mixiユーザー(id:140098)

2022年11月15日00:08

218 view

キネコ映画祭まとめ

前日記の通り、11月3日(木祝)から5日(土)にかけて二子玉川で開催のキネコ国際映画祭29thに行ってきた。
フォト フォト
子どもの為の映画祭で、アニメーションと実写作品の17プログラム中、未見の作品とアニメーションを優先して6プログラムを鑑賞。
映画祭自体は90年代に渋谷のこどもの城で開催されていたキンダー・フィルム・フェスティバルの頃からずっと気になっていたのだが、なかなか上京を思い切れず参加出来ずにいた。
今回思い切って参加してみて本当に良かった。
その強い切っ掛けになった『ドラゴン・プリンセス』は私にとって特別な映画になった。

映画祭というもの自体にも興味があり、各地の映画祭を覗いているが、映画館にただ観客が集まって一体感も映画祭の実感もなく映画を観ておしまいという場合もある中で、このキネコは本当に参加して良かったと思う映画祭だった。
内部のことは全く知らないのだが、本当に子どもたちの為を思って運営されていることがよく伝わる。
作品の選定がまずいい。
「子どものためのプログラム」や「ファミリープログラム」を設けている映画祭も多いけれど、作品を上映する側が自分の目で確かめていないのか、このどこが子ども向け?ファミリー向け?という場合もままある。
キネコは、私の観た範囲内だが、そういうことが一切なかった。粒揃い、秀作揃い。
どういう選定がされているのかも知らないが、子ども向けにこれだけの質の作品を世界から集めるのは相当に大変と思う。
今回は19か国から全45作品が集まったそうだ。その審美眼に敬意を表したい。

運営方法も感心した。
子どものための映画祭だけあって、スタッフの方々が皆親切。
メイン会場のライズホールの設えも前方にラグマットを敷き詰めて誰でも自由な姿勢で観られるのが面白い。
今回は後方席ではパイプ椅子だったが以前はソファだったという。ゆったりと映画を観られるなんて素敵だ。
映画が始まる前に皆で行なうキネコ体操も面白い。これ、実際にやってみると血の巡りが良くなって集中力が上がる。子どもたちも映画に集中してマナーがとても良い。
実際に参加する前は、子どもがマットに寝転がっている映画祭などどんなものだろうと思っていたが、完全に杞憂だった。
低年齢向けのプログラムでは休憩を挟むなど、子どもを飽きさせない疲れさせない工夫も凝らされている。
プログラムを進行するバイオリンのお姉さんとピエロのジョーイの名コンビの明るさ、楽しさ。毎日毎回の上映ごとにこれを続けているのもすごいこと。
ティーンの子が一緒に司会をする回があるのもいい。自分たちの映画祭の気持ちが増すだろう。
しかも、子ども向けといっても上映中の場内は電気が消され、非常誘導灯も消える。上映環境はしっかりと確保されているのだ。
作品によっては35ミリのフィルム上映も行われる。会場後方に大きな映写機が設置され、近くではそのカタカタいう作動音が聴こえる。なんて贅沢な環境。
子どもの内からこんな豊かな環境で映画が観られるなんて。
キネコ名物というライブシネマの生吹替えも私は今回初めて体験して、その巧みさに感服した。映画に集中していると、すぐ横に人が立って演じていることを忘れてしまいそうなくらい自然で鑑賞の邪魔にならず、しかも感情や状況を見事に表現する技術を備えた巧みな吹替え。これには本当に舌を巻いた。的確な日本語への翻訳技能も素晴らしい。

上映後に映画の監督や出演者と会場をオンラインで繋いでのトークも行われ、これもすごい試み。そして、その時の会場の子どもたちの態度がまたいいのだ。どの子もしっかり受け答え。二子玉川の土地柄か、本当に感心してしまった。
映画祭に場所を提供し、地域ぐるみで盛り上げている東急グループの力も大きいのだろう。映画祭にはプレジデントに東急グループ代表、チェアマンに世田谷区長も名を連ねている。
会場内で映画を上映するだけでなく、ワークショップや二子玉川公園でのアウトドア体験、近隣のカフェやパブでの上映、多摩川河川敷での屋外上映なども行われる。二子玉川の地の利を生かし、地域一体となったイベントだ。

主催者の為では全くなくて、観客である子どもたちの為が貫かれた映画祭。
運営側の我や主張でなく、観客主体の映画祭がこんなにも気持ちの良いものだったとは。
子どもの為の映画祭だからグロテスクやバイオレンスはなくて、そこも気持ちがいい(そういう映画と映画祭は必要だから否定はしない)。安心安全。でも、訴えるべきこと、子どもでも知るべきことはしっかりある。映画祭の良心と言える映画祭と思う。いつまでも続いて欲しい。

最終日の6日(日)にはクロージングセレモニーが行われ、ジェネラル・ディレクターの戸田恵子、スペシャル・サポーターの井ノ原快彦やゲストに斎藤工らも参加。他にも錚々たるタレントの名前が並ぶ。訴求力は抜群だ。
運営メンバーは、代表理事=椎名保、フェスティバル・ディレクター=田平美津夫、プログラミング・ディレクター=小山カミラ、制作ディレクター=大谷紗耶香、他。
皆、良いお仕事をされている。

キネコはコンペティションが行われる国際映画祭で、会期中に、小学四年生からの子ども審査員たちと、国際審査員たちの合同審査が行われ、今回の子ども審査員は12名。コンペ対象の35作品の中から各賞が決定されたという。

受賞作(一部)は
・長編グランプリ=『ドラゴン・プリンセス』ジャン・ジャック・デニー&アントニー・ルー、フランス
・ティーンズ長編グランプリ=『チョン・テイル〜燃ゆる炎〜』ホン・ジュンピョ、韓国
・ティーンズ短編グランプリ=『代理試験』キム・ナギョン、韓国
・キネコ短編グランプリ=『うちのじいじは字が書けない』諸江亮、日本
等。

唯一残念だったのは韓国の長編アニメ映画『チョン・テイル』が『ドラゴン・プリンセス』と30分ほど時間がかぶり観られなかったこと。これは本当に惜しい。
無理をすれば『チョン・テイル』を途中まで観るのは可能だが、シネコンで時間を気にしながら、しかもクライマックスを観ずに出る勇気はない。
これだけを除けば、パイプ椅子の座り心地など、あとは些細なこと。
参加出来て本当に良かった。一生心に残る映画祭になった。
関係者の方々に心からお礼を申し上げたい。
フォト
12 3

コメント

mixiユーザー

ログインしてコメントを確認・投稿する

<2022年11月>
  12345
6789101112
13141516171819
20212223242526
27282930