9月1日

200.名前

関東大震災100年の今年において、朝鮮人虐殺の規模を小さく捉えたい――つまり現実から目を背けたい――人はたくさんおり、あまっさえ殺戮自体存在しなかったと言う人も後を絶たないが、ここに野田と柏の自警団に誤って殺された香川の行商人一行がおり、事件の起きた福田村(当時)にちゃんと墓が建っている。慰霊碑の形を取っているが由々しき大ごとにも拘わらず解釈された本文の類いは彫られず、後世の判断に委ねられている。彫られているのは、犠牲者の名前と年齢のみである。

関東大震災福田村事件犠牲者
追悼慰霊碑
　本碑ヲ以テ慰霊ノ場トシ幽魂ノ墓ヲ兼ネルモノ也
大正12・9・6日殁　十霊々名
無量寿院亀助信士　釈　教芳俗名　谷生亀助　　　　二十九歳
無量寿院藤乃信女　釈尼教光俗名　右妻　　フジノ　二十六歳
無量寿院晴好童子　釈　教宝俗名　右長男　晴好　　六歳
無量寿院蔦江童女　釈尼教明俗名　右長女　つ多江　四歳
無量寿院政市信士　釈　浄雲俗名　谷生政市　　　　二十九歳
無量寿院以曽信女　釈尼如念俗名　右妻　　イソ　　二十三歳
無量寿院秀松童子　釈　浄寂俗名　右二男　秀松　　二歳
無量寿院無限水子　釈尼妙智　　　　　　　　　　　イソ胎児
無量寿院実清信士　　　　　俗名　西山實　　　　　二十四歳
無量寿院隆一信士　釈　連証俗名　藤澤隆一　　　　十八歳
　建立日・平成十五年九月六日・八十周年命日
　建立者代表　福田村事件を心に刻む会代表　　濱田毅
　　　　　　　千葉福田村事件真相調査会会長　高畠郵司 (6/24)