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2022年08月27日18:17

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5部作の超大作「るろうに剣心」完走。シムプルなクラシック名画のスゴさ「怒りの日」。

 8月18日(木)に昨年2021年3月公開の外国映画「フロッグ」を観る。

「フロッグ」(アダム・ランドール)
アメリカの近くに森がある寂しい地方の町で、連続少年失踪事件が発生する。「フロッグ」が「フロッギングする」と称して、他人の大きな家に一定期間に隠れ住んで、隠し撮りドキュメンタリーを撮る無軌道な若者がいる。そして、事件捜査の刑事宅に数々の怪奇現象が発生する。この3本柱が巧みに縒り合されるのだが、オカルト的な物は一切無く、すべて最後は「論理的」説明がなされる。横溝正史の傑作ミステリーのような鮮やかさだ。私としては、SF的想像力を働かせる要素がある方が趣味なのだが、ここまでキッチリ説明されれば、爽やか過ぎて文句も出ない。(よかった)

 8月18日(木)に昨年2021年1月公開の外国映画「キル・チーム」を観る。

「キル・チーム」(ダン・クラウス)
アフガンで一小隊が、軍曹の指揮の基で民間人殺害を繰り返したのを、勇気を持って告発し自らも罪に復した兵士の、実話の映画化だ。監督が自ら手掛けたドキュメンタリーの劇映画化だという。しかし、前任軍曹が地雷テロで戦死し、身を護るために自らの信念で、疑わしきは殺しまわる後任隊長の姿は、アレキサンダー・スカルスガルドの好演もあって、魅力的で説得力を有しているのに困惑する。連日のウクライナ報道の戦争犯罪を見せられるにつれ、多くのことを考えさせられた。(よかった)

 8月20日(土)に昨年の令和3年2月公開「樹海村」を観る。

「樹海村」(清水 崇)
ホラー・ロジックがゼロで、おどろおどろしいシーンが連続する。もともと清水崇作品は「呪怨」を始めとしてロジック無きロジックのホラーが原点なのだが(たまに理に落ち過ぎた「犬鳴村」には物足りなさを感じたりして…)、それでも本作品は支離滅裂に過ぎる。妄想やら夢やら、らしきシーンがグチャグチャに混濁し、時制まで乱れ尽くしている。スタートで樹海の命綱が強調されているのに、途中から命綱に関係なく、登場人物がどんどん樹海に踏み込んでいく。湯布院映画祭で甲斐さやか作品「赤い雪」を観た時、ミステリーとしての語りの混濁をシンポジウムで指摘しようとしたら、監督本人に「タルコフスキーやアンゲロプロスの感覚を狙いました。ミステリーではありません」との言で、先を越されてしまった。(「それならそれで、最初からそういう語り方が必要なのでは…」との参加者からの疑義もあったが)清水監督もホラーではなく、まさかタルコフスキーやアンゲロプロスの線を狙ったなんて言うんじゃないでしょうね。(あまりよくなかった)

 8月22日(月)に昨年の令和3年4月公開「るろうに剣心 最終章 THE Final」を観る。

「るろうに剣心 最終章 THE Final」(大友 啓史)
豪華セットと爆薬と火をふんだんに使った奥行の深い画面創り・ダイナミックな殺陣と、往年の東映黄金時代劇を思わせる絢爛さだ。いや、ワイヤーアクションやCGの駆使で、さらにその上を行っている。それなのに、満足度が少ないのは、ドラマが弱いせいだ。というか、殺陣に次ぐ殺陣の連続で、そちらに時間の取られ過ぎだ。90分も持たないドラマなのに2時間越えの長尺になってしまっている。それにも関わらず、逆刃刀に至ったヒーローの心の屈折あたりを、過去作の「ご存知」に頼り、ほとんどドラマに活かしていない。チャンバラは、ドラマの盛り上げでここぞという時に見せるから効果的なのであって、殺陣の連続に次ぐ連続ではゲップが出るだけだ。そのあたりは、往年の東映黄金時代劇は上手かった。アクションの名手・大友啓史がタツプリ腕を揮ってみせたが、策士が策に溺れた感がある。(まあまあ)

 8月23日(火)に昨年の令和3年6月公開「るろうに剣心 最終章 THE Beginning」、さらにピンク映画「淫美談 アノコノシタタリ」を観る。

「るろうに剣心 最終章 THE Beginning」(大友 啓史)
「るろうに剣心」全5部作を完走した。「最終章」の締め括りを「THE Beginning」に置いたのは成功だと思う。希代の暗殺者、緋村剣心こと人斬り抜刀斎が、なに故に人を絶対に殺めないように逆刃刀なるものを有するに至ったのか?頬に刻まれた「十字傷の謎」に秘められたものは何か?といった数々の気になるエピソードのピースが、ここにピタリと嵌るのである。時代背景は動乱の幕末で、人を斬らぬ剣の使い手以前の、剣心の時代であるから、今ひとつ煮え切らない感のあったこれまでと異なり、展開は痛快そのものだ。高杉晋作=安藤政信などのオールスターで、歴史的著名人が史実・フィクション取り混ぜて、虚実皮膜にせめぎ合う壮観さは、時代劇ならではの醍醐味だ。桂小五郎=高橋一生を新選組の池田屋襲撃から救出すべく駆け付ける剣心=佐藤健の前に立ちはだかる沖田総司=村上虹郎、無用な消耗戦を避けようとその間に入る斎藤一=江口洋介と、こんな嘘とホントのない交ぜなんてゾクゾクするではないか。この題材を東映黄金時代劇に匹敵するスケールのセット・ロケ・美術と、激しい殺陣で魅せるのは壮観である。あくまでも、スケールの比喩であって、描写の基本は今風のリアリズムであることは、言うまでもない。興行的成功が予想されていたとはいえ、この思い切った大作化の効果は大きかった。(よかった)

