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2024年01月31日23:18

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カメラの外、観客の知らない日常の風景「映画の朝ごはん」

映画やドラマの撮影現場では定番とされている弁当屋「ポパイ」のドキュメンタリー映画です。
・・・こんな映画が公開されていると知っている人、どれくらいいるのでしょうか。
地元の映画館でも一週間限定の公開です。
でも、たまたま予告を観てから、なぜか無性に観たいとずっと思っていたので、あらゆる話題作を尻目に観に行って来ました。

ここ最近は色々疲れる事ばかりで、正直映画に行くのも気が進まない日が多いのです。
1月のレビューも、ほとんど家で観た映画ばかりになってしまいました。
もう、面倒で疲れる映画なんかはウンザリ。
美味しそうなおにぎりが作られる過程や、それをみんなで食べるだけの映画の方が楽しそう。
そんな、割と後ろ向きなメンタルによるチョイスだったかもしれません。

実際観てみると、期待したシーンはたっぷりありましたが、当然それだけって事はありませんでした。
いや、それ以外の要素のあまりに多い事!
このおにぎり、具が何種類入っているの。
しかも、食べきれないくらいの大ボリュームです!

おにぎり二個とおかずと漬物。
「いいじゃないか、こういうのでいいんだよ」と言いたくなるウルトラシンプル弁当がウリのポパイですが、この弁当が非常に人気なのだそうです。
具が大きくて、塩味が強い。
具の種類が多く、おかずと合わせてオーダーメイドできる。
そういったところが、過酷な撮影を行う前に手早く食べる朝食にはベストマッチしたのかもしれません。

当然、食べたくなります。
うらやましい事に、実際このお弁当が食べられる上映会もあったのだとか。
賭けても良いですが、この映画を観た後はおにぎりを食べたくなります。
僕もコンビニでおにぎり弁当を食べました。
なんだ、これが具か?
てっぺんに塗ってあるだけじゃないか!
とまあガッカリしてしまったものの、美味しく頂いたのでした。

さて、この映画ではこの弁当屋の社長のみならず、名物店員の紹介まで丁寧にやるのですが、これだけではありません。
映画の現場で食事の発注等をする制作部の姿についても、じっくりと描かれるのです。
映画のメイキング等でも絶対に映らない、本当に現場にいる人以外は目にする事の無い風景。
これもまた、この映画の見所の一つです。

寝る間も食べる間も無く忙しいのに、映画のクリエイティブな部分には一切係わらない、本当に地味な仕事です。
このパートの主役となる青年は、「ゼイリブ」等のジョン・カーペンターが大好きな、地味な男です。
映画の中ですら、誰も彼を誉めないのが脅威です。

彼とコンビを組むのは、ボヤキとペシミスティックなジョークを欠かさないおじさん。
もうこの2人、どこの職場にもいそうで、他人とは思えません。
全然有能な感じではない。
ただ辛いだけの日々を、なんとなくやり過ごせるスキルだけで続けている感じです。
自分もここまでではないかもしれませんが、辛い事だけが無限に続き、確実に何かが悪くだけなっていく職場で働く身です。
たまらない気持ちになってきます。

弁当屋ポパイだって、苦しい職場です。
コロナ禍で注文が減り、回復したと思ったら原料高で、痛恨の値上げ。
パワハラやいじめのあった過去も透けてきます。
みんなつらい。
これが日本の労働環境のスタンダードなのか・・・。
全然ホッコリする映画なんかじゃありませんよ!

さらなる見所は、有名監督へのインタビューです。
弁当のお話はほんのさわりで、昔の撮影エピソードや裏話等がたっぷり聞けるので、邦画ファンには必見です。
ピンク映画においては、ポパイに弁当を注文する事すら贅沢。
下には下があるものです。
個人的には、黒沢清監督がVシネ時代を語るところが面白かったです。

観ていて、あれ?と思いました。
なんか長いな。
この映画、全然終わらないぞ・・・。
てっきり90分くらいだと思っていたので、終わった時間にビックリしました。
確認したら、なんと131分!
2時間越えてる!
とんだ大作映画じゃねえか!

もうちょっと、いや30分くらいは短くした方が良いとは思いますが、本当に知らない、見た事のない風景ばかりが見られる映画ですので、機会のある時には観て欲しいと思います。
予算の話なんかも出てきて、非常に世知辛い内容ではありますが。
映画が好きな人にとっては、今後見方が変わる可能性もあるでしょう。
駄作の影にも苦労人あり、なのです。

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