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2022年12月11日20:39
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Ｗカップ企画(7)美しいクロアチアの自然 第1回目（1章と2章）準々決勝 第1試合 クロアチア 対 ブラジル戦レポート
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12/11(日）
Ｗカップ企画7回目は、前回に続きクロアチアである。今回は2回にわたって、クロアチアの動物や植物を含め、美しい自然を紹介する。
企画第6回 https:/
目次
・第1章 クロアチアの美しい自然 プリトヴィッツェ湖畔国立公園
・第2章 準々決勝 クロアチア 対 ブラジル戦レポート
第1章 クロアチアの美しい自然 プリトヴィッツェ国立公園
参考テレビ アニマルプラネット クロアチアの大自然
BS11 プリトヴィツェ湖群国立公園の動物たち -
アドリア海に面するクロアチアは、東欧の秘境と呼ばれる。今日はディナル・アルプス山脈の一角にあるプリトヴィッツェ国立公園を初めとしたクロアチアの動物達の営みに迫る。
�―佞遼�れ
クロアチアの国土は日本の九州地方の1,5倍になり、8つの国立公園を持つ。人口は450万人、首都ザグレブを中心に、都市に人口が集中する傾向にある。経済は観光業で成り立ち、年間900万人が訪れる。都会から離れると、伝統的な暮らしを守る農民達に出会い、森で薪を切り、火をくべて、煮炊きをしていた。日本と同じく、クロアチアの地方都市も過疎化が進む。都市の周りは田園や森が広がり、農作業に勤しむ人々の姿があった。
1月、国土の中部に位置するプリトヴェィツェ国立公園は、白銀の世界に変わっていた。
気温はマイナス0度を下回り、草は枯れ、雪に埋もれている。急峻な岩場に生き物の気配はない。林の中からカラスの鳴き声が響き渡る。静かな丘の上に体調1,5m、体重30kgになるオスのオオヤマネコが姿を現した。敏捷性があり、体重の4倍に達する獲物さえ捕まえる。主食は子供を身ごもって動きが鈍くなったノロジカのメスである。ノロジカは、食料が乏しい冬の間、体内の自動調節機能が働き、妊娠の期間を遅らせるのである。子供は、産まれて間もない頃から立ち上がり、視力も聴覚も獲得し、すぐに移動を始める。
3月、柔らかい太陽の光が降り注ぎ、雪が溶け始め、川となって、岩肌を削り、滝となって落ちる。光が差し込む森の中でオオアカゲラが巣作りに励み、子育てを始める。朽ち果てた倒木から幼虫を啄ばみ、巣の中にいる子供に与えていた。ヨーロッパイノシシは、生まれて2週間から3週間の子供を連れた母親が、落ち葉を掻き分けながら、斜面を登っていた。一度に産まれてくる子供は5匹から6匹、生後10ヶ月まで母乳を飲む。
森の中には、黒い尾羽が特徴のヨーロッパオオライチョウのオスが、「カチカチ」という鳴き声を上げて、メスを呼び求めていた。尾羽を扇子のように広げ、首を伸ばして鳴き声を立てる。首の羽毛が逆立ち、喉から声を絞り出していた。ヨーロッパイノシシの母親は、沼の中に足を入れ、子供達を呼び寄せ、尖った鼻先を突っ込んで、球根などを引き抜いていた。食事の最中、オオカミの遠吠えがかすかに響き渡る。母親イノシシは、顔をあげ、辺りの様子を確認して、子供達を引き連れて逃げていった。オオカミの遠吠えは、10ｋｍ先までこだまするという。
一方オスのヨーロッパイノシシは、普段単独で行動をする。縄張り意識が強く、匂いの成分が含まれる尿を木にこすり付けて、居場所をアピールする。孤独なオスのイノシシは、オオカミの群に遭遇し、緊張が高まった。オオカミの群は、主食のシカが不足すると、時にオスのイノシシを狙うという。イノシシのオスは、背後を取られないように体を反転しながら、牙を見せつけ、威嚇行動に出る。数で勝るオオカミは、牙による怪我を避けて、逃げていった。
プリトヴィッツェ国立公園は、石灰岩に覆われ、雨による風化作用が進み、ぽっかりと洞窟が口を開く。奥の方へ進むと、天井には、奇妙な柱が垂れ下がっていた。地下水の滴から石灰岩の成分である炭酸カルシウムが再沈殿して出来た鍾乳石である。
届かない冷たい洞窟の中に、体が真っ白のホラアナイモリが潜む。目は退化し、頭の後ろに鰓がつき、ゆったりとした速度で泳いでいる。骨格はイモリと変わらず、微弱な電磁波と嗅覚を頼りに獲物を探していた。
写真＝ホラアナイモリ 画像はポストイナ鍾乳洞公式サイトより 掲載元ねとらぼ 2016年6月3日より https:/
岩の上には、ユキハタネズミがいた。入り組んだ洞窟は、大型の肉食獣の目から逃れ、岩の割れ目に安心して巣を作る。藁で敷き詰めた巣の中には、3匹の子供がいた。餌不足に備え、母ネズミは時に子ネズミを引きつれ、洞窟を抜けて、周囲一帯に生えるコケ植物を食んでいた。
地下水路から流れる水は、石灰岩を溶かし、フィルターの役割を果たすコケに少しずつ積み重なる。コケの上に石灰が積み重なり、岩を形成する。
