を読んだ。エドガー・ライズ・バロウズ著/高橋豊訳
青年に成長したターザンがジェーンと出会うまでの間の期間を取り上げた連作短編集。
ターザンの初恋
類人猿達に混じって暮らしているターザンは美人の類人猿ティーカに初恋をする。
しかし彼女を狙うのは彼だけではなく・・・。
類人猿の思考や習慣が真に迫っていて、ほんとうに地球上に存在しているような錯覚を覚えさせるバロウズの筆はほんとにすごい。
象とターザン
ジャングルの中で黒人戦士たちがなにやら作業をしているのを見物しているターザン。
大きな穴を掘り、その中に何本もの先端を尖らせた長い杭を植え、穴の上に葉や草をのせていたが、ターザンにはそれがなんのためのものかは分からなかった。
その後仲良しの象タントルとしばし遊んで別れた後、タントルの背後から黒人たちが飛び出してさっきの場所に誘導しようとしているのを見、ターザンはあの穴がなんのためのものか悟る。
「象と仲良し」と言うばかりで今までそんな描写がろくに無かったが、ようやく出てきた(笑)
赤ん坊
ターザンの初恋の相手ティーカはターザンの幼馴染である類人猿タウグとの間に子供を設けた。
赤ん坊に興味津々のターザンだったが、神経質になっているティーカはターザンを近寄せようとしない。そこにタウグもやってきてターザンに襲いかかるが、ターザンはタウグの足にロープを巻き付けて逆さ吊りにしてしまう。
その騒ぎにティーカが赤ん坊から目を離したすきに、背後からシェエタ(豹)が忍び寄っていた・・・。
タウグの原始的すぎる脳みそに去来する感情の表現が見事で、リアリティを感じさせつつもドラマを成立させているのがすごすぎる。
神
丸太小屋で本を読んでいるターザンの最近の疑問の対象は「神」だった。
神とは何者なのか?
本だけではわからず、ターザンは神を探し出してジャングル最強を賭けて勝負を挑むことにする。
まずは手近な物知りの類人猿であるムンバにたずねてみると、それはゴロ(月)かもしれないという示唆を得・・・。
まったく英語を聞いたことがないターザンが独自に編み出したアルファベットの発音法が接頭語で大文字と小文字を区別するとか凝っていて面白い。
バルスーム語もそうだが、バロウズは言語に対する関心も知識も相当なものである。
またこの話では象の落とし穴を掘っていた黒人たちの村であるムボンガ(酋長の名前)も登場する。
この村はターザンの育ての親を殺した戦士がいたせいで、その後ターザンにえらい目に合わされ続けているのだが、この話でもターザンが村のまじない師を神と勘違いしたためにえらい目に(笑)
ターザンと黒人の少年
ティーカの息子ガザンのお守りをするターザン。
周りを見回すと類人猿達はみんな親子で、それどころか目につく野生動物や鳥も親子だらけ。
愛に飢えたターザンは自分も愛する子供を持つと決め、手っ取り早くムボンガの村の小さな男の子を誘拐するのだが・・・。
可哀想過ぎる誘拐された男の子ティボとその母親モマヤ(笑)
うまくいくはずがないターザンの目論見は置いといて(笑)、物語は息子を探すためにまじない師を尋ねるモマヤ視点の方が盛り上がりはじめ、ハイエナを連れた奇怪なまじない師も現れたりと、目が離せない展開になって面白い。
まじない師の復讐
ターザンのせいでせしめるはずだった肥えた羊3頭と新しい寝むしろ1枚と大人の前腕の長さの銅線1本を手に入れそこねたまじない師ブカワイは復讐を誓い、まずはティボを誘拐してモマヤからまじないの報酬を搾り取ろうとする。
タイトルを見た瞬間に思うのは「やめとけばいいのに」(笑)
もちろん結果は復讐する前よりも酷い目に合うのだ(笑)
今回はムボンガのまじない師ラバ・ケガも巻き込まれてえらい目に(笑)
ブカワイの最期
嵐の夜に雨宿りしていた木に落雷があり、意識を失って倒れるターザン。
それを見つけたのはまじない師ブカワイだった。
彼はターザンを縛り上げてペットの2匹のハイエナに食い殺されるところを見物して楽しもうとするのだが・・・。
タイトルが(笑)
出てきたときは不気味な隠者という感じで威厳があったのに、散々な結末を迎えるブカワイ(笑)
しかしらい病で崩れた身体とかハイエナとの間の恐怖と憎しみのバランスとか、描写も色々と凝っていて面白いキャラクターだった。
合掌(笑)
ジャングルのユーモア
飢えたヌマ(雄ライオン)がターザンのいるカーチャクの部族を奇襲し、類人猿女性マンカが子供を守ってヌマに立ちふさがり、結果さらわれた。
ターザンは類人猿達を引き連れて救出に向かうがマンカはすでに死んでいた。
