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2023年09月14日20:06

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「絶対映画」の一つの到達点、「ケイコ 目を澄ませて」。

 9月6日(水)に昨年2022年3月公開の外国映画「ヴォイジャー」を観る。

「ヴォイジャー」(ニール・バーガー)
2063年、地球は温暖化の果てに人類居住が困難になりつつあり、航行期間86年先にある可能性を秘めた惑星に探査隊派遣を試みることにする。乗組員は大人の指揮官一人に、人口培養された優秀遺伝子を持つ子供達で、目的地到達は孫の世代だ。性欲は投薬で抑制され、人工培養で子孫を増やす計画だ。しかし、成長した二人の青年がその計画に気付き、薬を廃棄して投薬拒否。性欲と共に人の獣性も目覚めそれが拡大して、宇宙船内は混沌たる混乱に陥っていく。何ともセンスオブワンダーに溢れた設定だったが、良かったのはそこまで。その後は密室宇宙船内の平凡なアクションに堕していく。人の理性と獣性のせめぎ合いは理性の勝利となり、プロジェクトは形を変えて成功を納め後味は悪くないが、理性が勝つならそもそも地球環境破壊もなかろうにとの、SFロジックの自己矛盾は感心できない。(あまりよくなかった)

 9月7日(木)に昨年2022年7月公開の外国映画「X エックス」を観る。

「X エックス」(タイ・ウェスト)
舞台は1970年代、テキサス片田舎の老夫婦の住む農場に、ポルノまがいの意欲的自主映画の撮影場所を提供されて訪れた若い3組男女を襲う恐怖の一夜を追うスプラッタホラー。私の趣味とは程遠く、もう21世紀になって今さらこんなのいい加減にしてよって感じなのだが、狙いは懐かしホラー再現みたいだから、文句を言っても致し方ない。タランティーノ好みの「グラインドハウス」の味わいもあり、往年の美女ダンサーの夫が心臓を病みSEX不能の欲求不満がホラーの原点で、そこに鰐を絡ませるなど工夫は数々あれど、三部作(予定)第1弾構想にする程の(キネ旬封切映画一覧表の「ここが見どころ」による)ネタかどうかは疑問だ。(あまりよくなかった)

 9月8日(金)に今年の令和5年1月公開の日本映画「遊撃/映画監督 中島貞夫」を観る。

「遊撃/映画監督 中島貞夫」(松原龍弥)
20年ぶり中島貞夫の劇映画監督作「多十郎殉愛記」のメイキングを主軸に、映画作家の中島貞夫を回顧する。政治の世界からドロップアウトし、絵描きになろうとする映画の主人公に、東大出なのにエリート官僚を目指さず撮影所に入った自己と重ねているあたりが興味深い。京撮の時代劇の伝統を残したい映画人としての志と、芸術家としての矜持が重なり、過去の経歴から撮影所システム崩壊後にはもはやありえない企業内抵抗派としての作家牲が浮き彫りになる。中島貞夫の作家論としては、すべて私の想定内であったが、改めてこうして具象化されると感無量だ。(よかった)

 9月9日(土)にピンク映画「美乳夜曲 乱れる白肌」を観る。

「美乳夜曲 乱れる白肌」(渡邊元嗣)
1人の女子大生の如月るいをマドンナのように崇めて楽しかった漫画オタクの童貞男・小滝正太,マッチョ男・本多菊次朗,金持ちのボンボン・ケイチャンの3人の学生時代。しかし、彼女は3人の前から突如、姿を消す。20年程の後、彼等の前に次々と、かつての姿のまま彼女が出現する。これはファンタジーでなく、ラストには隠れた真相が明白になるが、いかにも元嗣映画らしく、仕掛けはそれ程に非凡とは言えないが、追想のロマンチシズムに溢れている。童貞のまま唯一、齢を経てしまった小滝正太への粋なオチも悪く無い。3人の男優の達者ぶりが存分に堪能できた。(まあまあ)