大河ドナウ川の支流のひとつ長さ940kmのサヴァ川は、ここプリトヴィッツェが、源流に当たる。雪解けの季節、川の水嵩が増して、氾濫が起こる。森一面が水浸しになり、乾いた草地が湿原へと変わった。人の手によって連れこられた野生馬の群が現れ、草を食みながらゆっくりと前に進む。一本の蹄は、水を弾き飛ばし、ぬかるんだ湿原を駆け抜けた。現在川の流域で牧畜も行われている。牛達の背中に鞭を当てて、湿地の深みへと追い立てた。牧場主は長いズックを履き、膝まで水に浸かりながら、牛に掛け声をかけて、歩かせる。牛や馬が草を刈る役割を果たすと、残り物を豚が口にする。近辺に暮らす豚は、数百年前から人の手によって育てられ、湿原で木の根やミミズ、昆虫、貝などを食べていた。野生種のイノシシに近い遺伝子を持っているという。国立公園原産の豚は、別の品種と共存し、数が減った時期もあった。長年湿地で暮らしていた知恵が働き、生息数を取り戻している。水中からヨーロッパスズガエルが顔を出し、喉を膨らませて、鳴き声を立てた。視線の先には、他のカエルがいた。オスのカエルは、種に問わず、同じカエルの仲間に飛びつく性質がある。ヨーロッパスズガエルは、背中のオレンジ模様に毒を蓄え、他のカエルを一時的に麻痺させていた。カエルを主食とするコウノトリは、春先アフリカの越冬地から飛来し、毒を蓄えるヨーロッパスズガエルも啄ばんでいた。
古くからクロアチアを問わず、ヨーロッパに住む人々は、コウノトリの飛来を歓迎していた。なぜならコウノトリが巣を作った家は、子宝に恵まれると言い伝えられてきたからである。湿地に程近いチゴチュ村には、家の屋根に枯れ枝を加えて、網状の巣を作り始める。産卵間際の3月、夫婦が協力して深さ3m、幅2mの巣を作り、翌年以降も継続して利用する。体調は1m、翼を広げると1,5mになる。オスがもっぱら材料を集め、メスは巣を補強する役目を担う。
村ではおよそ40番の夫婦が子育てをしていた。夫婦は互いに目をあわせ、嘴を鳴らして、絆を再確認する。巣の土台となる枝と枝の隙間には、スズメがいる。スズメは、強度の高いコウノトリの巣をちゃっかり利用し、枝の上に藻を敷き詰め、ベッドを拵えていた。一昔前、村の中は子供達の遊び声でにぎわっていた。子供達が大きくなって、成人になると、仕事を求めて都会に移り住み、過疎化が進んだ。先祖からの知恵を受け継ぐ高齢者が、伝統文化を守っていた。人口は100人、斧で薪を割り、一つに束ねて、小屋の中に置いた。寒さが厳しい冬に、薪をくべて、火をつけ、暖を取っている。村で子育てするコウノトリは、穀物畑から餌をもらい、毎年平均二つの卵を孵していた。
��地域の自然や伝統文化に根ざした人々の暮らし
アドリア海に沿って南北に広がるクロアチアの海岸地域は、1000個を越す島が点在する。険しい断崖が連なる66個の島に居住区がある。本土と島々を合わせた海岸線の長さは、南アフリカ共和国の国土の2倍に達する6000kmに及ぶ。北部の港町ロヴィニは、かつて孤立した島だったものの、トラックによって速やかに本土に魚を輸送できるように埋め立て工事を行った。現在本土と地続きになり、貿易が活発に行われるようになった。港には地中海を行き交う船が停泊し、漁師からカモメが魚のおこぼれをもらっていた。海岸線から続く丘陵地に、古い建物が軒を連ねている。
南部のダルマチアでは、今でも牧羊が盛んに行われている。石垣で囲われた狭い道を羊の群が歩いていた。中央の海に浮かぶタグ島は、乾燥化が進んでいる。岩だらけの大地にアーモンドやクロッカスの花が咲いていた。地面にしがみつくように生えるハーブが羊の主食である。ハーブの甘い香りは、羊の肉質にも影響を与え、柔らかくて、甘い香りが漂うという。メスの羊から出るミルクからチーズが生成される。島に暮らす4万5000頭の羊から年間およそ200トンのチーズが生成されている。バケツに入れたミルクをボールでかき混ぜ、昔ながらの方法で作っている。塩の香りが混ざったチーズは、国外へ輸出される。
6月、気温が上昇し、海岸線に花々が咲き誇り、甘い蜜を蓄える。花の香りに誘われて、ハチを含めた昆虫が飛来した。花弁の奥にある蜜を吸ううち、花粉が付着する。花粉を背負ったハチが、他の花に止まると、受粉が成功する。地面には、イワカナヘビがいた。落ち葉の中に潜む昆虫を捕えて、すぐに加えた。昆虫を主食とするイワカナヘビを長さ1m以上のネズミヘビが狙っていた。花園に紛れ込み、地面を這いながら、匂いを頼りに、イワカナヘビに近づく。岩の上に止まっていたイワカナヘビは、草地に飛び込み、姿を消した。
内陸部に目を向けると、ディナル・アルプス山脈が連なる。石灰岩から成るカルスト地形で、雨により侵食が進み、尖峰が連なっていた。石灰岩の浅い土壌には、高山植物が育つ。年間降水量は5000mm、いくつもの川が山肌を流れる。長さ72kmに及ぶクル川は、わずか50kmの間に8箇所も滝があり、最大落差250mに及ぶ。生態系の豊かさから沿岸地域は国立公園に指定された。森の中には、太陽光が差し込み、下草が育ち、ヒグマに食料を提供する。国内の生息数はおよそ1000頭、1個体辺り、1万平方メートルに及ぶ森林で生息している。親から独立した2歳のヒグマは、木の根を掘り出し、春先芽吹いた花を口にする。遠くからヨーロッパアカギツネが、様子をうかがっていたものの、体の向きを変えて、去っていった。2頭のヒグマは、木に登り、果物も食べる。森の中には、鯨偶蹄目シカ科の一種アカシカの群がいる。春先メスと産まれた子供で10数頭の群れを作り、ヒグマに目を光らせている。ヒグマは、子育てに2年も費やし、果物を取りながら、ビタミンB1が含まれる肉も必要とする。泳いで湖を渡って、対岸へ着くと、イタチ科のカワウソと共に、水浴びをする。
写真＝スロバキアに生息するヨーロッパヒグマ 掲載元 freepix https:/
ヒグマの様子をヨーロッパオオヤマネが見下ろしていた。オオヤマネは、木の洞で子供を育て、木の実を調達する。好奇心が旺盛な小熊は、時に木登りするが、オオヤマネの巣には大抵気付かない。母熊は、しきりに地面の匂いを嗅ぎ、アカシカの様子を探っていた。アカシカの群は、ヒグマの母親を見つけると、速やかに去っていった。