「淫美談 アノコノシタタリ」(角田 恭弥)
すっかりTVや映画でお馴染みになった事故物件アパートの、ピンク映画版である。前に「事故物件芸人」4部作なるそれなりの力作があったが、それに比べれば、事故物件をどう濡れ場に絡めるかのアイディアが凡で、センス・オブ・ワンダーには程遠い。終盤に出てくる川瀬陽太の怪しげな心霊現象研究家が女装も交えて、そこにセンス・オブ・ワンダー(?)と呼びたいハチャメチャな楽しさだけがあった。(まあまあ)

 さらにさらに、この日8月23日(火)にカール・テオドア・ドライヤーの戦前1943年の古典的名作「怒りの日」を初めて観たのだが、allcinemaによれば劇場未公開となっているけれども、他のネット情報によれば、昨年の2021年12月の「奇跡の映画 カール・テオドア・ドライヤー セレクション」が本邦初公開のようである。ただし、一週間未満の公開だったようで、キネ旬の封切映画一覧表に記載は無い。ということではありますが、昨年公開新作外国映画なので、一応感想を記します。

「怒りの日」(カール・テオドア・ドライヤー)
1947年ベネチア国際映画祭で審査員特別賞を受けたクラシックの名作だ。魔女狩りが横行する時代を背景に、ある牧師一家の葛藤が描かれる。ストーリーを下世話に言い換えてしまえば、かなりよくある話で生臭い。魔女の疑いで審問した女の娘に歳の離れた恋心を抱いた牧師が、その女の魔女の有無を黙認し、娘と結婚に漕ぎつける。しかし、息子の牧師が帰郷してくると、当然ながら若い義母と恋に墜ち、義母が牧師の死を願うと、偶然なのか突然死してしまう。かねてから嫁を好ましく思っていなかった牧師の母は、彼女を魔女として告発する。よくある話ではあるが、魔女狩りを背景として、宗教心の薄い私でも、人の生臭い心から端を発する怨みや嫉妬の恐ろしさが、象徴的に浮かび上がり、深く深く考えさせられる。画面はあくまでも静謐そのもので、北欧=デンマークの白樺林や森、小川のせせらぎに、神秘の味わいが色濃く立ち昇る。人間の原点に迫る象徴的大傑作だ。(よかった。ベストテン級。というか、現時点での昨年公開外国映画とすればベストワンであるが、これは古典的名画として別格に位置するものだろう)

 8月24日(水)に昨年2021年5月公開「プロジェクトV」を観る。

「プロジェクトV」(スタンリー・トン)
ジャッキー・チェンも寄る年波のせいか、警備会社の社長に収まってしまった。とはいえ、「太陽にほえろ!」の石原裕次郎じゃないんだから、スーツで椅子にそっくり返っているだけのわけもなく、陣頭指揮でどんどん現場に乗り込んで行き、それなりのアクションも魅せるが、多くの若手アクションスターにも活躍の場も譲り、孤軍奮闘ということにはならない。映画の創りも集団戦を基軸にしており、スタンリー・トン監督は上手いアクション大作に仕上げて魅せた。今回の敵は武器密売商人と、アメリカに恨みを持つアラブの大富豪。舞台はロンドン、アフリカ、ドバイと息もつかせず、3部構成で激しく展開する。ロンドンのカーチェイス、アフリカの砦攻防戦(猛獣も効果的に活かす)、ドバイの壮大なショッピンクモールでの奇想天外な活劇連打と満腹感タップリだ。クライマックスでは、米空母を巻き込み戦争寸前に至るのだからスゴ過ぎる。大作ならではのウンザリと長い延々10分強のエンドクレジットも、おなじみNG集やメーキングで繋いで飽きさせない。活動屋の精神と魂は香港で健在だった!(よかった)

 8月25日(木)に昨年2021年2月公開「シンクロニック」を観る。

「シンクロニック」(アーロン・ムーアヘッド他)
救急隊員のバディが次々と奇怪な負傷者・死者に遭遇する。さらに、その一人の娘が奇怪な失踪。その陰に非合法ドラッグによるタイムリープ現象が存在していた。過去と現在を往還できる方法に、やや論理矛盾もあるが、バディの友情・愛犬の扱いなどを絡めて、概ね筋の通ったSF小品だった。(まあまあ)
 前回の日記以降に観た映画は次の17本。

「フロッグ」「キル・チーム」「樹海村」「花咲く乙女たち」
「世宗大王 星を追う者たち」
「ONE PIECE ワンピース THE MOVIE
             エピソード オブ チョッパー 冬に咲く、奇跡の桜」
「るろうに剣心 最終章 THE Final」
「るろうに剣心 最終章 THE Beginning」
「淫美談 アノコノシタタリ」「怒りの日」「プロジェクトV」「北国の街」
「シンクロニック」「フェイシズ」「青春の鐘」「歌麿をめぐる五人の女」
「モンキー・フィスト/猿拳」

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