１２月２２日（金）一昨年２０２１年６月公開の外国映画「Ｍｒ.ノーバディ」を観る。
「Ｍｒ.ノーバディ」（イリヤ・ナイシュラー）
いかにも「ジョン・ウィック」シリーズの脚本家らしいガンアクションと格闘アクションの連打でバッタバッタと殺しまくるが、殺られるのは極悪非道なロシアンマフィアだから爽快で後味は悪くない。強盗も殴れない小市民の工員ボブ・オデンカークが、妻からも距離を取られ息子からもリイペクトされないことから、暴力衝動に火がつきいきがかりでロシアンマフィアとの抗争に巻き込まれてしまうが、その強いこと強いこと。実は彼の前身は…となるのだが、父親のクリストファー・ロイドとのコンビも含めて荒唐無稽で楽しき限りだ。オデンカークが一見は平凡なおっさんで巨躯でもないことから、格闘は圧倒的強さとは言い難いのが、リーアム・ニーソンのような絶大なる安心感が薄く、ハラハラさせるのも良い。（まあまあ）
１２月２４日（日）昨年２０２２年１２月公開の外国映画「ホット・シート」を観る。
「ホット・シート」（ジェームズ・カレン・プレザック）
元ハッカーだが今は足を洗って家族との平穏な暮らしを望んでいるケヴィン・ディロンだったが、職場で１人でパソコンの前に向かっていたら、椅子に爆弾を仕掛けたとの電話があり、立つことが不可能になる。その状態で重要金融機関で１時間限定の難しいハッキングを強要されてしまう。事態を察知して密かに駆け付ける爆破物処理班がメル・ギブソン。ディロンは犯人とも誤解され狙撃班の標的にもなり、この緊迫感の中で９９分一気に突っ走る。以前、電話ボックスから出られなくなるサスペンスで構成された｢フォーン・ブース｣なる傑作もあったが、私はこういうコンパクトな仕掛けの映画が大好きである。終盤の意外な犯人出現のドンデン返しも素晴らしい。「のむコレ６」の枠で細々で公開されたとはいえ、こういう小粋な小品にキネ旬ベストテンで１点も入っていないのは観る眼のある人がいなくなったのかなあとも思う。同特集でギブソン＝プレザックの出演＝監督コンビの「ドント・サレンダー」も、出来栄えはイマイチだが設定はやや洒落た小粋な映画だったが、細々と公開された作品に意外な拾い物があるようだ。（よかった。ベストテン級）
１２月２５日（月）昨年の令和４年３月公開の日本映画「余命１０年」を観る。
「余命１０年」（藤井道人）
難病で余命１０年を宣告された小松菜奈が、中学の同窓会で自分の居場所を失い自殺未遂に至る坂口健太郎と出会い、いつしか惹かれ合う。難病＋キラキラ青春映画のルーチンでまたかいなとウンザリさせる設定だが、そこは「新聞記者」「ヤクザと家族」の藤井道人、けっしてあざとくなく友人・家族の描写も含めて説得力を持って描いていく。しかし、私も人生の中で余命を感じさせた親族に何人か遭遇しており、そこからの類推で感じたことで、そういう想いは百人百様であり、だから何なの？といった気分は否めない。（まあまあ）
１２月２６日（火）に昨年の令和４年４月公開の日本映画「ＴＨＥ３名様 リモートだけじゃ無理じゃね？」を観る。
「ＴＨＥ３名様 リモートだけじゃ無理じゃね？」（森谷雄）
深夜ファミレスでゆる〜い会話を繰り広げる３人のフリーターのアラフォー男たち。完全にヴァラエティ番組のノリだが、それもその筈でＤＶＤシリーズ脱力コメディの１２年ぶりのスクリーン復活だそうだ。軽ネタだが案外に面白く私は嫌いじゃないが、私の求めている映画的魅惑とは違う気もした。（よかった）
映画の変質を最初に予感したのは湯布院映画祭で出遭った平成１１年作品「グループ魂のでんきまむし」だった。当時としては異例のビデオ作品スクリーン上映で、この軽いノリを面白く観たのだが、どこか映画の基本的魅惑とは違う感じがした。
私か観てきた映画というものは、キチンとした照明・撮影・美術でプロの叩き上げた映像を魅せてくれるものだった。「グループ魂のでんきまむし」はそれと全く異質で、失礼ながらある意味ホームビデオに近いラフな映像の連続と感じたが、ただ題材の軽やかさと相まってそれなりに私は楽しく観られた。
２１世紀の映画はビデオ作品が当たり前になった。いや、フィルム作品の方が貴重になってきた。そして「グループ魂のでんきまむし」のような軽いノリの映画もどんどん増えてきた。
私は映画斜陽の真っ只中で、ＴＶに押しまくられ日本映画滅亡まで囁かれていた１９７０年代の、映画評論家の井沢淳さんの記事を今でも思い出す。「映画は決して無くならないだろう」とのささやかな希望を語りながら、来たるビデオ時代も透視し「映画を本のように所有する時代の到来」を語っていた。そして、「それを見届けることは叶わない年齢ではあるが、もはやそれは我々の考えていた映画とは別物かもしれない」とも語っていた。
私が晩年を迎えた２１世紀の現在、もはや映像表現はＴＶ放映・ＤＶＤ・ネット配信・ＳＮＳｅｔｃと多様化し、劇場芸術としての映画はその一部に過ぎない。その意味で、それらは私の言うところの映画は選ばれたプロが練りに練り上げた撮影所システムが創る映像だが、現代映画はもはや別物ではないだろうか。
私自身にしても映画館を飛び回る健康寿命は終焉し、自宅リハビリ療養の障害者となって、映画観賞といえば膨大なＣＳ放送からセレクト録画しながら図書館のように楽しんでいる。それでも観賞記録は劇場公開年月別に整理し、観賞にあたってはモニター映像を劇場スクリ―ンに「スイッチ」して観ている現状で、昔ながらの映画ファンの性から抜けられない。
そういう人はまだ他にもいるだろうが、劇場観賞を映画好き原点とする人はやがて死に絶えるその時、映画は時代・社会の中でどんな存在になっていくのだろう。
前回日記から年末までに観た映画は次の１３本。
「Ｍｒ.ノーバディ」「フィフス・ウェイブ」「愛情の決算」
「劇場版 ほんとうにあった怖い話 ２０１６」
「難波金融伝 ミナミの帝王 劇場版�将供ゝ嫖樵蠡魁�
「劇場版 ほんとうにあった怖い話２０１７」「ホット・シート」
「結婚前夜〜マリッジブルー〜」「余命１０年」
「ＴＨＥ３名様 リモートだけじゃ無理じゃね？」「そらのレストラン」
「花の恋人たち」「劇場版 ほんとうにあった怖い話２０１８」
今年もとにかく終わる。自宅リハビリ療養生活の身で、暇だけは掃いて捨てる程あるのでＪ：ＣＯＭ基本チャンネルを中心にちよっと気になる映画は、古今東西邦洋を問わす片っ端から録画して観まくっているので、本数だけはやたら消化している。映画というものは観れば観る程に関心が深まるもので退屈はしない。
こんな調子て来たる年も日記を続けていくことになると思いますので、来年もよろしくお願いいたします。みなさま、どうぞ良いお年をお迎えください。
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