水中生活に特化したヨーロッパカワウソは、一日に体重の15%分の食料を確保するため、水の中に潜り、ザリガニなどを探っている。毛の中に空気を溜め込み、息継ぎなしでも数分間潜っていた。陸地に上がって、魚やカニを噛み砕くと、アオサギに見つかった。アオサギは、日本でもヨーロッパでも御馴染みの生き物で、住宅地の池でもしばしば見られる。
一方ヨーロッパヒグマは、餌を探して対岸の森に渡ると、朽木を引っかいて、中に潜む幼虫を穿り出す。柔らかい朽木はすぐに割れてしまい、体を寝かせながら持ち上げた。手が滑って、しっかりとつかめず、こぼしてしまった。朽木を手にするヒグマは、肉食のオオカミと共存する。オオカミは、地面の中をあさり、ヨーロッパヤチネズミを捕らえる。ヤチネズミの母親は、巣を奥まで広げ、オオカミに感づかれると、慌てて対応する。子供達を呼び集め、奥へ逃れた。母親が子供の前に立ちふさがり、体を張って身を守った。オオカミは、尖った鼻先が巣穴に引っかかり、爪を立てて地面を掘り、穴を広げようとする。さすがに労力に見合わないと気付いたのか、ヤチネズミを諦めて、去っていった。
森の中にぽっかりと開いた草地は、現在蘭の最盛期を迎えている。地元民は、蘭の花を摘み、着物を施した。村人は、定期的に草地に集まり、メロディーに合わせて、手を繋ぎ、歌を歌いながら、ステップを踏む。自然に根ざした暮らしを営む人々は、祝い事があると、「コロ」と呼ばれるダンスを披露する習慣を持っていた。
次回3章へ続く。
写真＝コロと呼ばれるダンスを披露する少女
第2章 準々決勝 クロアチア 対 ブラジル戦レポート
日本時間、12月9日（金）24時、準々決勝 第1試合 クロアチア 対 ブラジル戦がキックオフする。共に中3日での試合、クロアチアは、前回の日本戦からスタメンを2人変更した。対してブラジルは、韓国戦から同じメンバーで望む。前半45分は、0対0でスコアが動かなかった。両チーム間のボール支配率は、クロアチアの51％に対して、ブラジルは49パーセントである。
写真 リンク無記載 掲載元 ＦＩＦＡ表記 FIFA BLOG https:/
右エンドにブラジル、左エンドにクロアチアが入った。ブラジルボールで、後半45分が開始された。早速1分、ブラジルは、右サイドのラフィーニャがドリブルで駆け上がり、ゴール前にグラウダーのクロスを送った。走り込んだエディルミリトンが受けて、右足で折りかえす。ＧＫルヴァコヴィッチの前で、グラウディオルがクリアした。ラフィーニャは、ドリブル力とスピードを兼ね備える。クロアチアは、中に絞って守備をし、前半からブロックの外側でシュートを打たせていた。
写真 掲載元 https:/
ブラジルは、センターバック（マルキーニョス、チアゴ・シウバ）を、センターサークル付近に押し上げ、パス回しを展開する。左サイドから中央へビシニウスがドリブルを仕掛けると、クロアチアは守備に引き戻される。クロアチアペースの前半から一点し、ブラジルが主導権を握った。
9分、ミドルレンジのこぼれ球をリシャリルソンが拾い、左へターンしながら、ゴール前に走るネイマールにスルーパスを送った。ＧＫリヴァコヴィッチが腕を広げながら飛び出していく。ネイマールのシュートを、リヴァコヴィッチは体を張って防いだ。パスの出し手となったリシャリルソンは、足元が柔らかく、テクニックも優れている。初戦のセルビア戦での2点目のオーバーヘッドでのゴールは、個人技の高さを発揮していた。ブラジルのチッチ監督は、後半10分に1枚目のカードを切った。右サイドのラフィーニャに代えて、アントニーを投入した。アントニーは、スピードのあるプレーヤーである。昨2021年に、原則24歳以下の選手で行われた東京オリンピックの決勝スペイン戦にて、延長後半に勝ち越しゴールを上げて、チームを金メダルに導いた。一方クロアチアのダリッチ監督は、カードを切らずに、戦況を見つめている。前半はボールキープ率では高かったものの、クラマッチッチが孤立して、枠内シュートは0本にとどまっていた。ブラジルのセンターバックをつとめるマルキーニョスとチアゴ・シウバは、トップのクラマシッチをマークしていた。17分、コバシッチが、左サイドのペリシッチにパスを出す。ペリシッチが左足でクロスを出したものの、球の勢いが弱く、ＧＫアリソンが両手で抱え込むようにキャッチした。
20分、左サイドからネイマールが切れ込み、ボランチの1枚ルーカスパケタにパスを出す。クロアチアのセンターバックをつとめるクヴァルディオルとロブレンに挟まれ、ボールがこぼれる。ルーズボールに真っ先に反応したのは、ルーカスパケタである。的確に前に飛び出たＧＫリヴァコヴィッチが、ルーカスパケタのシュートを、両膝で跳ね返した。リヴァコヴィッチは、速やかに飛び出ることにより、シュートコースをブロックしていた。このビッグセーブを機に、クロアチアはリズムを取り戻し、最終ラインでボールを落ち着かせた。ダディッチ監督は後半26分に、一気に2枚のカードを切った。前線で孤立気味だったクラマリッチを代えてペトコヴィッチを、パシャリッチの代わりにブラシッチを投入した。
３０分、ルーカスパケタが蹴ったボールをアントニー（交代出場）が受ける。アントニーのスルーパスに、ネイマールが反応する。再度リヴァコヴィッチが速やかに飛び出した。ネイマールのシュートは、右足を伸ばし、左足を折り曲げたリヴァコヴィッチに当たって、ゴールラインを割った。リヴァコヴィッチは、右足を出して、インコースをブロックし、左足に辛うじてボールを当てた。彼は、スルーパスへの対応が早く、1対１のシュートを阻止している。
写真左＝ネイマールのシュートを阻止するルヴァコヴィッチ 掲載元 Ｙａｈｏｏ Sports UK
写真右＝パスの出し手となったアントニー
