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2022年11月06日15:55

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昨年の衆院選を追った2時間半強の巨編、大島新監督「香川1区」。

 11月1日(火)に昨年の令和3年12月公開の日本映画「香川1区」を観る。

「香川1区」(大島 新)
 32歳で政治家を志し、末は総理を目指す理想家の民主(現・立憲民主)党代議士・小川淳也の17年間を、大島新監督が追い続けた「なぜ君は総理大臣になれないのか」の続篇である。

 今回は、昨年の令和3年秋の衆院選を目指し春に立候補決意して、選挙区当選を果たし、立憲民主党伸び悩みにより引責辞任した枝野幸雄代表の後任党首選で惜敗するまでの1年弱に密着した2時間36分の大作である。これをその年の年内12月公開に漕ぎ着けた大島監督のパワーとフットワークの軽さを、まずお見事と称賛しよう。

 小川淳也は、32歳の立候補時点では50歳までに成果が出なければ引退を決意していた。そこで50歳を直前にして候補者となることを悩みに悩むあたり、ヨボヨボになっても議席にしがみつく日本の政治家(政治屋?)の中にあって、その誠実さに目を瞠らせられる。

 私は20代の頃に、労働組合の執行委員の立場で、何度か地方議会選挙に関わったことがある。応援した候補者や思想・信条に特に共鳴したわけでもなく、単に組織的な繋がりにしか過ぎない。そして、選挙運動とは高邁な政治的理念などとは程遠く、馬鹿々々しくも滑稽で愚かなことばかりなのを痛感した。

 しかし、人間とは不思議なもので、とにかく一生懸命の選挙運動の中で、次第に候補者に感情移入してくるのである。当選した時の美酒は、他人事なのにホントに旨かったのだ。人間とは知的でも意志的存在でもなく、感情的生き物であることを、その時に感じ入った。

 この映画の長い選挙戦の中で、私が最も心に残ったのは、人間とは感情的生き物なんだなあとの感慨であった。自民党との1対1の対決だと思い込んでいた香川1区の選挙区で、日本維新の会の候補者擁立を知った小川淳也の、狼狽と取り乱しぶりはどうだ。そこには、冷静な知も意志も無く、候補者取り下げを維新の会の支部に、感情的にねじ込む暴挙に走る。

 大島新監督は、父君の大島渚と大違いのようで、野党色の党派性を前面に押し出さない温厚なタイプと見受けた。対立候補の自民党・平井卓也も、日本維新の会の町川ジュンコも、快く大島新監督の取材を受け入れていたからだ。

 でも、そんな大島新監督も感情を露わにした場面があった。平井候補が街頭演説で「なぜ君は総理大臣になれないのか」をPR映画と断じた時に(選挙戦術ではよくある話であり、メクジラ立てるレベルではない)、街頭で喰ってかかるかのごとく抗議をしていたのである。でも、その怒りにまかせてか、期日前投票の取材で、投票者に人格詐称まがいの取材までするのはいかがなものだろう。やはり、人間とは感情的生き物なのだ。

 自民党・平井候補もこの件かどうか、かなり感情的になっていたようだ。警察も認めている街頭取材に、支持者があからさまな妨害をするし、応援演説に来た岸田首相の会場取材拒否にまで至る。

 良く言えば不偏不党、悪く言えば狸親父と囁かれる政治評論家・田崎史郎が、維新の会にネジ込んだ小川淳也を、慣習・ルール違反と軽く窘めた存在が、やけに冷静で大人に見えたのは意外だった(もっとも、第三者だからで田崎氏も自分に関わることだったら、感情的になるのかもしれない)。

 「香川1区」は、「人間とは感情的生き物」ということだけを描いた作品ではなく、いろいろ興味深いことある選挙というものを、ジックリ追った2時間半強の巨編ではあるが、私にはその部分が最も深く印象に残った。

 考えれば、映画の評価を巡って、良いの悪いのと自己の正統性を主張して、口角泡を飛ばしたりしているが、結局はそれも、好きか嫌いかの感情的次元に過ぎないのかもしれない。(よかった。ベストテン級)

 同11月1日(火)に昨年2021年2月公開の外国映画「スカイ・シャーク」を観る。

「スカイ・シャーク」(マーク・フェーゼ)
ナチスが開発したゾンビ+サメ型バイオ兵器軍団が、何故か21世紀に復活して人類に牙を剥く。まあ、昔で言えばB級SFのガラクタオモチャ箱といったところだが、これに21世紀ならではのSFXを駆使して、内臓グチャグチャ血みどろスプラッタが加わり、さらにに美女の血塗れヌードのおまけ付きだ。エンドロールの後に「スカイ・フロッグ」なる半裸のグラマーと蛙形エイリアンが闘う架空新作予告編(ホントに出来ていたりして)まで登場し、遊び心はタップリ。私はこういう楽しきハチャメチャ珍品は、基本的に大好きなのだがスプラッタは趣味じゃないので…(まあまあ)