 9月10日(日)に一昨年の令和4年12月公開キネ旬日本映画ベストテン第1位「ケイコ 目を澄ませて」を観る。

「ケイコ 目を澄ませて」(三宅唱)
聴覚障害の女子ボクサー岸井ゆきのが主人公だから、コミュニケーションは手話が中心となり、字幕でフォローするとしてもスポークンタイトルだらけとなったら鬱陶しいから、いきおいややこしいストーリーを展開させるのは難しくなって、表現は限りなくサイレント映画に近くなり、一部その手法も引用している。プロテストに合格し初勝利直後から、連勝するが3戦目でKO負けするまでの流れが、16mm撮影・音楽無しで、ドキュメンタリックに淡々と綴られる。彼女がなぜそこまでリングに拘るかの説明的な物は一切無いが、よく考えれば淀川長治さん言うところの「映画は眼で見せる」もので「魅せる」ものだから、外面を見せることが全てで、実は1mmたりとも内面に入れるものではないのだ。だから、約3試合を生きたこの女子ボクサーの内面を文字で表現しようとしたら、ここまでに至った過去とこの後の人生への想いも含めて無限の長さと、人によって無限のヴァリエーションが存在するだろう。戦後に親のジムを引き継ぎ、子供のいないことからジムをたたむまでの会長・三浦友和の心情描写にしても同様だ。この人間の外面だけを徹底して見詰め尽くし人間存在の深味に達したのは、「絶対映画」の一つの到達点と言えるのかもしれない。キネ旬の岸井ゆきのの主演女優、三浦友和の助演男優は、当然の授賞である。(よかった。ベストテン級)

 9月11日(月)に昨年2022年2月公開の外国映画「355」を観る。

「355」(サイモン・キンバーグ)
私の御贔屓クールビューティーのジェシカ・ジャスティンが、実に粋な映画をプロデュースしてくれた。多彩な5大女優が華やかに揃い踏みのスパイアクションである。CIAジェシカ・ジャスティンを筆頭にBND(ドイツ連邦情報局)のダイアン・クルーガー、中国政府エージェントにファン・ビビアン、MI6からはサイバー・インテリジェンスの専門家でアフリカ系のルピタ・ニョンゴ、コロンビア情報組織の心理セラピーはペネロペ・クルスと、人種的・国際的にもヴァラエティに富んでいる。この5人が共闘・競闘して世界的テロ組織と「お宝」争奪を繰り広げるやや平凡だが、ルーチンワークとしての痛快篇でもある。米中対立の昨今だが、世界平和についてはこのように仲良くありたいものだ。荒事のできない家族思いのペネロペがアクセントで、他の4人はガンも格闘もなんでも来いの猛者ばかりだが、過去のトラウマとか私生活を絡めて、それぞれの個性的を際立たせている。特にITを駆使してのルピタの活躍は頼もしい。ラストは釈然としない部分もあるがPart2への布石と思えば許せそうな、また再会したい5人組だった。(よかった)

 9月14日(木)に昨年2022年2月公開の外国映画「クリフハンガー フォールアウト」を観る。

「クリフハンガー フォールアウト」(ハワード・J・フォード)
ロッククライミングで彼氏が遭難してしまった女性が親友の女友達と2人で1年後に同地を訪れ、若い頃に殺人を犯したが隠蔽に成功した訳ありの4人組の男達と遭遇する。ひょんな勢いで女友達が殺害されてしまい、その現場を収めたカメラデータを狙って、ヒロインが追いまくられる破目になる。登場人物はこの6人のみで、追跡の場が岩壁ということから、アクションは地味だが独自のサスペンス空間を構築する。<未体験ゾーンの映画たち2022>公開だが、劇場鑑賞ではここまでコマメに追いかけなかったので、こういう86分の小粋な小品に出会えるのは、J:COM基本チャンネル録画三昧のリハビリ療養生活ならではの醍醐味だ。サスペンスは加速度的に高まるが、残念なのは4人組のうちの3人が引いてしまう程、残る一人が偏執的にサイコパス化していくことだ。最近の映画は何でもサイコパスに逃げる傾向があるが、もう食傷気味だ。(まあまあ)

 9月に入ってから14日(木)までに観た映画は次の14本。

「まじめにふまじめ かいけつゾロリ なぞのお宝大さくせん」
「映画 かいけつゾロリ だ・だ・だ・だいぼうけん」「エンジェル」
「ヴォイジャー」「X エックス」「遊撃/映画監督 中島貞夫」
「美乳夜曲 乱れる白肌」「教科書にないっ!」「ケイコ 目を澄ませて」
「ダイナー」「355」「阪妻 阪東妻三郎の生涯」
「クリフハンガー フォールアウト」
「映画 かいけつゾロリ まもるぜ!きょうりゅうのたまご」

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