クロアチアは、モドリッチのパスを、センターサークルを超えたところで、ペトコヴィッチが受けた。ペトコヴィッチがパスの出し所を探していると、後ろからリシャリルソンがプレスをかけて、ボールを奪取した。リシャリルソンは、球際に強く、守備面でも貢献した。
ブラジルのチッチ監督は後半３８分、大会３ゴールを上げているリシャリルソンに代えて、国内クラブのサントスＦＣでプレーするペドロを投入した。リシャリルソンは、屈強なクロアチアのセンターバックの前に、持ち味を発揮できず、引き出し役となっていた。ネイマールとアントニーが、裏のスペースへ抜け出すものの、ＧＫルヴァコヴィッチの壁は厚く、一点が遠い状況である。中盤のスペースはブラジルが物にすると、クロアチア側はしっかりとマークを受け渡しして、守備のブロックを築いた。４１分、右サイドでペドロに対して、クロアチアはセンターバックのグラウディオルがしっかりと肩をつける。大きく弾んだボールを、ペドロは体を反転して、抜けようとする。しっかりとグラウディオルは体をつける。ボールはゴールラインをわり、ゴールキックとなった。グラウディオルは、西暦２００２年１月２３日生まれの２０歳、交代で入ったフレッシュなペドロに対して、ファウルをせずに、肩をぶつけて、冷静に対応した。ブラジルは、少しずつパスを回してスペースを作る。クロアチアは、後手に回るものの、裏のスペースをしっかりケアした。ゲームは９０分戦っても決着がつかず、延長戦に入った。後半はブラジルが、押し込む展開に変わっていた。枠内シュートは、ブラジルの７本に対して、クロアチアは０本、ボールスタッツは全くの５分５分である。
延長前半は右にブラジル、左にクロアチアがつき、ブラジルボールで始まった。延長前半１５分、ようやく試合が動いた。ブラジルは、引いてボールを受けたネイマールが、ドリブル突破し、ペドロにパスを出す。ペドロは右足でボールを落とす。再度ボールを受けたネイマールは、続いてアントニーにパスする。アントニーは、右足にボールを当てる。再度ネイマールは右足でトラップし、ＧＫリヴァコヴィッチを、交わす。リヴァコヴィッチは、足にボールを引っ掛けられず、態勢を崩したまま、動けない。リヴァコヴィッチの外側へとボールをコントロールしたネイマールは、右足でシュートを打った。鮮やかにネットを揺らした。１対０．ついに均衡が破れた。クロアチアの守備陣は、延長前半終了を意識して、ゴール前を固めていた。スペースがない中、ネイマールは、リズムをつけて、崩しにかかったのである。彼のドリブル力と足元のテクニックが発揮されたゴールだった。
写真＝ネイマールのゴール 開催元 MARCA
延長後半１１分、右から左に攻めるクロアチアは、劣勢の中力を振り絞って反撃する。ハーフウェー・ラインより後ろの左側でモドリッチがボールを受けて、前を向いた。同じレアル・マドリードのチームメイトであるブラジルのカゼミーロのチャージを受けて、バランスを崩しかけたものの、耐える。カゼミーロの足に当たって、ブラジル陣営側へとボールがこぼれる。ルーズボールを拾ったブラシッチがドリルブルで駆け上がり、左サイドのオルシッチにパスを出す。全速力で上がったオルシッチは、エリア内から左足で折り返した。キープ力のあるワントップのペトコヴィッチが、左足で直接シュートを打った。マルキーニョスに当たって、不規則に回転したボールは、横とびしたアリソンの右手の指先を抜けて、左ネットを揺らした。１対１．初めての枠内シュートがゴールになった。オルシッチは、トップスピードを保ちながらも、冷静にペトコヴィッチの動きを見て、クロスを出した。ペトコヴィッチを含め全力つぎ込むかのように、クロアチアは共に交代で入ったマィエルとブディミルがゴール前に上がり、3対２で数的有利の状況を作っていた。
写真左＝ペトコヴィッチのゴール
ゲームは、１２０分戦っても決着が付かず、ＰＫ戦にもつれこんだ。ブラジルは延長前半終了間際、ネイマールが中盤に下がり、ワンツーパスを駆使して、屈強なディフェンス陣のマークをずらした。リードを奪われて運動量が落ちたクロアチアだが、ワンチャンスからカウンターを仕掛ける。同点ゴールをあげたペトコヴィッチは、随所にキープ力を発揮していた。
ＰＫ戦は、右エンドで行われる。先手はクロアチアがとった。キッカーはブラシッチである。左に動くアリソンを見て、右足でゴール真上に蹴り込んだ。１対０．ブラシッチはガッツポーズした。
１本目の裏、キッカーはロドリゴ、エリアの外から助走し、右ネットに蹴りこんだ。横とびしたリヴァコヴィッチがセーブした。リヴァコヴィッチは完全にシュートコースを読みきり、しっかりと両手の平でボールを押し返していた。
写真＝リヴァコヴィッチのセーブ 掲載元 NDTV SPORTS
2本目の表のマイエル、その裏カゼミーロ、3人目の表モドリッチ、その裏、ペドロもＰＫを決める。
４人目の表のオリシッチもＰＫを成功した。４人目の裏、ブラジルのキッカーはマルキーニョス、失敗すれば、試合が終る。緊張が漂う中、エリア手前から助走し、右足を振りぬいた。グラウダーのボールは、ＧＫリヴァコヴィッチの完全に逆方向へ飛んだものの、左ポストに当たって、跳ね返った。４対２．
写真＝ＰＫのキッカー、マルキーニョスの放ったボールが、左ポストにはばまれる。Getty Images
クロアチアが、ＰＫ戦の末にブラジルを下して、２大会連続のベスト４を決めた。
120分のボールスタッツは、クロアチアの51％に対して、ブラジルは49パーセント、枠内シュート数は、クロアチアの1本に対して、ブラジルは11本にのぼった。いかにブラジルがゴールに迫っていたか、数値が示している。クロアチアは、モドリッチにボールが入ると、時間を作ることができる。彼は視野の広さとキープ力、高いパス精度を持ち味とする。延長後半12分のペトコヴィッチのゴールも彼が基点になっていた。FIFAランキング1位のブラジルを破ったクロアチアの2大会連続の快進撃は続く。
