嫌なものを見てしまった。
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歩道の真ん中を歩くおばあちゃん。
自転車に乗った高校生の男子が、脇を追い抜きざまに、左のヒザを 【く】 の字に突き出して、おばあちゃんのお尻にぶつけて行ったのである。
ばあちゃんからすれば、だれかにケツを蹴られた、ということになる。
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80、90 のじいちゃん、ばあちゃんは、歩道の真ん中を歩く。
高校生からしたら、マナーの悪いヤカラを懲らしめてやった、ということだろう。
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ニンゲン、ひたすら老化する生き物である。
自分が老化して、初めてわかることばかりである。
病気をする。
さらに、わかることがある。
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脳出血でリハビリ含め3ヶ月入院した。
妹の家で、病後、初めて風呂に入った。
体とアタマを洗ったら、もうクタクタで、風呂のフタが閉められなかった。
そのことは鮮烈に覚えている。
たかが、プラスチックのジャバラのフタを持ち上げて、風呂桶の上に乗せ、クルクルとジャバラを閉じればいいだけの話である。
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人が衰えてゆくのは不可避である。
高校生は、自分が風呂のフタも閉められなくなるかもしれない、などとは、想像もできないだろう。
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君も、歩道を歩くときに、真ん中しか歩けない日が来るかもしれない。
お年寄りに優しくしよう、なんという、なまっちょろい話じゃない。
おまえさんも、いつかはそうなる、ということだ。
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