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2024年02月04日19:18

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【ブックレビュー】すばらしい医学

すばらしい医学
山本健人著
ダイヤモンド社


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 医学を学ぶと、二つの相反する感情を抱く。
 一つは、「人体はいかによくできているか」という感嘆。もう一つは、「人体はいかに弱くて脆いか」という落胆だ。
・・・・・(P342)


 新型コロナパンデミックが社会に与えたダメージにはいろいろな種類があると思います。特に深刻なのは、医学・医療に対する信頼感の低下、あるいは喪失、ではないでしょうか。感染拡大初期には治療方法が確立しておらず、薬もなく、医療関係者が手探りで必死の努力をしているのにも関わらず、多くの命が喪われました。また、初期には感染予防も万全でなく、医療関係者・病院関係者達が危険な状態に置かれました。また、待望のワクチンが副反応を起こし、自然な効果の低下やウイルスの変異によって何度も接種しなければならない、そして有料化、という、過大な期待に沿えないという残念な事態があるのも事実です。そうした中で、ワクチンやマスクや消毒といった対策は無意味だ、有害だ、という声も大きくなっています。私自身は、西洋医学・医療のリスクを承知しつつ利用し、場合によっては漢方薬等の代替医療も併用する、くらいのスタンスですが、世の中には極端な価値観を好む人も多いようです。医学・医療への不信、政治・行政・巨大企業との癒着、といった事を重視して真実に目覚めてしまった、と感じているようです。


 医療ビジネスや権力者やといった世界に汚い面が仮にあったとしても、何千年もかけて進歩してきて、今なお急速に進歩している医学そのものが腐敗しているわけではありません。というわけで、本書を読んで、改めて勉強してみました。著者は京都大学出身、外科、消化器科、内視鏡外科、感染症、がん治療、等、守備範囲の広い現役の医師で、ネットでのインフルエンサーでもあります。

第1章 あなたの体のひみつ
第2章 画期的な薬、精巧な人体
第3章 驚くべき外科医たち
第4章 すごい手術
第5章 人体を脅かすもの

 という章立てで、様々なトピックを、有名な学者から、あまり知られていない医師まで、優しく楽しく読めるように紹介してくれています。


 ちょっとだけ引用。


・・・・・
 一般的にリスクが高いのは、酸素が欠乏しやすい現場作業に従事するケースだ。特に井戸やマンホールの中など、長時間水が滞留する半閉鎖空間では、汚水中の細菌に酸素が消費され、酸素濃度が著しく低くなっていることがある。こういう場所では、たった「一呼吸」で意識を失い、そのまま死に至る事故が起こりうるのだ。
・・・・・(P63)


 まさしく、「人体はいかに弱くて脆いか」の例ですね。


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 心臓の薬がダイナマイトの原料と同じである事実は、何とも奇妙に思えるかもしれない。だが、医学を学べば学ぶほど、こうした現象はむしる自然に思えてくる。人の体は、自然界に存在するありふれた化合物で構成された有機体にすぎないからだ。
・・・・・(P168〜)


 私達人類や動植物が、この星で誕生して、共に進化してきた証拠でもありますね。


・・・・・
 ハンターの常軌を逸した探求心は、性感染症にも及んだ。彼は淋病の感染経路を調べるため、淋病患者の膿を自らのペニスに突き刺して感染が成立することを実証したとされる。他にも、性感染症に関する多くの知識をまとめ、一七八六年、『性病全書』を執筆した。
・・・・・(P228)


 Σ( ̄□ ̄|||) ペニシリンの発見(P134〜)の150年近く前に自分で人体実験をやってたのですか…。



 もちろん西洋の医学・医療には技術的な限界がありますし、治療が効果を発揮しない事もあるかと思います。また、高額な治療費を払えずに治療方法の選択肢が狭くなる事もあります。ですが、病気や不調を自覚した際に、標準的な検査と治療を選ばずに、最初から代替療法や信仰に向かうというのは、誤りではないでしょうか。まして、ワクチンやマスクを利用する他人を小馬鹿にして嘲笑するような行為は愚かだと思います。本書によって、正統的な医学・医療が、なぜ正統的なのか、を理解する人が増えて欲しいと願います。

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