Ｗカップ企画7回目は、前回に続きクロアチアである。今回は2回にわたって、クロアチアの動物や植物を含め、美しい自然を紹介する。
企画第6回 https:/
目次
・第1章 クロアチアの美しい自然 プリトヴィッツェ湖畔国立公園
・第2章 準々決勝 クロアチア 対 ブラジル戦レポート
第1章 クロアチアの美しい自然 プリトヴィッツェ国立公園
参考テレビ アニマルプラネット クロアチアの大自然
BS11 プリトヴィツェ湖群国立公園の動物たち -
アドリア海に面するクロアチアは、東欧の秘境と呼ばれる。今日はディナル・アルプス山脈の一角にあるプリトヴィッツェ国立公園を初めとしたクロアチアの動物達の営みに迫る。
�―佞遼�れ
クロアチアの国土は日本の九州地方の1,5倍になり、8つの国立公園を持つ。人口は450万人、首都ザグレブを中心に、都市に人口が集中する傾向にある。経済は観光業で成り立ち、年間900万人が訪れる。都会から離れると、伝統的な暮らしを守る農民達に出会い、森で薪を切り、火をくべて、煮炊きをしていた。日本と同じく、クロアチアの地方都市も過疎化が進む。都市の周りは田園や森が広がり、農作業に勤しむ人々の姿があった。
1月、国土の中部に位置するプリトヴェィツェ国立公園は、白銀の世界に変わっていた。
気温はマイナス0度を下回り、草は枯れ、雪に埋もれている。急峻な岩場に生き物の気配はない。林の中からカラスの鳴き声が響き渡る。静かな丘の上に体調1,5m、体重30kgになるオスのオオヤマネコが姿を現した。敏捷性があり、体重の4倍に達する獲物さえ捕まえる。主食は子供を身ごもって動きが鈍くなったノロジカのメスである。ノロジカは、食料が乏しい冬の間、体内の自動調節機能が働き、妊娠の期間を遅らせるのである。子供は、産まれて間もない頃から立ち上がり、視力も聴覚も獲得し、すぐに移動を始める。
3月、柔らかい太陽の光が降り注ぎ、雪が溶け始め、川となって、岩肌を削り、滝となって落ちる。光が差し込む森の中でオオアカゲラが巣作りに励み、子育てを始める。朽ち果てた倒木から幼虫を啄ばみ、巣の中にいる子供に与えていた。ヨーロッパイノシシは、生まれて2週間から3週間の子供を連れた母親が、落ち葉を掻き分けながら、斜面を登っていた。一度に産まれてくる子供は5匹から6匹、生後10ヶ月まで母乳を飲む。
森の中には、黒い尾羽が特徴のヨーロッパオオライチョウのオスが、「カチカチ」という鳴き声を上げて、メスを呼び求めていた。尾羽を扇子のように広げ、首を伸ばして鳴き声を立てる。首の羽毛が逆立ち、喉から声を絞り出していた。ヨーロッパイノシシの母親は、沼の中に足を入れ、子供達を呼び寄せ、尖った鼻先を突っ込んで、球根などを引き抜いていた。食事の最中、オオカミの遠吠えがかすかに響き渡る。母親イノシシは、顔をあげ、辺りの様子を確認して、子供達を引き連れて逃げていった。オオカミの遠吠えは、10ｋｍ先までこだまするという。
一方オスのヨーロッパイノシシは、普段単独で行動をする。縄張り意識が強く、匂いの成分が含まれる尿を木にこすり付けて、居場所をアピールする。孤独なオスのイノシシは、オオカミの群に遭遇し、緊張が高まった。オオカミの群は、主食のシカが不足すると、時にオスのイノシシを狙うという。イノシシのオスは、背後を取られないように体を反転しながら、牙を見せつけ、威嚇行動に出る。数で勝るオオカミは、牙による怪我を避けて、逃げていった。
プリトヴィッツェ国立公園は、石灰岩に覆われ、雨による風化作用が進み、ぽっかりと洞窟が口を開く。奥の方へ進むと、天井には、奇妙な柱が垂れ下がっていた。地下水の滴から石灰岩の成分である炭酸カルシウムが再沈殿して出来た鍾乳石である。
届かない冷たい洞窟の中に、体が真っ白のホラアナイモリが潜む。目は退化し、頭の後ろに鰓がつき、ゆったりとした速度で泳いでいる。骨格はイモリと変わらず、微弱な電磁波と嗅覚を頼りに獲物を探していた。
写真＝ホラアナイモリ 画像はポストイナ鍾乳洞公式サイトより 掲載元ねとらぼ 2016年6月3日より https:/
岩の上には、ユキハタネズミがいた。入り組んだ洞窟は、大型の肉食獣の目から逃れ、岩の割れ目に安心して巣を作る。藁で敷き詰めた巣の中には、3匹の子供がいた。餌不足に備え、母ネズミは時に子ネズミを引きつれ、洞窟を抜けて、周囲一帯に生えるコケ植物を食んでいた。
地下水路から流れる水は、石灰岩を溶かし、フィルターの役割を果たすコケに少しずつ積み重なる。コケの上に石灰が積み重なり、岩を形成する。
大河ドナウ川の支流のひとつ長さ940kmのサヴァ川は、ここプリトヴィッツェが、源流に当たる。雪解けの季節、川の水嵩が増して、氾濫が起こる。森一面が水浸しになり、乾いた草地が湿原へと変わった。人の手によって連れこられた野生馬の群が現れ、草を食みながらゆっくりと前に進む。一本の蹄は、水を弾き飛ばし、ぬかるんだ湿原を駆け抜けた。現在川の流域で牧畜も行われている。牛達の背中に鞭を当てて、湿地の深みへと追い立てた。牧場主は長いズックを履き、膝まで水に浸かりながら、牛に掛け声をかけて、歩かせる。牛や馬が草を刈る役割を果たすと、残り物を豚が口にする。近辺に暮らす豚は、数百年前から人の手によって育てられ、湿原で木の根やミミズ、昆虫、貝などを食べていた。野生種のイノシシに近い遺伝子を持っているという。国立公園原産の豚は、別の品種と共存し、数が減った時期もあった。長年湿地で暮らしていた知恵が働き、生息数を取り戻している。水中からヨーロッパスズガエルが顔を出し、喉を膨らませて、鳴き声を立てた。視線の先には、他のカエルがいた。オスのカエルは、種に問わず、同じカエルの仲間に飛びつく性質がある。ヨーロッパスズガエルは、背中のオレンジ模様に毒を蓄え、他のカエルを一時的に麻痺させていた。カエルを主食とするコウノトリは、春先アフリカの越冬地から飛来し、毒を蓄えるヨーロッパスズガエルも啄ばんでいた。
