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2022年09月20日11:15

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センス・オブ・ワンダーに溢れたベストテン級の傑作「パーム・スプリングス」。ピンク映画のクラシックと新しい風の2本。

 9月15日(木)にピンク映画「若妻ナマ配信 見せたがり」を観る。

「若妻ナマ配信 見せたがり」(佐藤周)
ホラー秘宝まつりグランプリ監督で、OP PICTURES新人発掘プロジェクト優秀賞の佐藤周のピンク映画進出作品である。動画配信でそこそこ人気のおしどり夫婦が、実は夫が二人の女性と不倫中ということで、濡れ場のネタには事欠かない。配信動画風の映像が全編に亘っている凝った演出で、倒叙話法や濡れ場描写の斬新なアングルも含めて創り手は楽しんでいるみたいだ。ただ、不倫相手の一人は妻ともネットを通じ知り合いだったとの設定で、ストーリー自体が洒落ているので、もう少々は正攻法でも、現代人の孤独というテーマが浮き彫りになったかなと、古いタイプの私としては感じる。既存ピンク映画監督は、正攻法演出の人が多いので、こういう新しい血の導入は歓迎だ。(まあまあ)

 9月16日(金)にピンク映画「あばずれ」を観る。

「あばずれ」(渡辺護)
ピンク映画黎明期の昭和40年作品、ピンクの巨匠・渡辺護のデビュー作にして自他ともに認める最高傑作とのことだが、私としてはそれ程の作品とは思えなかった。「マル秘湯の町 夜のひとで」の方が遙かに良い。ただし、あくまでも映画としての評価で、ピンク映画としてのそれではない。そもそも今の眼で観ると、バストトップがほんのチラリと覗く程度で、何がピンクなのかも理解不能だ。多分、これまでの映画は、濡れ場やレイプをその直前でカットし、その直後に繋ぐという描写が定番だったので、短時間でもその最中にカメラが入るというのがショッキングだったのではないか。この時代のピンク映画(私はそれ程に観てはいないが)に、もっとエロさとドキドキ感があった記憶があるのは、そんなところなのだろう。父親を慕う娘(ややファザコン気味)が、悪女の後妻の罠で、父は工場を乗っ取られ心労で果て、自らはレイプされた後の復讐談である。報復の炎の凄まじさが見所で、山田洋次の傑作「霧の旗」を彷彿させるが、及ぶものではない。(まあまあ)

 この映画は日本映画専門チャンネルの「蔵出し名画座」の枠で放映された。にも拘らず、J:COMマガジンの「主な」作品リスト索引には掲上されていないのは、やはりピンク映画に偏見があるのだろうか。マイミクの中村勝則さんの御教示がなければ、録画リスト漏れして見損なったかもしれない。感謝である。

「蔵出し名画座」は冒頭で川本三郎氏の解説紹介があるのが定番だが、これはちゃんとあった。解説の半分は当時のピンク映画の社会的位置付けに充てられていたが、「あばずれ」の下敷きが「雪之丞変化」というのは、この解説で初めて知った。それ程に大仰な物でもなく、よくある復讐談といった趣きだが、そう聞かされるとそれはそれで興味深い。ピンクというより今で観るとフィルムノワールの味わいとの解説も、成程なといった感じだ。

「蔵出し名画座」の解説紹介は、前は故・佐藤忠男氏だった。佐藤氏が御存命だったら「あばずれ」をどう解説したか興味深いところだ。

「蔵出し名画座」作品選定者のT氏と、私は田辺・弁慶映画祭の縁で知り合いとなった。映画検定1級のゴールドカード(何回か合格すると与えられる称号)を持つ映画通の方である。大傑作ではないが、歴史の中に埋もれさせるのには惜しい粋な小品を選ぶセンスに毎回感心していた。特にTV放映があると、ソフトが電子化されるので、その意味は大きいと、私はエールを送ったのである。

 9月18日(日)に2021年4月公開の外国映画「パーム・スプリングス」を観る。

「パーム・スプリングス」(マックス・バーバコウ)
朝、目覚めたら前日だった。そんなことが、無限と思える程に繰り返される。仮に死んだところで、目覚めるのは次の日の朝となる無限ループだ。そうした状況に追い込まれた3人の男女の奇想天外な、でもよくあるネタの筋立てである。こういうのは、SFロジックの組み立てと決着の付け方で、傑作にもなりシラケ作にもなる。その点で、本作はセンス・オブ・ワンダーに溢れていた。詳細はここで明かせないが、ヒロインが量子力学を研究して、状況突破するのがスゴい!ド素人が複雑な量子力学を少々(?)研究しただけで無理だろって、そこをスンナリ納得させるのが、センス・オブ・ワンダーなのだ。ヒロインは、実は妹の婚約者とデキており、目覚める朝とは妹の結婚式当日なのだが、何度もその日を繰り返せるので、様々なシチュエーションを楽しんじゃうとの、洒落っ気が楽しい。素敵な1日を繰り返すのが幸福か?やっぱり未来は未知でも次の日に行きたいか?との、ちょっと哲学的テーマ(?)も加えて、ある意味これだけ壮大なドラマをコンパクトに90分で仕上げ、サンダンス映画史上最高売買額が付いたのも納得させる傑作であった。ただ、邦題が味気ない原題まんまのカタカナ表示なのはいただけない。最近のおせっかいな邦題流行りから鑑みて、ネタバレしない範囲で、せめて副題でも粋な邦題を付してほしかった。(よかった。ベストテン級)

 前回日記からの自宅観賞映画は次の7本。

「若妻ナマ配信 見せたがり」「サヨナラまでの30分」「あばずれ」
「レディ・チャタレー」「パーム・スプリングス」「少林寺三十六房」「隠密七生記」

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