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2026年10月30日05:09

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『翼竜の瞳』

 2026年のラダ誕作品です。『聖闘士星矢』の二次創作で聖戦後復活設定、ラダカノ前提。
 カノンがラダマンティスに、彼の瞳を思わせる宝石を贈る話。皆に愛されラダマンティス。ミーノスの贈り物がへんてこなのはいつものこととしてw、アイアコスはアイアコスでいつも使い道&置き場所に困る贈り物を送り付けてそうな気がする…。
 昨年の話はこちら。『本日はおうちデート』https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=26321766

 
『翼竜の瞳』

 十月三十日は冥界三巨頭の一人、天猛星ワイバーンのラダマンティスの今生の肉体が誕生した日である。というわけで、今代の「ラダマンティス」はこの日を誕生日として同僚や部下たちから祝われている。
 そしてこの日は、ラダマンティスの恋人であり双子座の黄金聖闘士と海将軍筆頭・海龍を兼任しているカノンも、もちろん彼を祝ってくれる。そして二人で時を過ごし、夜には熱い愛を交わすのが毎年の恒例となっていた。
 そして今年もラダマンティスの誕生日に彼の居城である冥界のカイーナを訪ねたカノンは、ラダマンティスの私室の扉を開けた途端

 三本の角を備えた巨大な竜の首に直面した。

「…なんだ、これ?」
 大概のことでは驚かない、それこそ海底神殿で海皇ポセイドンの神霊と対面した際にしれっと「…シードラゴンでございます」と身分詐称したくらいには度胸のあるカノンだが、さすがに巨大な竜の生首?とのいきなりの対面には言葉を失った。
「すまん、カノン!」
 部屋の主であるラダマンティスが、なにやらどたどたと騒がしそうな雰囲気の中でカノンに声をかけた。三本角の竜の首の向こうでは、私服姿のラダマンティスと彼の部下である雑兵スケルトンたちがせわしなく動きまわっていた。
「ラダマンティス様、パンドラ様から贈られたこの置時計はいかがしますか?」
 冥界で採れる様々な宝石で飾られた美しい置時計を持ち、部下がラダマンティスに指示を乞う。
「それは執務室の机の上に飾ろう。今使っているものは倉庫にしまってくれ」
「ミーノス様から、魔界植物の鉢が贈られてきておりますが…」
「魔界植物?あいつ、今回は何を送り付けてきたのやら…」
 縦長の箱を抱えた部下が箱の中身をのぞき込んで説明する。
「え〜と、蔓状の植物のようですが、何やらその蔓が自分で動いておりまして…。あ、こちらに植物の説明書が…」
「………」
 部下から魔界植物の説明書を受け取ったラダマンティスは、それを読んだ後、こう言った。
「…それは中庭で焼き捨てろ」
「はい」
 上司の指示に従って、忠実な部下はミーノスからの贈り物の箱を部屋の外に搬出して行った。
「おい、いいのか?一応はミーノスからの贈り物だろ?」
「いいのだ」
 カノンの問いにため息をつき、ラダマンティスは魔界植物の説明書を破り捨てながら答えた。なお説明書には「この魔界植物の蔓は勝手に肢体に巻き付いていき、しかも樹液には催淫性の効果がある物質が含まれています。カノンとの触手プレイに是非どうぞ」と書かれていた。
「ラダマンティス様、このアイアコス様からの贈り物はどうされます?」
「ああ〜…。どうするかな。あいつも面倒な物を…」
 出入り口の扉の前に鎮座した巨大な三本角の竜の首を眺めて、ラダマンティスは困り果てた。
「この竜の首…アイアコスからの誕生祝いなのか」
 自分がこの部屋に入るなり対面した三本角の竜の首をカノンが改めて眺める。恐竜の一種トリケラトプスを思わせる竜の首は、角や襟飾りの部分まで含めると、カノンの身長よりはるかに高い巨大な置き物だった。
「ああ。この前の狩猟で仕留めたから、とな…。はく製にしたから壁飾りにいいだろうと言われたのだが、こんなものをどこに飾れというんだ…」
 深いため息とともに困り切っているラダマンティスに、上司想いの部下たちが進言した。
「カイーナ城の玄関ホールの上に飾られてはいかがですか?」
「いっそ、ラダマンティス様の法廷の真正面の壁に飾ってはいかがでしょうか?」
「う〜む、しかしそれは威圧的になり過ぎないか?」
 ラダマンティスが竜の首のはく製の始末に困っている間にも、また別の部下が指示を求めてきた。
「ラダマンティス様、バレンタイン様から届いたケーキはいかがしましょう。手作りされたようですが…」
「それはおれの分を取り分けた上で、皆で食ってくれ」
