１１月９日（木）に昨年２０２２年５月公開の外国映画「ワン・セカンド 永遠の２４フレーム」を観る。
「ワン・セカンド 永遠の２４フレーム」（チャン・イーモウ）
７０年代文化大革命の真っ盛りの頃の、農村巡回上映会を舞台にしたチャン・イーモウのノスタルジックな愛おしさに溢れた一篇。反造反派として収容所送りにされ妻子に縁を切られた主人公が、手紙で知った僅か１秒アップになったニュースフィルムの娘の映像を観たいがために逃亡し、その映画を追い続ける。ここにイーモウのフィルムへの映画愛が溢れ出し、汚れたフィルムの復元の困難さ・映画の一部の繰り返し上映の複雑なテクニック・映写技師の村の名士としての存在感・窓枠やスクリーンの裏側にまでひしめく村人の熱気・１コマの持つ写真としての重みｅｔｃと、私としても校庭上映会を思い出す懐かしの風景が満載である。フィルムをなぜか盗もうとする少女が現れ、成程こんな変則的活用もあるんだなと感心させられるのは、物理的存在のフィルムならではだと感じ入った。文化大革命収束後、無罪放免となった主人公とひょんな関わりとなったこの少女との後日談も、爽やかな後味になる。ただ、研修機関で１６ｍｍフィルム映写経験に当たった私や、フィルム時代の映画作家イーモウのように、なんでも可能になったディジタル映画時代になった現代の若者に、このノスタルジックな良さが解かるかは疑問だ。そもそも映画は写真の連続のフィルムだったことへの解説が必要かもしれない。（よかった）
１１月１０日（金）に昨年２０２２年２月公開の外国映画「ボブという名の猫２ 幸せのギフト」を観る。
「ボブという名の猫２ 幸せのギフト」（チャールズ・マーティン・スミス）
ヤク漬けのストリートミュージシャンが愛猫を通じて立ち直る感動実話「ボブという名の猫」の続編だ。彼は今や体験談がベストセラーともなって名士である。そんな彼がクリスマスの夜に自暴自棄になった孤独な若者へ、過去のクリスマスの体験談を話し聞かせる。それはまだ貧しかった時代、動物福祉担当職員に虐待を疑われるが、多くの人のサポートで貧しくともペットとの大事な関係が理解されて、その縁で新たな職も得るとの人の心が信じに足るハッピーエンドストーリーだった。現在のハッピーな時点からの回想だから、結果は明白で他愛ないと言えばそれまでだが、要はボブという名の人の肩に乗っかりおとなしくしているニャンコの愛らしさが総てである。「アメリカの夜」でも見られたが、人の言うことを全然聞かない猫にこれだけの芝居をさせたのは、ボブという実在の個性的ニャンコがいたにせよ驚異だ。（まあまあ）
１１月１１日（土）に一昨年２０２１年１０月公開の日本映画「劇場版 ルパンの娘」を観る。
「劇場版 ルパンの娘」（武内英樹）
代々の泥棒一家の娘と代々の警察一家の息子が恋に落ちて結婚し、歳のせいもあって父親は引退を決意、最後の大仕事として海外の名城からの王冠盗みを画策する。まあ、そんなストーリー仕立てはどうでもよく、要はオールスター、派手な架空の国に見立てた海外ロケ、ミュージカルタッチの挿入など、大騒ぎのオバカ映画である。快作「テルマエ・ロマエ」「翔んで埼玉」の武内英樹ならではのタッチで、私としてはキライじゃないワールドだが、今回はＴＶドラマ未見の者には一見さんお断りのエピソードやギャグの連発で、訳の判らぬ意味不明のタイムパラドックスもピンと来なかった。（あまりよくなかった）
同日１１日（土）に昨年２０２２年７月公開の日本映画「ビリーバーズ」を観る。
「ビリーバーズ」（城定秀夫）