古くからクロアチアを問わず、ヨーロッパに住む人々は、コウノトリの飛来を歓迎していた。なぜならコウノトリが巣を作った家は、子宝に恵まれると言い伝えられてきたからである。湿地に程近いチゴチュ村には、家の屋根に枯れ枝を加えて、網状の巣を作り始める。産卵間際の3月、夫婦が協力して深さ3m、幅2mの巣を作り、翌年以降も継続して利用する。体調は1m、翼を広げると1,5mになる。オスがもっぱら材料を集め、メスは巣を補強する役目を担う。
村ではおよそ40番の夫婦が子育てをしていた。夫婦は互いに目をあわせ、嘴を鳴らして、絆を再確認する。巣の土台となる枝と枝の隙間には、スズメがいる。スズメは、強度の高いコウノトリの巣をちゃっかり利用し、枝の上に藻を敷き詰め、ベッドを拵えていた。一昔前、村の中は子供達の遊び声でにぎわっていた。子供達が大きくなって、成人になると、仕事を求めて都会に移り住み、過疎化が進んだ。先祖からの知恵を受け継ぐ高齢者が、伝統文化を守っていた。人口は100人、斧で薪を割り、一つに束ねて、小屋の中に置いた。寒さが厳しい冬に、薪をくべて、火をつけ、暖を取っている。村で子育てするコウノトリは、穀物畑から餌をもらい、毎年平均二つの卵を孵していた。
��地域の自然や伝統文化に根ざした人々の暮らし
アドリア海に沿って南北に広がるクロアチアの海岸地域は、1000個を越す島が点在する。険しい断崖が連なる66個の島に居住区がある。本土と島々を合わせた海岸線の長さは、南アフリカ共和国の国土の2倍に達する6000kmに及ぶ。北部の港町ロヴィニは、かつて孤立した島だったものの、トラックによって速やかに本土に魚を輸送できるように埋め立て工事を行った。現在本土と地続きになり、貿易が活発に行われるようになった。港には地中海を行き交う船が停泊し、漁師からカモメが魚のおこぼれをもらっていた。海岸線から続く丘陵地に、古い建物が軒を連ねている。
南部のダルマチアでは、今でも牧羊が盛んに行われている。石垣で囲われた狭い道を羊の群が歩いていた。中央の海に浮かぶタグ島は、乾燥化が進んでいる。岩だらけの大地にアーモンドやクロッカスの花が咲いていた。地面にしがみつくように生えるハーブが羊の主食である。ハーブの甘い香りは、羊の肉質にも影響を与え、柔らかくて、甘い香りが漂うという。メスの羊から出るミルクからチーズが生成される。島に暮らす4万5000頭の羊から年間およそ200トンのチーズが生成されている。バケツに入れたミルクをボールでかき混ぜ、昔ながらの方法で作っている。塩の香りが混ざったチーズは、国外へ輸出される。
6月、気温が上昇し、海岸線に花々が咲き誇り、甘い蜜を蓄える。花の香りに誘われて、ハチを含めた昆虫が飛来した。花弁の奥にある蜜を吸ううち、花粉が付着する。花粉を背負ったハチが、他の花に止まると、受粉が成功する。地面には、イワカナヘビがいた。落ち葉の中に潜む昆虫を捕えて、すぐに加えた。昆虫を主食とするイワカナヘビを長さ1m以上のネズミヘビが狙っていた。花園に紛れ込み、地面を這いながら、匂いを頼りに、イワカナヘビに近づく。岩の上に止まっていたイワカナヘビは、草地に飛び込み、姿を消した。
内陸部に目を向けると、ディナル・アルプス山脈が連なる。石灰岩から成るカルスト地形で、雨により侵食が進み、尖峰が連なっていた。石灰岩の浅い土壌には、高山植物が育つ。年間降水量は5000mm、いくつもの川が山肌を流れる。長さ72kmに及ぶクル川は、わずか50kmの間に8箇所も滝があり、最大落差250mに及ぶ。生態系の豊かさから沿岸地域は国立公園に指定された。森の中には、太陽光が差し込み、下草が育ち、ヒグマに食料を提供する。国内の生息数はおよそ1000頭、1個体辺り、1万平方メートルに及ぶ森林で生息している。親から独立した2歳のヒグマは、木の根を掘り出し、春先芽吹いた花を口にする。遠くからヨーロッパアカギツネが、様子をうかがっていたものの、体の向きを変えて、去っていった。2頭のヒグマは、木に登り、果物も食べる。森の中には、鯨偶蹄目シカ科の一種アカシカの群がいる。春先メスと産まれた子供で10数頭の群れを作り、ヒグマに目を光らせている。ヒグマは、子育てに2年も費やし、果物を取りながら、ビタミンB1が含まれる肉も必要とする。泳いで湖を渡って、対岸へ着くと、イタチ科のカワウソと共に、水浴びをする。
写真＝スロバキアに生息するヨーロッパヒグマ 掲載元 freepix https:/
ヒグマの様子をヨーロッパオオヤマネが見下ろしていた。オオヤマネは、木の洞で子供を育て、木の実を調達する。好奇心が旺盛な小熊は、時に木登りするが、オオヤマネの巣には大抵気付かない。母熊は、しきりに地面の匂いを嗅ぎ、アカシカの様子を探っていた。アカシカの群は、ヒグマの母親を見つけると、速やかに去っていった。
水中生活に特化したヨーロッパカワウソは、一日に体重の15%分の食料を確保するため、水の中に潜り、ザリガニなどを探っている。毛の中に空気を溜め込み、息継ぎなしでも数分間潜っていた。陸地に上がって、魚やカニを噛み砕くと、アオサギに見つかった。アオサギは、日本でもヨーロッパでも御馴染みの生き物で、住宅地の池でもしばしば見られる。