 ウェディングケーキかと思うような巨大な三段重ねのチョコレートケーキを見て、ラダマンティスはそう指示をした。どう見ても自分一人で食べられる量ではない。バレンタインが食材に何を使ったのかも不明なので、カノンに相伴させるわけにもいかない。冥界の食材で作られたものを食べた者は、否応なしに冥界の住人とされてしまうからだ。上司想いの部下の気持ちはありがたく、また制作に要した労力をねぎらう気持ちもあるのだが、せめてもう少し小ぶりで食べやすいものにしてくれ…と、巨大なケーキの頂上に鎮座したチョコレート製の翼竜像と睨み合いながら思わずにはいられなかったラダマンティスだった。
「…やれやれ、取り合えずはこれで片付いたかな」
 他にも法服のための生地だの洋酒だの菓子だの衣類だの、室内に積まれていた上司や同僚や部下たちからの贈り物の処理を一通り指示し終わると、ラダマンティスは安堵の息をついた。使い道に困るアイアコスからの三本角の竜の首のはく製は、とりあえず使っていない部屋に放り込ませておいた。
「相変わらず周りに愛されているな、お前は」
 誕生祝いの贈り物の処理に悪戦苦闘したラダマンティスの姿に、カノンが楽しそうに笑いかけた。
「からかわないでくれ。皆の気持ちはありがたいのだが、毎年この調子だとな。食べるものは消費できるからまだいいが、飾る系の置き物は仕舞っておく場所をとってかなわん。それなのにアイアコスの奴、よりにもよってあんな大きな竜の首を…」
 はああぁ…とラダマンティスが大きなため息をついた。疲れた、と、ラダマンティスは自分の体を投げ出すようにして居間の柔らかいソファに深々と座り込んだ。
「ふむ、それではおれからの誕生祝いの品はあまり喜んでもらえそうにないな」
 ラダマンティスの隣に並んで座ったカノンが、やや口をとがらせてすねたような口調で言った。慌ててラダマンティスは背筋を伸ばした。
「そんなことはない!お前からの贈り物なら別だ!何よりも嬉しい!」
「ふ〜ん…」
 生真面目にカノンの機嫌を取ろうとしてくるラダマンティスにどこまでもすねたような表情を取った(もちろん、本当にすねているわけではない)カノンが、ジャケットの内ポケットから箱を取り出した。一辺が八センチほどのビロード張りの箱を、ラダマンティスの目の前でカノンが開ける。
 箱の中には、直径が七ミリほどある黄金色に輝く宝石が入っていた。
「ほう?美しいな。トパーズか?」
「いや、イエローサファイアだ。しかも面白い特徴があってな」
 と言ったカノンは、古めかしい燭台に差されていた蠟燭に火をともした。そしてラダマンティスの私室の壁にはめられている、昼白色に輝いて室内に光を与える不可思議な冥界の夜光石の覆いを動かして、室内の光度を落とす。
 蝋燭の自然光の中で、カノンが手にした箱の中のイエローサファイアは、鋭く輝く黄金色から深みのある濃紅色にと変化した。
「なるほど。光でカラーチェンジするのか」
 宝石の色の鮮やかな変化にラダマンティスが目を見張る。
「ああ。面白いだろ?」
 そしてカノンは蝋燭の光を消し、改めて室内を照らす夜光石の光度を元に戻した。
 カノンがラダマンティスに語りかける。
「この石を見つけた時、お前の瞳を思い出したんだ。普段は黄玉色なのに、興奮すると赤く色が変わるお前の瞳に…」
 そしてカノンはラダマンティスの耳に口を寄せ、そっとささやいた。
「戦う時の、そしてベッドの中でおれを見つめている時の、お前の瞳の色だ」
「カノン…」
 カノンの言葉にさっとラダマンティスの頬が紅を浮かべる。
「だからお前にこの石を贈りたいと思った。まあ、地下資源は全て冥王ハーデスのものだというし、この冥界では地上にはない摩訶不思議な鉱物や宝石が山ほど採れる。そんな魔法の石を見慣れたお前には、こんな宝石など大した価値はないかもしれんがな」
「そんなことはない。お前がわざわざ選んで贈ってくれた石なのだ。大切にする」
 真面目な顔でカノンに答えたラダマンティスに、カノンが微笑みかける。
「ラダマンティス、この石をお前の好きなように加工させて、改めて贈ろう。何がいい?ネクタイピンか?ピンブローチもいいな。それともブレスレットやチョーカーでも…」
 カノンからイエローサファイアの入った箱を受け取ったラダマンティスは、箱の角度を様々に変えて宝石の輝きを楽しんでみた。
「しかし、このようにカラーチェンジする珍しい宝石など、高価だったのではないか?」
「ああ。おれの給料三か月分くらいはしたな」
 ふふん!とカノンが胸を張ってみせる。
 カノンの「給料」とは、海界の統治者である海底都市ポセイドニアの「元首」としての「お手当て」である。ポセイドニアの元老院議員などの政治職は基本が無給で、就く官職によって経費としての「お手当て」が出る仕組みである。ゆえに「カノンの給料」も際立って高給という訳ではないが、決して低賃金でもない。
「ふむ。給料三か月分か。それならいっそお前との婚約指輪にするか?」
