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2024年01月19日13:59

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美術大学・専門学校の卒業制作展のお話

 こちらに限らず,沢山の卒業制作展にお邪魔したいと思っています。

 2024(令和6)年も,卒業制作展の季節がやってきました。美術大学や専門学校で学んだ学生さんたちの研鑽の成果をたくさん鑑賞出来る,僕にとっては非常に楽しい季節の到来です。世の中には「学生さんはまだ修行中の身だ。彼らの作品というのはそれほどハイレベルなのか」と考える方もいらっしゃらないでもありませんが,少なくとも日本において,端的に言えばそれは誤りです。そもそも日本で暮らす者たちは中学・高校でも美術をかなりの程度に学んでおり,大学入学時点では全くの素人である状態から学び始める法学や医学などとは事情が全く異なります。しかも日本における美術大学や専門学校というのは入学試験において相当の技術が要求され,高い技術の持ち主でなければ入学することすら叶いません。当然ながらその入試を突破するために特別の研鑽を積んでいて,学生さんではあっても入学時点で既にかなりのレベルの専門家なのです。そしてこれは常識的にも判ることですが,卒業制作といえば大学や専門学校で更に高度の技術や理論を習得した方たちが渾身の力を込めて一世一代の傑作をものにしようと長い時間を掛けて腕によりを掛けた作品を制作するのですから,その殆どは大変な傑作です。仮にそうした諸作品が並ぶ卒業制作展が「優れた作品の揃う場でない」とすれば,凡そ世の中に傑作の揃う展覧会などというものは存在しないという話になってしまうに違いありません。

 こちらで紹介されているのは2024(令和6)年1月28日から2月2日まで開催される東京藝術大学美術学部と同大学大学院美術研究科との卒業・修了作品展です。会場は学部の展覧会が上野の東京都美術館・大学院が東京藝術大学の構内となっています。東京の美術大学というのはどういう訳か都内の西側に設置されていることが多く学内展はもとより学外展も殆どが都内西側で開催されているので,僕のような都内東側に住んでいる者にとってはこちらの展覧会は実に有り難い。東京藝術大学は極めて大規模な美術大学で洋画・日本画・彫刻・工芸・建築などなど実に様々な分野を専攻するコースが存在するため,この展覧会にお邪魔すればそれら各ジャンルを専攻した学生さんによるありとあらゆるジャンルの美術作品について鑑賞することが叶います。また6日間という比較的長い開催期間が確保されているので,本腰を構えてお邪魔することで相当数の作品を鑑賞することも叶います。美術のお好きな方であれば是非とも足を向けるべき展覧会であると言えるのではないか。

 また,こちらの展覧会で若い美術家たちによる優れた作品に関心を持ったならば,是非それ以外の大学や専門学校の学生さんたちの卒業制作をも鑑賞してみるべきでしょう。美術大学や専門学校の学生さんたちの卒業制作はいずれも彼らの高い技術と渾身の力の籠った傑作揃いですが,学校ごとに「カラー」のようなものがあり,他学の卒業制作を観ると「東京藝術大学の学生さんの作品とはまた一味違った雰囲気を備えている作品が多いな」ということを感じさせられます。そういった展覧会にも足を向けて共通点や相違点について把握して「自分にとってはどんな作品が好ましく感じられるか」と考察してみるのはとても勉強になると,僕は自らの経験を通じて実感しています。具体的な学内・学外展の日程については各美術大学・専門学校のホームページに紹介されていますので,皆様も是非「次のお休みは何処の大学にお邪魔しようかな」などと考えながら予定を立ててみるとよろしいと思います。東京藝術大学ほど長期間かつ大規模な学内展を実施している美術大学・専門学校はなかなか存在しませんが,必ず良い展覧会に巡り合うことが叶うでしょう。
 このように申し上げても「それはちょっと面倒だなぁ」という方もいらっしゃるかもしれませんね。そういう方には僕としては「東京五美術大学連合卒業・修了制作展」の鑑賞をお薦めしたいところです。こちらは東京・六本木の国立新美術館で毎年開催されている多摩美術大学・武蔵野美術大学・女子美術大学・東京造形大学・日本大学芸術学部による共同の卒業制作展覧会で,展示されるのは洋画・日本画・版画・彫刻などに限られる上に武蔵野美術大学通信制と女子美術大学短期大学については全面的に展示対象外といった問題もありますが,それでも莫大な作品が並び実に見応えのある展覧会です。2024(令和6)年は2月23日〜3月3日(2月27日は休館)とかなり長期間にわたって開催されるので,忙しい方でも予定を合わせることは難しくないでしょう。

 現代における美術とはどのようなものか,また近未来の美術情勢はどのようなものになっていくのか,それは若手美術家たちが今後どのような活動を行っていくかに大きく掛かっているのは言うまでもありません。それらの点について考察したい方は,是非こうした卒業制作展に足を運ぶべきでしょう。或いは美術の今後については感心を持たずとも,優れた美術作品に触れるにも卒業制作展は最高の場です。「その通りだ」とお感じの方も「本当かな」とお疑いの方も,是非あちこちの卒業制作展に足を向けて頂きたい。僕はそのように願っていますし,僕自身も足を向けたいと思っています。



第72回東京藝術大学卒業・修了作品展
https://artexhibition.jp/exhibitions/20240107-AEJ1792021/
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