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2024年01月05日07:50

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「侵入者たちの晩餐」

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カリズムが脚本を書いた新春スペシャルドラマ『侵入者たちの晩餐』を録画していたので観た。昨年のバカリズム脚本ドラマ『ブラッシュアップライフ』が意表をつくアイデアととんでもない展開の面白さで、「お笑いのセンスだけではなく、物語の構成力がずば抜けて高い」と大いに感心した。結末を知った上で何度も繰り返して観ると、観るたびに物語の緻密さがわかる。「バカリズムは天才だ」と思った。新春番組はわざわざ「バカリズム脚本のサスペンスドラマ」と前面に打ち出して宣伝しているのだから、これはもう素晴らしいドラマに仕上がっているに違いない。期待感は否応なく高まった。

 家事代行サービス会社「スレーヌ」で働く田中亜希子(菊地凛子)は優秀な清掃担当だ。派遣された個人の家の特徴を敏感に読み取り、その家庭に応じた完璧な清掃サービスを行っている。彼女は時折、派遣先の個人宅で、同じ会社に勤める小川恵(平岩紙)と遭遇する。恵はこれまた優秀な調理サービス担当で、派遣先の冷蔵庫内の食材を使って、どんな料理でも作ってしまう「家政婦の志麻さん」のようなプロだった。現場での私語は禁止となっているため、彼女たちは顔見知りと言う以上の関係ではなかったが、ある時、駅への帰り道に「スレーヌ」社長の藤崎奈津美(白石麻衣)に対する愚痴で盛り上がってしまう。せっかくだからと、喫茶店でさらに会社への不満を語り合っているうち、恵から「社長は脱税をして、自宅に数億円のタンス預金を隠しているらしい」との情報を聞かされる。社長の藤崎は元グラビアアイドルで、引退後に起業し、芸能界の伝手を有効に使い、瞬く間に会社を大きくして業績は良かった。自分たちが安い給料で、他の家事代行サービス会社以上の高い要求を課せられているのだから、社長は絶対に脱税しているのは間違いない、と二人の会話はさらに過熱する。社長宅に侵入してタンス預金を盗み出そうとの計画となり、「どうせ悪いことをして貯めたお金なんだから、盗まれても警察には届けないはずだ」「仮にタンス預金が3億円あったら、2億円を赤十字みたいなところを寄付して、1億円を山分けしよう」と話がまとまった。社長は週末から一週間、ハワイ旅行に出かけて自宅は留守になる。恵のヨガ教室の友人で、犯罪ドラマファンの江藤香奈枝(吉田羊)がいれば何かと安心だからと三人で社長宅に侵入することになったのだが・・・。

 この先、少しだけ内容に触れます。

















やはり、バカリズムは天才だ。

 『ブラッシュアップライフ』で幼稚園児、小学生、中高生、大学生、社会人と成長していく主人公たちの年代ごとの会話(女子会ネタ)にリアリティがあったのと同様、今回も女性達の会話は面白く、「いかにも言いそうなセリフ」に溢れていた。『ブラッシュアップライフ』で様々な職業についた主人公の職場を見事に描いて見せたバカリズムが、『侵入者たちの晩餐』では家事代行サービスの「あるある」を面白おかしく描いたのは流石だ。さらに、三人が侵入した社長宅で、予想外の展開に次々と見舞われるアイデアが凄い。先読みを全く許さない、奇想天外でスピーディーな展開はバカリズムならではだろう。感心してしまった。「バツイチの普通のおばさん」を演じた菊地凛子はさすがの巧さ。彼女だけがシリアスな雰囲気を醸し出している。

 ただし、サスペンスドラマとして面白いかどうかは別だ。たしかに、いくつかのシーンでは笑ってしまった。しかし、あまりに「偶然に次ぐ偶然に依存する展開」に途中でシラケたのは事実。視点を変えて、同じ設定を裏おもて、何度も繰り返して見せるのは『ブラッシュアップライフ』のスタイルで既視感ありありだし、どんでん返し・どんでん返しで畳みかけるのも、明らかに狙い過ぎでやり過ぎ。これじゃドラマではなく、コントだよ。さんざん笑わせた挙句、最後はホロリと感動させて終わるのがドラマとしては正解だったと思う。脱税を疑われて自宅に侵入される社長を演じた白石麻衣の「善人ぶり」がとても良かっただけに、あのオチはないよ。構成がいかに緻密で見事だったにしろ、あのオチではドタバタコメディでしかない。ドタバタコメディとしては面白いのだから、本当にもったいないと思う。
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