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2024年01月10日22:19

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これは本当にヨーロッパ風のハヤシライスですね(๑˃̵ᴗ˂̵)

　これはかなりヨーロッパ風に寄せた，文字どおりの意味での｢洋食＝西洋料理｣と言えそうなハヤシライスですね(๑˃̵ᴗ˂̵)

　カレーは日本の国民食とも称されます。僕の好きなインドカレー屋さんではインドご出身のオーナーシェフが腕を振るっていて大変な人気のお店ですが，来日前には在日インド人を主要顧客にする予定だったのだそうです。｢日本人もカレー好きだ｣ということ自体はインドでも知られていて，周囲の方たちと｢日本でお店をやるからには，日本人のお客さんも来てくれると良いね｣などとはお話していたそうですが，実際に日本でお店を開いたらインド人よりも遥かに大勢の日本人客が押し寄せ｢まさか日本人が，これほどのカレー大好き人間だったとは!(｡･о･｡)!｣と非常に驚いたというお話を笑いながら聴かせて下さいました(◍•ᴗ•◍)
　とはいえ，たしかにカレーは日本人に大変好まれる国民食ではあるものの｢同じ鍋で煮込んだカレーを皆で一緒に食べる｣というのは意外と難しい。小さな子はあまりに辛いと食べられませんし，かといって全く辛くない子供向けのカレーを大人に提供しても何やら気が抜けているようであまり満足して貰えません。実際に我が家でも母は，僕が辛いカレーを食べられるようになるまでの間は自分たち向けと僕向けと２つのカレーを作っていたほどです。

　一方，ハヤシライスというのはカレーライスと外見こそ似ているものの全く辛みがありませんから，大人も子供も同じ鍋で煮込んだものを一緒に頂くことが可能です。ハヤシライスについても日本人で嫌いな人というのは殆ど居ないのですから，むしろ誰もが同じものを美味しく頂くことの出来るこちらこそが真の国民食に相応しいのではないかなどと僕は考えているほどです。
　そんなハヤシライスですが，実は明らかに西洋の影響を受けた洋食でありながら，元になった西洋料理があまり判然としない由来不詳のお料理です。｢イギリスやアメリカの料理が発祥なのではないか｣とも言われますが，たしかに英米には薄切り牛肉を細かく刻んだ野菜と煮込むハッシュドビーフというお料理が存在するものの，それにはデミグラスソースは一切使われていません。或いは西洋料理の素材や味付け・調理法をマスターした日本人が新たに作り出したお料理なのかもしれません。日本文学の世界に｢日本漢文｣というものがあるのと同様に。日本漢文というのは｢漢文｣の名前のとおり古代中国語で執筆された文章や詩ではありますが，執筆者は中国人ではなく古代中国語をマスターした日本人です。或いは歌舞伎における｢茨木｣とも共通する存在かもしれませんね。歌舞伎には能・狂言を原作にしたのみか演出様式まで似せた｢松羽目物｣というジャンルがあり，それらの殆どは当然ながら能や狂言に原作を持ちますが，先述の｢茨木｣は松羽目物の一つでありながら原作が存在しません。能・狂言の様式をマスターした歌舞伎作者がゼロから作り上げた新作です。ハヤシライスもまた食文化の世界における日本漢文であり｢茨木｣なのだというのは，一つの有力な仮説と言えるでしょう。

　今回，そのハヤシライスをルーを使わず作るレシピに出会い，一読して僕は思わず｢本格的だなぁ｣と強く感じさせられてしまいました。｢元になった西洋料理が存在しないのなら『本格』というのはおかしいのでは?(｡･о･｡)?｣とお感じの方もいらっしゃるでしょうか。両者は矛盾するものではありません。日本漢文でも文法や単語の間違いは論外として，中国の知識人が読んで語彙の使い方や言い回しなどに違和感だらけの作品もあれば，全く違和感を感じさせず｢本当に中国人ではなく日本人が書いたのか｣と彼らを唸らせるような作品もあるのと同じです。こちらのハヤシライスもまた，ヨーロッパ人が賞味して何の違和感も覚えないほど巧みに西洋料理の素材や味付け・調理法を使いこなしていると僕は感じてしまいます。
　まず下拵え。牛切り落とし肉を２㎝長に切って塩・胡椒・薄力粉をまぶします。玉葱は半分に切って半分は更に薄切りにし，残り半分は１㎝幅に切ります。そして水煮のマッシュルームは水気を切っておきます。その下拵えが終わったらフライパンにバターを入れて中火で溶かし，牛肉・１㎝幅の玉葱・マッシュルームを入れて強火で２分炒めて取り出します。そして空になったフライパンに再度バターを加え，薄切りの玉葱を強めの中火で４分炒めたら微塵切りの大蒜を加えて更に炒め，香りが出たら薄力粉を加えて弱火で１分炒めます。粉っぽさが無くなったら赤ワインを加えて強めの中火で５分煮て，半量になるまで煮詰まったらケチャップ・中濃ソース・蜂蜜・顆粒スープの素・水を加えて更に事前に取り出しておいた，牛肉・１㎝幅の玉葱・マッシュルームを入れ，中火で５分煮たら塩とバターを加えて溶けたら完成です。ご飯とともにお皿に盛り付けるのですが，そのご飯も事前にバターと刻みパセリを入れてよく混ぜたものを使うと更に美味しいと註記されています。

　赤ワインをしっかりと活かしたまるでビーフシチューのようなハヤシライス，とても美味しそうですね