。戦争は悲惨だ。戦争はしない方が良いに決まっている。しかし、国家存亡の危機に際し、国を護り、家族を護るための自衛の戦争まで否定し、放棄してはならないのだ。家族の財産と安全を護るためには、手にした武器を存分にふるい、死力を尽くして戦う決意を示すことこそ、抑止力の本質だ。「戦争は悲惨だ」「戦争はいけない」、しかし、戦わねばならない時には断固戦う意志と能力を育成するのが近代国家の姿であることを描いてほしいと、切に願う。

 富屋食堂に訪ねてきた母親と、自分が特攻隊員であることを隠して会い、黙って出撃するシーンではあふれる涙を止めることができなかった。
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