この映画もかなり前から期待していました!
少し前に観た「スマイル」が素晴らしかったので、有名俳優もいない低予算映画である本作がアメリカで大ヒット(A24配給では最大のヒットだそう)と聞いて、これも相当面白いのでは、と思ったのです。
純粋な面白さが口コミで伝わって、ヒットになったのでしょうから。
ホラー映画はやっぱり、フレッシュな感性が暴発した様なものが最高です。
すでに地位のある大監督と有名俳優による大作よりも、事故的に発生したかの様な、どこの馬の骨とも知れない人が作った作品の方が観たいと思います。
本作の監督は、なんと双子のユーチューバー。
そんな奴らにマトモな映画が撮れるの?とバカにする人もいると思いますが、それもなんだか面白そうじゃないですか。
本作はいわゆる「霊が乗り移る」系の、実によくあるタイプの作品ですが、「若者がそれを快楽目的に行う」という点が実に新しい。
ドラッグと降霊術を同等に扱うという発想は、若者ならではです。
日本では「コックリさん」という有名な降霊遊びがあるので、割と馴染みやすいのではないでしょうか。
ただ、序盤のパリピがワーキャー言っている部分は、正直予想の範囲内で、そんなに面白くは無いです。
予告で大体見せているし。
ここから安易な展開になれば、その辺に掃いて捨てるほどあるライト・ホラーの一つに過ぎません。
この映画、どんどん面白くなるのです。
「こんなものか」と舐めてきたところで、「ウワ〜!」と思う様なショック&暴力シーンが突発し、眠気が吹っ飛びます。
「痛い」シーンや「キモい」シーンが効果的に挟まれてくるのです。
そして、やはり終盤の展開がこの映画のキモでしょう。
なんて言うか、もう誰もこの暴走列車を止められないのか、という絶望的な気分になります。
ティーン向けホラーだろ、と思っていた序盤からは想像が出来ない様な、凄まじく容赦の無い事が次々と起きていくのです。
そして、ラストは「ヨッ!そうでなくっちゃ」と声をかけたくなるオチでスパッと終わります。
これで良い。
色々謎が残りますが、それで良いのです。
これはあくまで主人公のパーソナルな物語なのだから。
「スマイル」と同じ恐怖を描いていたと思います。
それは、本当に恐ろしいものは自分の内にあるという事です。
自分のやろうとしている事が正しいのか?
覚えているものが正しいのか?
見えているものが正しいのか?
信じている事が正しいのか。
・・・もしかしたら、最悪の選択をしてしまったのでは。
2つの作品が、人間の心の脆弱さを徹底的に描くという点で共通しているのは、それが今一番誰にも共通する恐怖だからでしょう。
自分のしでかしてしまった恐ろしい間違いを信じられない(信じたくない)時に出番となるのが「悪魔」というやつです。
自分は邪悪な何かに利用されてしまったのだ、と信じるために利用するのが悪魔だとしたら、「スマイル」も本作も「エクソシスト」の正当な継承者なのでしょう。
ともかく、こんなに安く作れて滅法面白い映画があるなら、「エクソシスト」のリメイクなんてもう必要ないと思います(観ていませんが)。
あの映画の呪いは、すでに様々な別の映画として感染しています。
そして、今流行している、まだワクチンの開発されていない恐怖の一つが本作です。
是非、劇場で感染してみてください。
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