mixiユーザー(id:13333098)

2024年03月31日11:05

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犬が推理したら良かったのに!「落下の解剖学」

面白い映画でした!
なるほど、こういう映画なのか。
結構前から期待していた映画でしたが、まさかアカデミー賞でここまで注目される様な作品だとは。
でも、観てみれば納得です。
観た人それぞれの楽しみ方が出来る、芸術性と娯楽性を兼ね備えた見事な作品だったと思います。

まず、このタイトルが良いです。
普通にカッコ良い。
いかにもミステリー作品の様です。
この作品はミステリーを期待すると肩すかしされると言われていますが、そうでしょうか?

僕はミステリー的な面白さを十分に兼ね備えていると感じました。
真相をはっきり描かないミステリーというのは、あるのです。
日本で有名なのは江戸川乱歩の「陰獣」です。
一応の解決を描きつつ、そうでない可能性を暗示させる。
そもそも探偵が語る真相が本当に正しいのか?
意図的に真相を捻じ曲げている可能性は?
そういう問いかけをするミステリーだってあるのです。

まさにミステリーは解剖です。
きちんと包装をして見栄えを良くした人間や家庭の様相を、表面を切り裂き、中身を抉り、臓器を取り出して並べ、多くの人の前で見世物にしてしまう。
これは悪魔の所業です。
そして、この映画はまさにそれを描いているのです。

何より、いきなり死体で登場する主人公の夫。
非常に重要な役なのに、彼がどういう人物だったのかは意図的に後半まで描かれません。
それにより、観客の意識は操作されてしまうわけですが、これもミステリーでよく使われる手法です。
視覚障害を持つ息子も非常に重要な役どころですが、やはりその感情は見えません。
それらが少しずつ見えてくる過程も、ミステリー的だと言えます。

ただし、この映画には探偵役がいないのです。
弁護士もいますが、目的のために平気で真実を捻じ曲げる事自体が仕事ですから、探偵にはなりません。
適任がいるじゃありませんか。
そう、冒頭からラストまで美味しい所を持っていく天才盲導犬です!

正直、この映画で一番感情を揺さぶられたのはこの犬でした。
ピンチになったシーンは本当に衝撃を受けたし、無事になった瞬間(昨今、犬の無事はネタバレにならないそうです)は思わず声が出てしまいました。
犬が無事で良かった。
人間どもは死んでも良いよ!

ほんとうに賢い顔をしているので、彼が推理したらこんなに素敵な映画は無いでしょう。
ワンワン!「今すぐ全員を集めてください!」
ワンワン!「この中に犯人がいます!」
ワッフン!「松子夫人、あなたですね・・・?」
昔は猫でも出来たそうですから、犬ならまず問題無いはずです。

いや、それにしても後半の盛り上がりは素晴らしかった。
あの夫婦喧嘩の地獄絵図。
これこれ、こういうのが観たかった!
それをみんなの前で公開されるという、さらなる地獄!
もう犯人で結構です!と叫びたくなっても不思議じゃないほどです。
裁判っておぞましいですね。

何もかもがさらけ出され、明らかになった。
わけではありません。
サンドラ・ヒュラー演じる、主人公であり母親であり妻でもある彼女の心は、よく考えたらさっぱり分からないのでした・・・。
まさに鋼鉄、封印された心。
これこそが永遠のミステリーなのです。


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