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2022年09月14日20:46

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積極的には観たくない題材だが、俳優の名演あってこそ、ギリギリでエンタテインメントとして成立「ファーザー」

 9月8日(木)に昨年の令和3年7月公開「パンケーキを毒見する」を観る。

「パンケーキを毒見する」(内山雄人)
公開時点では、まだ総理として健在だった菅義偉のドキュメンタリー。エリートではない叩き上げ宰相として、マスコミとパンケーキ会談する気さくな表の顔の裏に、博奕打ち的な勝負師として総理の座をゲットし、官房長官の頃から機密費を駆使した権力亡者ぶりが徹底して暴かれる。とは言っても、多分そうだったろうなと想像させるネタばかりで、新味は無い。そんな政治の空洞はなぜ生じたかとの考察も、マスコミがだらしがないからとスポンサーに頼らない赤旗を持ち上げたり、自民党を選挙で必ず勝ち上がらせてしまう国民の意識レベルが問題だとか、小選挙区制が官邸と党本部に権力集中させた政治体制を生んだとか、若者の無関心無気力体質が問題だからとか、だからあらゆる面でG7最低になっているとか、いろいろ並べ立てているが、その程度では私並のド素人政治批判・社会批判の域を一歩も出ていない。こんな物を観せられても気が滅入るばかりだ。こういう映画には、何か知的触発を与えてくれる輝きが欲しい。(あまりよくなかった)

 続いて、同日の9月8日(木)に昨年2021年2月公開の外国映画「秘密への招待状」を観る。

「秘密への招待状」(バード・フレインドリッチ)
十代の頃の恋のトラウマから、インド孤児施設の救援活動にひたすら打ち込むようになったミシェル・ウィリアムズ。そこに、米の女実業家ジュリアン・ムーアから資金援助の申し出があり、ニューヨークに赴く。二大スター競演作だ。ジュリアン・ムーアの夫は、偶然にもミシェル・ウィリアムズかつての恋人で、そこから奇しき人間ドラマが展開していく。「秘密への招待状」のタイトルにあるように、全てはジュリアン・ムーアの善意の仕掛けなのだが、ミステリーでは無いにせよネタは細かく言わない方が良いような気がする。どうなろうと、前向きに生きていくとの精神が貫かれているのが、私としては心地よかった。(まあまあ)

 9月11日(日)に昨年2021年1月公開の外国映画「どん底作家の人生に幸あれ!」を観る。

「どん底作家の人生に幸あれ!」(アーマンド・イアヌッチ)
イギリスの国民的作家ディケンズの代表作「デイヴィッド・コパーフィールド」を、「スターリンの葬送狂騒曲」の監督が映画化したそうだ。いかにもディケンズ作品らしく、明るく暮らしていた空想好きの少年が、父の死に伴う継父の出現で、彼に従わなかったために、躾の名目で工場に売り飛ばされ、様々な人々と出会いながら、数奇な運命に翻弄されて、作家として成功するまでのサクセスストーリーである。個性的な群像が入り乱れ、前作の監督作から鑑みてイアヌッチにピッタリの素材と思われるのだが、私には焦点の定まらないドラマにしか見えなかった。だから、空想と現実が入り混じる凝った創りも、残念ながらピンと来なかったのである。(あまりよくなかった)

 9月13日(火)に昨年2021年5月公開の外国映画キネ旬ベストテン第5位「ファーザー」を観る。

「ファーザー」(フロリアン・ゼレール)
認知症老人のイメージが一人称で綴られる。直前のことを忘れるかと思えば、遠い昔のことが鮮明にフラッシュバックして、さらに妄想も加わってくる。自分は今どこにいるのか?今はいつなのか?時間も空間も混濁し、どんなホラー映画よりも怖い。オスカー授賞のアンソニー・ホプキンスのリアルな演技が、さらにその恐ろしさを増幅する。それ以上に、これが未来の私を襲うかもしれないと思うと、さらにさらに恐ろしい。知も体力も衰える果てに母の温もりを求めていくあたりは、豊田四郎の古典的名作「恍惚の人」を思い出させた。こちらの森繁久彌も演技賞物の名演だった。介護する娘のオリヴィエ・コールマンも好演だが、そう言えば「恍惚の人」の介護者(こちらは嫁だったが)高峰秀子も引けを取らぬ名演だったことも懐かしく思い出されたのである。積極的には観たくない題材だが、こういうのは俳優の名演あってこそ、ギリギリでエンタテインメントとして成立することを痛感した。(よかった。ベストテン級)

 前回の日記以降に観た自宅観賞映画は次の10本。

「ドロップ・ゾーン」「パンケーキを毒見する」「秘密への招待状」「鬼手」
「ベター・ウォッチ・アウト クリスマスの侵略者」
「どん底作家の人生に幸あれ!」「ピータールー マンチェスターの悲劇」
「戦場のメロディ」「ファーザー」「プロムナイト」

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