一方ヨーロッパヒグマは、餌を探して対岸の森に渡ると、朽木を引っかいて、中に潜む幼虫を穿り出す。柔らかい朽木はすぐに割れてしまい、体を寝かせながら持ち上げた。手が滑って、しっかりとつかめず、こぼしてしまった。朽木を手にするヒグマは、肉食のオオカミと共存する。オオカミは、地面の中をあさり、ヨーロッパヤチネズミを捕らえる。ヤチネズミの母親は、巣を奥まで広げ、オオカミに感づかれると、慌てて対応する。子供達を呼び集め、奥へ逃れた。母親が子供の前に立ちふさがり、体を張って身を守った。オオカミは、尖った鼻先が巣穴に引っかかり、爪を立てて地面を掘り、穴を広げようとする。さすがに労力に見合わないと気付いたのか、ヤチネズミを諦めて、去っていった。
森の中にぽっかりと開いた草地は、現在蘭の最盛期を迎えている。地元民は、蘭の花を摘み、着物を施した。村人は、定期的に草地に集まり、メロディーに合わせて、手を繋ぎ、歌を歌いながら、ステップを踏む。自然に根ざした暮らしを営む人々は、祝い事があると、「コロ」と呼ばれるダンスを披露する習慣を持っていた。
次回3章へ続く。
写真＝コロと呼ばれるダンスを披露する少女
第2章 準々決勝 クロアチア 対 ブラジル戦レポート
日本時間、12月9日（金）24時、準々決勝 第1試合 クロアチア 対 ブラジル戦がキックオフする。共に中3日での試合、クロアチアは、前回の日本戦からスタメンを2人変更した。対してブラジルは、韓国戦から同じメンバーで望む。前半45分は、0対0でスコアが動かなかった。両チーム間のボール支配率は、クロアチアの51％に対して、ブラジルは49パーセントである。
写真 リンク無記載 掲載元 ＦＩＦＡ表記 FIFA BLOG https:/
右エンドにブラジル、左エンドにクロアチアが入った。ブラジルボールで、後半45分が開始された。早速1分、ブラジルは、右サイドのラフィーニャがドリブルで駆け上がり、ゴール前にグラウダーのクロスを送った。走り込んだエディルミリトンが受けて、右足で折りかえす。ＧＫルヴァコヴィッチの前で、グラウディオルがクリアした。ラフィーニャは、ドリブル力とスピードを兼ね備える。クロアチアは、中に絞って守備をし、前半からブロックの外側でシュートを打たせていた。
写真 掲載元 https:/
ブラジルは、センターバック（マルキーニョス、チアゴ・シウバ）を、センターサークル付近に押し上げ、パス回しを展開する。左サイドから中央へビシニウスがドリブルを仕掛けると、クロアチアは守備に引き戻される。クロアチアペースの前半から一点し、ブラジルが主導権を握った。
9分、ミドルレンジのこぼれ球をリシャリルソンが拾い、左へターンしながら、ゴール前に走るネイマールにスルーパスを送った。ＧＫリヴァコヴィッチが腕を広げながら飛び出していく。ネイマールのシュートを、リヴァコヴィッチは体を張って防いだ。パスの出し手となったリシャリルソンは、足元が柔らかく、テクニックも優れている。初戦のセルビア戦での2点目のオーバーヘッドでのゴールは、個人技の高さを発揮していた。ブラジルのチッチ監督は、後半10分に1枚目のカードを切った。右サイドのラフィーニャに代えて、アントニーを投入した。アントニーは、スピードのあるプレーヤーである。昨2021年に、原則24歳以下の選手で行われた東京オリンピックの決勝スペイン戦にて、延長後半に勝ち越しゴールを上げて、チームを金メダルに導いた。一方クロアチアのダリッチ監督は、カードを切らずに、戦況を見つめている。前半はボールキープ率では高かったものの、クラマッチッチが孤立して、枠内シュートは0本にとどまっていた。ブラジルのセンターバックをつとめるマルキーニョスとチアゴ・シウバは、トップのクラマシッチをマークしていた。17分、コバシッチが、左サイドのペリシッチにパスを出す。ペリシッチが左足でクロスを出したものの、球の勢いが弱く、ＧＫアリソンが両手で抱え込むようにキャッチした。
20分、左サイドからネイマールが切れ込み、ボランチの1枚ルーカスパケタにパスを出す。クロアチアのセンターバックをつとめるクヴァルディオルとロブレンに挟まれ、ボールがこぼれる。ルーズボールに真っ先に反応したのは、ルーカスパケタである。的確に前に飛び出たＧＫリヴァコヴィッチが、ルーカスパケタのシュートを、両膝で跳ね返した。リヴァコヴィッチは、速やかに飛び出ることにより、シュートコースをブロックしていた。このビッグセーブを機に、クロアチアはリズムを取り戻し、最終ラインでボールを落ち着かせた。ダディッチ監督は後半26分に、一気に2枚のカードを切った。前線で孤立気味だったクラマリッチを代えてペトコヴィッチを、パシャリッチの代わりにブラシッチを投入した。
３０分、ルーカスパケタが蹴ったボールをアントニー（交代出場）が受ける。アントニーのスルーパスに、ネイマールが反応する。再度リヴァコヴィッチが速やかに飛び出した。ネイマールのシュートは、右足を伸ばし、左足を折り曲げたリヴァコヴィッチに当たって、ゴールラインを割った。リヴァコヴィッチは、右足を出して、インコースをブロックし、左足に辛うじてボールを当てた。彼は、スルーパスへの対応が早く、1対１のシュートを阻止している。
写真左＝ネイマールのシュートを阻止するルヴァコヴィッチ 掲載元 Ｙａｈｏｏ Sports UK
写真右＝パスの出し手となったアントニー
クロアチアは、モドリッチのパスを、センターサークルを超えたところで、ペトコヴィッチが受けた。ペトコヴィッチがパスの出し所を探していると、後ろからリシャリルソンがプレスをかけて、ボールを奪取した。リシャリルソンは、球際に強く、守備面でも貢献した。