 11月2日(水)に昨年の令和3年7月公開のキネマ旬報文化映画第7位「東京クルド」を観る。

「東京クルド」(日向 史有)
難民は手厚く保護しなければならない。政府(建前も含めて)も一般の人々にも、こういう国民的合意はある程度できていると思う。だが、現実はあまりにもチグハグな結果に至っている日本の現状が、二人のクルド人の難民の若者を追ったこのドキュメンタリーで浮彫りになる。小学生の頃に難民として来日し、日本の義務教育も受けているが、高校卒業後も働くことは許されない。難民認定はほとんど却下され、出入国管理庁の扱いとしては、社会的に仮放免の身分だからだ。では、どう生きていけばいいのか。管轄外としてそんなことは入管庁は関知しないのである。難民は不法就労で生きていくしかないが、不都合があれば勝手な解釈の下で収容所に軟禁されてしまう。それを支援し、司法に訴える弁護士もいれば、卒業後に就労の見込みも無いのに、受け入れる職業専門学校もある。義務教育の中で真摯に相談に乗る教師がいる一方、「難民は国に帰ればいい」と心無い言葉を投げつける入管庁職員もいる。この官民落差、官の中にも存在する格差に、日本社会のチグハグさが浮き彫りになる。クルド人の一人の若者は自棄気味になるが、もう一人の若者は、就労の希望も無いのに黙々と専門学校で学び続ける。そこに人間としての素晴らしい希望の光が仄見えたのが救いだ。(よかった)

 11月3日(木)にピンク映画「いたずら天使 乱れ姿七変化」を観る。

「いたずら天使 乱れ姿七変化」(渡邊 元嗣)
結婚しても期待と違って退屈を持て余している専業主婦が、ひょんなことから夫と共に主婦アイドルと振付師となって、ハッピーに愛の回復に至る。というと平凡なピンクに聞こえるが、これが渡邊元嗣=山崎浩治の監督・脚本の手にかかると、神様と悪魔や日本消滅が絡むブッ飛び映画として蘇生する。主婦・桜木凛と神様・樹花凛のコスプレもタップリ堪能でき、悪魔・ケイちゃんの怪演も彩りを添え、元嗣ワールド満開の快作となった。(よかった)

 同日3日(木)に昨年2021年6月公開の外国映画「ベル・エポックでもう一度」を観る。

「ベル・エポックでもう一度」(ニコラ・ブドス)
ディジタル時代で世の中に取り残されたイラストレーターのダニエル・オートゥイユは、妻ファニー・アルダン(老けたなあ。あ、失礼、熟女の貫禄が付きました)にも見限られる。息子のプレゼントで、巨大セットと達者な役者陣に囲まれ、行きたい時代の中に戻って入れる時間を提供される。彼は、妻と初めて出遭った場所の、1974年リヨンのレストランを希望する。役者は本人から聞き取った内容を、演出家の指示の下に再現していくのだが、耳の中に完全に隠れるイヤホンや、ネット情報検索の耳打ちにより即座に時代をリアルに復元していく21世紀ならではの仕掛けが楽しませる。そこでオートゥイユは年甲斐もなく、昔の妻を演じた女優に恋してしまう。虚実皮膜の紆余曲折の果てに、オートゥイユとアルダンは愛を回復するセザール賞3部門(脚本,助演女優,美術)授賞の洒落た一編だが、過去に拘泥し過ぎるテーマが、私の趣味に合わないのが残念なところだ。(まあまあ)

 さらに同日3日(木)に3本目、昨年2021年6月公開の外国映画「幸せの答え合わせ」と、精力的にこなす。

「幸せの答え合わせ」(ウィリアム・ニコルソン)
これまた熟年夫婦の危機が題材の一篇。微妙な夫婦の亀裂が、どちらに非があるという訳でもなく29年の時間を経て累積され、深まって行った冷酷な現実。それが、アネット・ベニングとビル・ナイの、名優二人により絶妙に表現される。一人息子は両親を長く見ていて、性格的にも父母の遺伝子を継いでいるから、どちらの心もよく解かり一方に肩入れできないのが辛い。息子役のジョシュ・オコナーは、ベテラン役者二人に挟まれても、引けを取らない程に頑張ったのは称賛に価する。3人が、それぞれの生きる道を見付けていく終幕は後味が良いが、夫婦の29年間の亀裂と闇は簡単には埋まらないところもキッチリ押さえ、脳天気に成りきっていないのも良い。(よかった)

 11月5日(土)にピンク映画「愛Robot したたる淫行知能」を観る。

「愛Robot したたる淫行知能」(渡邊 元嗣)
またまた元嗣流ブッ飛び映画に遭遇。前々日に観た「いたずら天使」と同年の、平成27年公開作。元嗣映画は楽しいのが多いのだが、本数も少なくないのでついつい見逃しがちで、この時期のピンクはかなり浚っていたはずだが、この2本とも未見なのは後悔した。結婚を控えていた彩城ゆりなが、交通事故で彼氏の津田篤を突然に喪う。彼氏の親友の精神科医の山本宗介が、失意の彼女のセラピーのため、AI搭載の津田そっくりのRobotに身の回りの世話をさせることになる。まあ、この程度のSF仕立ては、渡邊元嗣=山崎浩治の監督・脚本ではよくある仕掛けで、特筆することは無い。しかし、ラストのドンデン返しはアッと言わせる奇想天外。具体的な記述はあえてここでは避けるが、山内大輔「よみがえりの島」の変奏曲的だとでも言っておくか。とにかくエンディングは事故から約100年後なのだから、そのブッ飛びぶりは相変わらずである。(よかった)

 11月に入って観た自宅観賞映画は次の11本

「香川1区」「スカイ・シャーク」「スティグマータ/聖痕」「東京クルド」
「いたずら天使 乱れ姿七変化」「ベル・エポックでもう一度」
「幸せの答え合わせ」「ブレイクアウト」「愛Robot したたる淫行知能」
「シー・オブ・ラブ」「犯罪都市」

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