「ニコニコ人生センター」なる宗教団体が所有する無人島に、３人の男女が汚れを落とす修行プログラムの実験として、教祖の指令で世間から隔離された共同生活を始めさせられる。男は「議長」と「オペレーター」、女は「副議長」と呼び合いお互いの名前は知らない。食料は定期的に運び込まれる質素な物以外は、汚れているとのことで口にできない禁欲生活だ。この象徴的な空間が平穏で居続けられるはずもなく、次第に狂気の欲望空間に変じていく。様々なアナロジーを連想させ、ピンク映画出身の城定秀夫監督作品（脚本も）らしい性の狂宴も交えて、興味深く展開していき、タイプは全く異なるがピンク初期で若松孝二の大傑作密室劇「胎児が密猟する時」の凝縮度に匹敵する。しかし、才人の城定はそこに留まってはいない。終盤は主人公達の過去に迫り社会的スケールが一気に拡がる。そこにはオウム真理教から統一教会や連合赤軍やアメリカでの人民寺院集団自殺事件にまで通底するカルト集団の深層に迫って行く凄みがあった。原作コミックはオウムやノストラダムス影響下にあった世紀末作品だが、ここまで２１世紀的に仕上げた才人・城定はさすがだ。（よかった。ベストテン級）
１１月１２日（日）に昨年２０２２年４月公開の日本映画「ホリック ｘｘｘＨＯＬｉＣ」を観る。
「ホリック ｘｘｘＨＯＬｉＣ」（蜷川実花）
大ヒットコミックの映画化だそうだが、蜷川実花特有の「さくらん」「ヘルタースケルター」同様の絢爛たるヴイジュアルは悪くない。しかし、今回も人の心の闇に寄り憑く「アヤカシ」が見える高校生が、人の運命を決めるのは自分の意志だとの結論に辿り着くといった内容の薄っぺらさは相変わらず。この落差が蜷川実花らしいと割り切って味わえばそれまでだが…。（まあまあ）
１１月１４日（火）に一昨年２０２１年９月公開の日本映画「科捜研の女 劇場版」を観る。
「科捜研の女 劇場版」（兼崎涼介）
科学捜査研究所の法医担当女性を主人公に凶悪犯罪を追い詰めていく映画的な素材を、原作モノでなく映像オリジナルで創造したのがまず素晴らしい。しかし、これは一朝一夕に仕上げられた物ではなく、２０年余のＴＶドラマシリーズの積み上げがあってこそだ。（その意味では映画的よりもＴＶ的かもしれない）ヒロインの過去に関係したキャラの絢爛たるオールスター登場の連続で、それぞれが事件解決の転換点になる安易さは無いでもないが、どれも各キャラとの人間関係と過去のエピソードと鮮やかに連動させており、シリーズ初見の私が観ても「一見さんお断り」になっていないコンパクトな創りが巧みだ。捜査過程は組織の壁に翻弄され、人の為になるかもしれぬ医学もマスコミ報道に翻弄されるあたり、２１世紀の混沌に迫っているあたりが鋭い。（よかった。ベストテン級）
１１月１６日（木）に一昨年２０２１年７月公開のキネ旬ベストテン外国映画第１０位「少年の君」を観る。
「少年の君」（デレク・ツァン）
香港でも日本に引けを取らない受験戦争をメインに、金持ちは勿論、むしろ母子家庭の貧乏人こそが成り上がろうとの、家族の数々が描かれると共に、そこから発生する妬みやいじめが多層的に展開されていく堂々１３５分の香港アカデミー８冠・米アカデミー国際賞ノミネートの巨編だ。ただ、題材的に気の滅入る内容ばかりで、私はもう一つノレなかったが、ふとした出会いのいじめられ少女と親の縁に薄い少年との切ない交情には、かなりジンときた。（まあまあ）
前回日記から１８日（土）までに観た映画は次の１９本。
「難波金融伝 ミナミの帝王 劇場版�� �察．廛薀ぅ鼻�
「ワン・セカンド 永遠の２４フレーム」「ＣＯＰ ＣＡＲ／コップ・カー」
「ボブという名の猫２ 幸せのギフト」
「難波金融伝 ミナミの帝王 スペシャル劇場版 ローンシャーク…追い込み」
「劇場版 ルパンの娘」「ビリーバーズ」「ザ・バウンサー」
「ホリック ｘｘｘＨＯＬｉＣ」「シティーハンター 百万ドルの陰謀」
「プリキュアオールスターズ Ｎｅｗ Ｓｔａｇｅ３ 永遠のともだち」
「科捜研の女 劇場版」「深夜カフェのピエール」「われらが背きし者」「少年の君」
「野性の葦」「着ながし奉行」「ゲットバック」「青い真珠」
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