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2024年02月27日17:19

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「コヴェナント / 約束の救出」

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事が一段落したので、楽しみにしていた『コヴェナント / 約束の救出』を観て来た。最近は歳のせいか、涙腺が緩くなっているのを自覚することが多くなった。先日の大問題作『ボーはおそれている』でも胸が熱くなったし、大好きな黒澤明の『用心棒』ではもちろん百姓一家の救出で泣け、これまで落涙したことがなかった『七人の侍』でさえ、何度も目頭が熱くなる。どうも、「人生残された時間」が短くなるにつれ、同じ映画を観ても感じる部分が違って来たり、感情を動かされる振り幅が大きくなっているのかも知れない。

 さて、『コヴェナント / 約束の救出』である。アフガニスタンに派遣されたアメリカ軍兵士が作戦行動中、瀕死の重傷を負い、現地人の通訳に命を援けられる。自分を援けたことで通訳はタリバンのメンツを潰し、膨大な懸賞金をかけられて家族ともども命を狙われていると知った、もと兵士は通訳の救出のため、再びアフガンに戻る・・・。こんな展開は、私の心の琴線に最も強く触れる物語だ。しかし、残念ながら、涙腺が緩くなったはずの私が一度も胸を熱くすることなく、エンドロールに到達してしまった。もちろん、ところどころ、ぐっと来たり、ハラハラしたりするシーンがあるにはある。ただ、それらがあまりに散発すぎて全体としては平坦。大きく感情を揺さぶられることはなかった。要するに「盛り上がりに欠けた」というのが偽らざる感想である。主演のジェラルド・バトラーが強すぎて、逃避行としては少しも怖くない『カンダハル 〜脱出せよ〜 』の方が映画としてはずっと面白かった。

 以下、少しだけ内容に触れるので、ニュートラルな状態で映画を鑑賞されたい方はご注意願いたい。








1.私が気になったのは、主人公ジョン・キンリー曹長が優秀な指揮官に見えないという点だ。司令部からの情報精度が低く、毎回、自分の分隊が危険な無駄足をさせられていることを嘆いたキンリー曹長は上官のヴォークス大佐に直訴。大佐から「自分の思うように行動したら良い。ただし、私は今の話は聞かなかったことにする」と暗黙の了解を得る。本来なら、大佐から自由裁量を許可される程度に「優秀な指揮官」と認められていると思われるが、この先の展開ではキンリーが指揮官として優秀だと思える描写はない。ついでに言えば、ヴォークス大佐はタリバンの爆弾製造工場の探索という危険で重要な任務をキンリー達に与えていながら、兵力はわずかに一個分隊。120km先の拠点捜索時に「ヘリを出してください」というキンリーの要請を即座に却下していて、有能で柔軟な上官には見えない。

2.キンリー曹長は現地通訳アーメッドの能力を認めず、彼の再三にわたる有益な情報をなかなか聞き入れない。アーメッドの機転でタリバンの待ち伏せ攻撃をからくもかわせたにも関わらず、ヴォークス大佐に「アーメッドは厄介で使いにくい」と報告している。一度ならず、二度までアーメッドに助けられていながら、彼の有能さを素直に認めない点で、キンリーが生真面目で頭が堅い下士官だという印象を強くしている。キンリーがアーメッドを信頼しないから、120km先のタリバン拠点捜索時点までで、キンリーとアーメッドの友情が全く醸成されていない。作戦失敗で分隊はあっけなく壊滅。アーメッドと二人だけの逃避行中、重傷を負ったキンリーはアーメッドの手押し車に載せられ、友軍に救助されるまでの記憶がほとんどない。決死の逃避行の過程で友情を醸成することなく、キンリーは本国へ送還されている。

3.名誉除隊したキンリーは勲章をもらうことになるが、本当の英雄は自分を援けたアーメッドだと主張。そのアーメッドはタリバンの追跡をかわし、100kmの道程を手押し車に自分を載せて生還させたことでタリバンを激怒させている。高額な懸賞金をかけられ、家族ともども命を狙われていることを知る。アフガン派遣の米軍に協力した現地通訳は家族ともどもアメリカへのビザが発給される約束だったが、アーメッドにはビザが発給されていない。キンリーはアーメッドのために関係各所に電話をかけまくるが、色々な窓口をたらい回しにされ時間ばかり過ぎていく。心身共に追い詰められ、ついには「アーメッドに命を援けられた代わりに、彼に呪いをかけられた。彼のことが心から離れない」と妻に愚痴ってしまう。素直に感謝するのではなく、いくら苦しんでいるとはいえ、心のつかえを「呪い」と表現したことはやはり、しっくり来ない。

4.この映画で一番好きなシーンは、民間軍事会社チームリーダーのパーカーが「最初からジョン・キンリーとアーメッドと言ってくれれば、俺が自腹で救出したのに」とキンリーに打ち明けるところだ。ここだけは、ぐっと来た。



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