ブラジルのチッチ監督は後半３８分、大会３ゴールを上げているリシャリルソンに代えて、国内クラブのサントスＦＣでプレーするペドロを投入した。リシャリルソンは、屈強なクロアチアのセンターバックの前に、持ち味を発揮できず、引き出し役となっていた。ネイマールとアントニーが、裏のスペースへ抜け出すものの、ＧＫルヴァコヴィッチの壁は厚く、一点が遠い状況である。中盤のスペースはブラジルが物にすると、クロアチア側はしっかりとマークを受け渡しして、守備のブロックを築いた。４１分、右サイドでペドロに対して、クロアチアはセンターバックのグラウディオルがしっかりと肩をつける。大きく弾んだボールを、ペドロは体を反転して、抜けようとする。しっかりとグラウディオルは体をつける。ボールはゴールラインをわり、ゴールキックとなった。グラウディオルは、西暦２００２年１月２３日生まれの２０歳、交代で入ったフレッシュなペドロに対して、ファウルをせずに、肩をぶつけて、冷静に対応した。ブラジルは、少しずつパスを回してスペースを作る。クロアチアは、後手に回るものの、裏のスペースをしっかりケアした。ゲームは９０分戦っても決着がつかず、延長戦に入った。後半はブラジルが、押し込む展開に変わっていた。枠内シュートは、ブラジルの７本に対して、クロアチアは０本、ボールスタッツは全くの５分５分である。
延長前半は右にブラジル、左にクロアチアがつき、ブラジルボールで始まった。延長前半１５分、ようやく試合が動いた。ブラジルは、引いてボールを受けたネイマールが、ドリブル突破し、ペドロにパスを出す。ペドロは右足でボールを落とす。再度ボールを受けたネイマールは、続いてアントニーにパスする。アントニーは、右足にボールを当てる。再度ネイマールは右足でトラップし、ＧＫリヴァコヴィッチを、交わす。リヴァコヴィッチは、足にボールを引っ掛けられず、態勢を崩したまま、動けない。リヴァコヴィッチの外側へとボールをコントロールしたネイマールは、右足でシュートを打った。鮮やかにネットを揺らした。１対０．ついに均衡が破れた。クロアチアの守備陣は、延長前半終了を意識して、ゴール前を固めていた。スペースがない中、ネイマールは、リズムをつけて、崩しにかかったのである。彼のドリブル力と足元のテクニックが発揮されたゴールだった。
写真＝ネイマールのゴール 開催元 MARCA
延長後半１１分、右から左に攻めるクロアチアは、劣勢の中力を振り絞って反撃する。ハーフウェー・ラインより後ろの左側でモドリッチがボールを受けて、前を向いた。同じレアル・マドリードのチームメイトであるブラジルのカゼミーロのチャージを受けて、バランスを崩しかけたものの、耐える。カゼミーロの足に当たって、ブラジル陣営側へとボールがこぼれる。ルーズボールを拾ったブラシッチがドリルブルで駆け上がり、左サイドのオルシッチにパスを出す。全速力で上がったオルシッチは、エリア内から左足で折り返した。キープ力のあるワントップのペトコヴィッチが、左足で直接シュートを打った。マルキーニョスに当たって、不規則に回転したボールは、横とびしたアリソンの右手の指先を抜けて、左ネットを揺らした。１対１．初めての枠内シュートがゴールになった。オルシッチは、トップスピードを保ちながらも、冷静にペトコヴィッチの動きを見て、クロスを出した。ペトコヴィッチを含め全力つぎ込むかのように、クロアチアは共に交代で入ったマィエルとブディミルがゴール前に上がり、3対２で数的有利の状況を作っていた。
写真左＝ペトコヴィッチのゴール
ゲームは、１２０分戦っても決着が付かず、ＰＫ戦にもつれこんだ。ブラジルは延長前半終了間際、ネイマールが中盤に下がり、ワンツーパスを駆使して、屈強なディフェンス陣のマークをずらした。リードを奪われて運動量が落ちたクロアチアだが、ワンチャンスからカウンターを仕掛ける。同点ゴールをあげたペトコヴィッチは、随所にキープ力を発揮していた。
ＰＫ戦は、右エンドで行われる。先手はクロアチアがとった。キッカーはブラシッチである。左に動くアリソンを見て、右足でゴール真上に蹴り込んだ。１対０．ブラシッチはガッツポーズした。
１本目の裏、キッカーはロドリゴ、エリアの外から助走し、右ネットに蹴りこんだ。横とびしたリヴァコヴィッチがセーブした。リヴァコヴィッチは完全にシュートコースを読みきり、しっかりと両手の平でボールを押し返していた。
写真＝リヴァコヴィッチのセーブ 掲載元 NDTV SPORTS
2本目の表のマイエル、その裏カゼミーロ、3人目の表モドリッチ、その裏、ペドロもＰＫを決める。
４人目の表のオリシッチもＰＫを成功した。４人目の裏、ブラジルのキッカーはマルキーニョス、失敗すれば、試合が終る。緊張が漂う中、エリア手前から助走し、右足を振りぬいた。グラウダーのボールは、ＧＫリヴァコヴィッチの完全に逆方向へ飛んだものの、左ポストに当たって、跳ね返った。４対２．
写真＝ＰＫのキッカー、マルキーニョスの放ったボールが、左ポストにはばまれる。Getty Images
クロアチアが、ＰＫ戦の末にブラジルを下して、２大会連続のベスト４を決めた。
120分のボールスタッツは、クロアチアの51％に対して、ブラジルは49パーセント、枠内シュート数は、クロアチアの1本に対して、ブラジルは11本にのぼった。いかにブラジルがゴールに迫っていたか、数値が示している。クロアチアは、モドリッチにボールが入ると、時間を作ることができる。彼は視野の広さとキープ力、高いパス精度を持ち味とする。延長後半12分のペトコヴィッチのゴールも彼が基点になっていた。FIFAランキング1位のブラジルを破ったクロアチアの2大会連続の快進撃は続く。
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