しかしそのままヌマを満足させてしまっては襲撃を繰り返すだろうと思ったターザンは苦労の末にヌマが食べてしまう前にマンカを取り戻す。
ターザンはこれからは見張りを置くことを主張し、他の類人猿たちも賛成する。
その数日後、ターザンはムボンガのまじない師の家から奪ってきたヌマの毛皮を使っていたずらを仕掛けるが・・・。
ムボンガのまじない師の被っていたのは最初はバッファローと書かれていたのにいつの間にかライオンに変わっている気がする(笑)
それはそうと、ターザンがちょっと呆れつつ他の動物達は餌を漁るときはちゃんと見張りを置いていると類人猿に言うのがおかしい。
どうやら類人猿達はジャングルで最も緊張感の無い種族らしい(笑)
悪夢
狩りの不発が続いて空腹だったところをムボンガの村で象の肉で大宴会が開かれているのに気づいたターザンは、みんなが食い疲れて眠るのを待ち、最期まで寝ずに食べ続けていた老人をぶち殺し(笑)、ようやく山盛りの象の肉にありついたが、その肉は病死した象のものですでに腐敗も進んでいた。
食中毒の結果初めて夢を見たターザンは現実との区別がつかなくなり・・・。
気軽にぶち殺される老人(笑)
銃弾
見張りを置くことで平和な日々が続いたカーチャクの部族はすっかりたるみ切ってしまい、見張りもおざなりな上にみんなばらばらに散って餌を探すようになっていた。
そこに現れた他の部族でボスの座を狙ったが敗北して追放された若い雄の類人猿ツーグは餌を探すティーカに一目惚れし、息子ティボを餌に彼女を誘拐する。
丸太小屋でベッドの下にあった小箱の中から出てきた硬貨や銃弾を磨いて遊んでいたターザンは緊急事態の声を聞いて駆けつけ、タウグとともに追跡を開始するが・・・。
悪者にさらわれるというヒロインらしい活躍を見せるティーカ。
超美人の類人猿という設定なのだ(笑)
ところでジャングルでの野生ライフと丸太小屋でのちょびっと文明ライフのどちらも満喫しているターザンだが、丸太小屋には白骨化した両親が転がったままである(笑)
変身
研いだ貝殻で散髪したターザンが散歩に出かけると、ライオンの罠を作っているムボンガの黒人たちを発見する。
罠の餌は生きた仔ライオンで、檻の中に縛り付けられており、ライオンが中に入ったら蓋が閉まる仕掛けである。
罠を仕掛けている中にまじない師のラバ・ケガもいるのに気づいたターザンは面白いいたずらを思いつき・・・。
いたずらの内容は、餌の仔ライオンとまじない師を入れ替えるというものである(笑)
こうしてターザンに直接酷いことをしたわけではない(未遂はあったが)まじない師ラバ・ケガは悲惨な末路をたどったのだった(笑)
ちなみに助け出された仔ライオンもターザンがぶち殺して食った(笑)
月を救う
夜の散歩に出かけたターザンは、黒人たちのキャンプが肉食獣の群に襲われているところに出くわす。
黒人たちの中で1人だけは勇敢な男がおり、なんとか逃げ延びたようだった。
寝床に戻ったターザンは寝付けずに考え事をしていたが、突然ゴロ(月)がヌマ(ライオン)の群(星が光るライオンの目)に囲まれており、やがて食い尽くされてしまうと思いつく。
その考えを聞かされたタウグは初めて星というものを認識して恐怖を覚え、それを部族のボスであるグントに話す。
グントはターザンがヌマを連れて行ってゴロを食い殺すのだと言い、その前にターザンを殺すべきだと言い・・・。
全然関係ない出来事や思考が絡まり、最後はスペクタクルに。
絶対予想不可能な展開(笑)
それにしてもターザンは弓なんて持ってたっけ???
というわけで初のバロウズの短編集だったが、バロウズ自身も初めてだったらしいが読んだ感じはそれぞれの話の関連も強いし、やはり長編っぽかった。
しかし「ターザンの逆襲」を始めとして、バロウズはオーバーキルなまでにドラマを盛り上げる力があるので、時として「もう勘弁して」と読者(化夢宇留仁)の心が折れそうになったりするのだが(笑)、短編だとそれぞれの話で一応事件は完結するので気軽に読めるのが嬉しい。その分もちろん長編のような満足感は得られないのだが。
振り返ってみればこの期間のターザンはどんな風だっただろうと想像し、こんなことがありそうだと思われるものが全部形になっているという感じで、中には意外な展開も含まれていたりして、充実した1冊だった。
あと上で書いたムボンガの村はほんとにひどい目にあっていて、行方不明者は増え続け、時には空から死体が降ってきたりするのだ。
もちろん全部ターザンがやっている(笑)
なんで引っ越さないのか理解に苦しむ(笑)
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