「ヘレディタリー 継承」「アングスト 不安」みたいなタイトルだし、特に最近はホラーばかり紹介していたので、これもホラーかと思うかもしれませんが、違います。
ある一夜のレストランの業務を1カットで撮影した映画なのです。
そんなものが面白いの？
不安になる方も多いでしょう。
面白かったです！
異色かつ斬新な内容なのに、ちゃんとエンターテイメントになっているのです。
今年のベスト10に入れたいとさえ思いました。
レストランが舞台なのでグルメ映画かと思うかもしれませんが、全然違います。
料理がおいしそうに映し出されるシーンはほとんどありません。
シェフを中心にレストランを切り盛りするスタッフと客とのやり取りを描くのが中心の・・・ジャンルは何になるのでしょうか。
色々な見方が出来る内容ですが、僕はかなり笑ってしまった部分が多かったです。
出ている人達は皆真剣で、ストレス過多の出来事に四苦八苦していますが、コメディーとして楽しむのが一番だと思いました。
主人公的なシェフがどうしようもない人間なので、真面目に観るとイライラしてしまうかも。
それよりも、「こういう奴いる！」とか「あいつにそっくり」とか言ってニヤニヤ楽しむのが正解でしょう。
一番偉いけど現場の事が何も分かっていないヤツ。
2番手だけど職場では一番の屋台骨、でも怒ると手が付けられないヤツ。
何だか知らないが常に不機嫌、ケンカ腰のヤツ。
なぜかみんなに弄られるヤツ。
真面目だけど精神的に追い詰められやすいヤツ。
遅刻と仕事中の行方不明が多いヤツ・・・。
自分の職場を思い出せば、そっくりな人が必ず何人か見つかるはずです。
社会人で普段ストレス過多な日々を送る方なら、絶対に楽しめる映画だと思います。
この中では自分はどの位置だろう？
この場なら、自分ならどうするか？
そんな風に考えながらだと、本当にあっという間の映画体験になるでしょう。
それにしても、他人の働いている姿を完全に他人事として眺めるのは格別です。
トラブルにテンパったり、同僚とケンカしたりして修羅場になっていく職場。
それを、飲み物でも楽しみながら、涼しい顔で眺める！
最高！
ちょっと前ですが、コメダ珈琲に入ってアイスコーヒーとカツサンド（巨大）を食べている時に、ふと窓の外を見ると隣のガソリンスタンドが見えました。
外は猛暑で、汗だくで働く店員たち。
それを、涼しい場所で眺めながら飲むコーヒーの美味さと言ったら！
カツサンドを食べ終わり、買ったばかりの文庫本（金田一耕助の冒険）をゆっくり読みました。
もちろん、時々外の店員をチラと見ます。
あの人たちは大変だなあ！
暑いよなあ！
頑張れよ！
あれは最高の体験でした。
この映画は、手軽にそんな体験を楽しむ事が出来るのです。
あんな修羅場にいたら、ゲッソリするぜ！
でも、俺には他人事。
そう言えば、俺の職場でも今頃みんな苦労しているのだろうか。
ご苦労さん！
トラブルでも起きていたら笑っちゃうな！
今日はいつものジンジャーエールが、妙に美味い！
（映画の話に戻ります）
様々なスタッフの視点に切り替わり、それぞれのドラマが描かれたりするので、1カット映画とは言え、まったく退屈しません。
もちろん映画なので、実に色々と面倒が起きます。
次に何が起きるのか、ワクワクしてしまいます。
家族や恋人のエピソードでは無く、こういう「仕事」そのものを描くというのは、案外楽しいものだと思いました。
普段知らない仕事の現場をキッチリ描くと、ちゃんと娯楽になる。
今後、こういう「仕事映画」が増えていくと面白いと思いますね。
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