 「給料三か月分」というフレーズに思いついた使い道をラダマンティスが口に出す。
「ばっ…」
 今度はカノンが顔を赤らめる番だった。
「バ、馬鹿…っ!婚約指輪なんて…そんな恥ずかしいもの、人前で付けられてたまるか!それに『婚約指輪』というなら、贈ったおれが夫で、お前が妻ということになってしまうではないか!?お前はそれでいいのか!?」
「ならば、次のお前の誕生日におれがお前に婚約指輪を贈れば、対等になってちょうどよかろう?」
「おれも高価な指輪をもらったら、お互い様になって、この石がお前への誕生祝いにならなくなってしまうではないか!?その提案は却下だ!」
 とにかく指輪はダメだ!とカノンは強弁した。
「ふむ。ならばこの石を写真立ての枠にはめ込んでもらおうか」
 そしてその写真立てにお前の写真を入れて執務室の机に上に飾る、それならいつでもお前の顔を見ていられるから、とラダマンティスが別の提案した。
「はあ?執務中におれの写真を眺めるだと?そんな様をお前の部下たちに見られてたまるか!?ダメだ!却下だ!」
 ラダマンティスのその提案もカノンが退けた。
「ならば額縁にしよう。それでお前の肖像画を描いてもらって、おれの寝室に飾…」
「却下!却下だーっ!」
 再び強い口調でカノンが言う。
「…お前、おれの好きに加工させると言っているわりには、ダメ出しばかりではないか」
 ラダマンティスの不満にカノンがぐっと言葉を飲む。
「と、とにかく、そういう恥ずかしいものはダメだ。何か別のものにしろ」
 顔を赤らめたまま言い募るカノンのわがままに、ラダマンティスは「可愛い」と心の中でのろけながら、代わりのアイデアを思い巡らした。
「ああ、それなら…」
 代案を思いついたラダマンティスはソファから立ち上がり、私室に置いてあるテーブルの引き出しを開けた。そして引き出しの中から取り出したのは、鈍く光を放つ銀色のシンプルな懐中時計だった。
「この懐中時計の時計盤の蓋にこの石をはめ込んで、リフォームしてくれないか?」
 懐中時計に付いた銀鎖を手に持ち、時計をカノンの目の前にぶら下げる。
「これは?ずいぶんと古風な懐中時計だな」
 全体が曇って古びている上に、蓋にも細かい傷が多数ついて長年使い込まれた様がうかがえる懐中時計をカノンが眺めた。
「…おれの祖父の形見だ」
 カノンの手のひらに時計を落として、ラダマンティスが説明する。
「普段、使うものではないが、かといって捨てるにはどうにも忍び難くてな…。それでずっとしまい込んでいたのだが…手を入れて綺麗にすれば、もう少し使いやすくなるのではないか。そう思ってな」
「ふむ。懐中時計の時計盤の蓋、か」
 特に装飾もないシンプルな銀色の懐中時計を蓋を指でなぞり、カノンが言う。
「分かった。そうだな、蓋に翼竜のモチーフでも彫らさせるか。そして竜の瞳にこのイエローサファイアをはめ込ませよう」
「ああ、それはなかなか良さそうだな」
 出来上がりを想像してラダマンティスが微笑む。
「では、またこちらで加工して贈る。完成を楽しみにしておいてくれ」
 そして宝石ケースと懐中時計を改めてラダマンティスから受け取ると、カノンはそれを座る二人の前の低いテーブルに置いた。
 そしてカノンは、今度はラダマンティスと向き合う姿勢で、ソファに座る彼の大腿をまたぐようにしてラダマンティスの膝の上に座り込んだ。耳元に唇を寄せ、そっとささやく。
「…このままベッドに行こう、ラダマンティス。お前の匂いを嗅いだら、やりたくてたまらなくなった」
 ちゅ…とラダマンティスの耳たぶを唇でねぶりつつ、カノンが色めいた誘いをかける。
「食事もまだなのにか?」
「食事の時間まではまだ間があるだろう?少し運動して腹を空かせるくらいがちょうどいい」
「…まったく」
 苦笑しつつ、ラダマンティスはカノンを抱きかかえて、そのまま立ち上がった。カノンが両足をラダマンティスの胴に絡め、彼にしがみつく。
「飯が食えなくなるくらいにへばってしまっても、後で文句は聞かんぞ?」
「ふふ…期待させてもらおう」
 そして二人はラダマンティスの居間の隣にある彼の寝室にと消えた。

 後日、カノンからラダマンティスにリフォームした懐中時計が届いた。銀製の蓋には咆哮する翼竜の横姿が刻まれ、翼竜の瞳の部分にはカノンが贈ったイエローサファイアがはめ込まれていた。
 そしてカノンから懐中時計を受け取ったラダマンティスは、それをこっそりと再リフォームさせ、時計盤の蓋の裏側をロケットに変えさせた。そしてそこに隠し撮りしたカノンの寝顔の写真をはめ込み、執務中に時間を確認するふりをして懐中時計を開けては蓋の裏側にあるカノンの寝顔を秘かに眺めて悦に入るのだった

<FIN>

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